4. 貯蓄以外の資金準備の手段
老後資金の備えは「貯める」だけでなく、「増やす」「守る」「使い方を工夫する」視点も大切です。以下のような制度や方法を活用すれば、無理なく備えを広げることができます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
60歳まで積立可能。掛金が全額所得控除され、運用益も非課税。自分で商品を選んで運用するため、リスクとリターンのバランスを考える必要があります。
企業型DC(企業型確定拠出年金)
会社が掛金を拠出する制度。自分で運用する点はiDeCoと同じ。勤務先によって制度内容は異なりますが、併用できる場合もあります。
再就職・継続雇用制度
定年後も働くことで収入を得ながら年金受給を遅らせる「繰下げ受給」により、年金額を増やすことも可能です。
支出の見直し
生活コストや保険の整理など、固定費を減らすことも立派な資金準備のひとつです。
こうした選択肢を組み合わせて、自分に合った老後資金の備え方を見つけましょう。
5. 医療・住まい・健康などお金以外の備え
老後の安心は「お金の準備」だけでは成り立ちません。医療・介護・住まいの問題は、将来的に支出の増加や生活の変化を招く要因になります。
- 健康管理と予防:日頃から体調管理や定期健診を習慣にし、医療費の負担を抑える。
- 住まいの見直し:住宅ローンの完済計画、バリアフリー化、住み替えなどを検討。
- 身の丈に合った生活設計:高望みせず、収入と支出のバランスを意識した暮らし方を選ぶ。
「安心して暮らせる環境づくり」も、立派な老後の備えです。50代のうちにできる見直しが、将来の不安をぐっと減らしてくれます。
6. まとめにかえて
老後は60歳を過ぎてから始まると思われがちですが、実際には50代こそが人生後半の設計を大きく左右する「準備期間」と言えるかもしれません。
働きながら収入があるうちに、生活費の見直しや資産形成、年金の確認、住まいや健康への備えなどを始めておけば、将来の安心感は大きく変わります。
今から現実を直視し、正しく把握し、できることから一つずつ行動に移すことが何よりも大切です。
貯蓄の額に一喜一憂するのではなく、自分の現状と目標を照らし合わせながら、冷静に「足りない部分」を知り、補っていく、その繰り返しが、納得のいく老後への近道になります。
参考資料
- J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査[二人世帯調査](2024年)」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」
- 日本年金機構「「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認」
- 日本年金機構「「ねんきん定期便」とは何ですか。」
和田 直子