2025年6月10日、内閣府から発表された「令和7年版高齢社会白書」では、全国の60歳以上の男女に、現在の経済的な
暮らし向きについて調査をし、前回調査と比較しています。

前回の調査は2019年。今回調査の2024年では、全体的に暮らし向きはネガティブな方に傾いていると見て良いでしょう。

前回調査では「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」が74.1%を占めていましたが、今回の調査では、8.2ポイント減の65.9%となっています。

一方、前回調査で25.4%だった「家計にゆとりがなく、多少心配である」と「家計が苦しく、非常に心配である」が、今回の調査では30.8%と増えています。

シニア層の主な収入源となる公的年金は、3年度連続で増額改定されていますが、それを上回るペースで物価が上昇を続けていることが家計に大きなダメージを与えていると考えて良いでしょう。

厳しい状況が続く中、いまのシニア世代の方々は、月額いくらの年金を受けとり生活しているのでしょうか。一覧表やグラフを見ながら確認していきます。

1. 日本の年金制度のキホン的なしくみ

日本の公的年金制度は、1階部分の「国民年金(基礎年金)」と2階部分の「厚生年金」から成り立つ、「2階建て構造」となっています。

厚生年金と国民年金の仕組み

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

まずは、それぞれの年金制度について、その違いをおさらいしましょう。

1.1 【1階部分】国民年金

加入対象

  • 原則として日本国内居住の20歳から60歳未満の全員(職業・収入・国籍不問)。

年金保険料

  • 全員一律。ただし、保険料は年度ごとに改定される(※1)

老後の受給額

  • 保険料を全期間(480カ月)欠かさず納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給可能。未納期間分に応じて満額から差し引かれる。

※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円

1.2 【2階部分】厚生年金

加入対象者

  • 会社員や公務員、またパート等で特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たす人(国民年金に上乗せで加入)。

年金保険料

  • 収入に応じて決まる(※4)。ただし上限あり。

老後の受給額

  • 加入期間や納付済保険料によって個人差が出る。

公的年金でも、国民年金と厚生年金では加入対象や年金保険料の決定方法、受給額の計算方法などが異なります。そのため、実際の受給額は人によって違います。

※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など。
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算されます。