物価上昇により、年金を受給している世帯はとくに家計に大きな負担が生じていることが考えられます。
公的年金の国民年金や厚生年金は、2025年度に増額改定され、前年度と比べ6月支給分より1.9%増えることが決定しています。
しかし、物価の上昇には追い付いておらず、老後の家計が大きく改善されるわけではなさそうです。
では、年金を受給している世代はどのような暮らしをしているのでしょうか。
本記事では、老齢年金世代となる65歳以上のリタイア夫婦の平均的な家計収支や、65歳以上の平均貯蓄額について解説します。
老後生活に向けた資金の準備を検討する際に、ぜひお役立てください。
1. 【老齢年金世帯】65歳以上のリタイア夫婦「家計収支」の平均をチェック!
2025年3月11日に総務省統計局が公表した「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」において、標準的な65歳以上無職夫婦世帯では、ひと月約3万4000円の赤字が出ることが示されました。
元となるデータを見てみましょう。
1.1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 諸雑費:2万2125円
- 交際費:2万3888円
- 仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
- 3万4058円の赤字
この世帯の場合、毎月の収入は25万2818円、そのうち約9割(22万5182円)が公的年金などの社会保障給付となっています。
一方で支出の合計は28万6877円。そのうち消費支出(いわゆる生活費)が25万6521円、非消費支出(税や社会保険料など)が3万356円でした。
この夫婦世帯の場合、毎月3万4058円の不足分を、主に貯蓄の取り崩しなどで補填していくことになります。
なお高齢者世帯は持ち家率が高い傾向にあることから、「住居費」は1万6432円と低くなっています。賃貸住宅に住む場合は、家賃との差額を上乗せして考える必要があります。また、上記の支出項目には「介護費用」が含まれていません。
そこで頼りになるのはやはり「貯蓄」です。次では65歳以上世帯の貯蓄事情についても見ていきます。
2. 【老齢年金世代】65歳以上の二人以上世帯「貯蓄の平均」はいくら?
総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」から、65歳以上の世帯主がいる二人以上世帯の貯蓄事情を見ていきます。
2.1 世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高(二人以上世帯)平均・中央値
- 平均値:2509万円
- 貯蓄保有世帯の中央値:1658万円
平均値は一部の富裕層により引き上げられる傾向があります。より実状に近い「貯蓄保有世帯の中央値」に目を向けると1658万円にまで下がります。
では、貯蓄額の世帯分布についても見てみましょう。
2.2 世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高の金額別世帯分布 (二人以上世帯)
先述のグラフから、貯蓄額ゾーンごとの世帯数も見ていきます。
- 100万円未満:8.1%
- 100万円~200万円未満:3.6%
- 200万円~300万円未満:3.1%
- 300万円~400万円未満:3.6%
- 400万円~500万円未満:3.3%
- 500万円~600万円未満:3.3%
- 600万円~700万円未満:2.9%
- 700万円~800万円未満:2.8%
- 800万円~900万円未満:3.3%
- 900万円~1000万円未満:2.5%
- 1000万円~1200万円未満:4.8%
- 1200万円~1400万円未満:4.6%
- 1400万円~1600万円未満:5.1%
- 1600万円~1800万円未満:3.3%
- 1800万円~2000万円未満:3.3%
- 2000万円~2500万円未満:7.4%
- 2500万円~3000万円未満:5.8%
- 3000万円~4000万円未満:9.4%
- 4000万円~:20.0%
全体の42.6%が貯蓄額2000万円超、さらに3000万円超の世帯も29.4%存在します。その一方で、200万円未満の世帯が11.7%存在します。
65歳以上の「完全リタイア世帯」はどうでしょう。次では無職世帯に絞ったデータを見ていきます。
3. 【老齢年金世代】65歳以上の二人以上世帯「貯蓄の平均」はいくら?
次は、世帯主が65歳以上の「無職世帯」に限定して、貯蓄額の推移や資産種類の内訳を見てみましょう。
3.1 【65歳以上の無職夫婦世帯】平均貯蓄額の推移
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
- 2024年:2560万円
世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の貯蓄額は、2019・2020年は2200万円台でしたが、2021年に2300万円台、2023年には2500万円を超えたあと、2024年ではさらに2560万円に到達しています。
2024年の資産の内訳のうち、最も割合が高かったのは定期性預貯金859万円(33.6%)、次いで普通預金などの通貨性預貯金が801万円(31.3%)、有価証券(株式や投資信託など)は501万円(19.6%)となります。
貯蓄とともに老後の暮らしを支える柱となるのは「公的年金」ですね。次では最新の年金額改定について触れていきます。
4. 2025年度の「公的年金は1.9%引き上げ」年金額例をチェック!
公的年金は賃金や物価の動向が反映される形で、年度ごとに改定がおこなわれるルールがあります。2025年度の年金額は、次のとおり前年度から1.9%の増額となりました。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分※1)
- 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
3年連続の引き上げ自体は喜ばしいことです。とはいえ、「マクロ経済スライド(※)」の発動により、物価上昇率を下回る改定率となっています。
つまり、年金額は物価上昇には追い付いておらず、実質は目減りしているということなのです。
※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
5. 【2025年の年金支給日カレンダー】増額された年金は「いつ受け取れる?」
改定率が適用されるのは、6月に支給される「4月分」の年金額からです。
5.1 支給日:支給対象月
- 2025年2月14日(金):12月・1月分
- 2025年4月15日(火) :2月・3月分
- 2025年6月13日(金) :4月・5月分
- 2025年8月15日(金) :6月・7月分
- 2025年10月15日(水) :8月・9月分
- 2025年12月15日(月) :10月・11月分
公的年金は、偶数月の15日(※)に、前月までの2カ月分がまとめて「後払い方式」で支給されます。そのため、「4月分の年金」が支給されるのは、2025年は「6月13日 金曜日」です。
次では、今の老齢年金エイジたちが実際に受け取っている年金額についても見ておきましょう。
※15日が土日・祝日の場合は、直前の平日に前倒しされます。
6. 65歳以上の《国民年金・厚生年金》平均はいくら?全体・男女差は?
厚生労働省年金局が公表する「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上の各年齢における平均年金月額は、国民年金のみの受給権者で5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給権者で14万円台~16万円台です。
ただし一人ひとりが実際に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況により個人差があります。グラフを交えながら、国民年金と厚生年金の「平均月額と個人差」を見てみましょう。
6.1 【老齢年金世代】国民年金・厚生年金「平均月額と個人差」
60歳~90歳以上の全受給権者の平均年金月額は下記の通りです。
国民年金(老齢基礎年金)
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
厚生年金(国民年金部分を含む)
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
平均年金月額は、国民年金のみを受け取る場合は男女ともに5万円台ですが、厚生年金を受け取る場合は男性16万円台、女性10万円台と差があります。
7. まとめ
ここまで、老齢年金世代となる65歳以上のリタイア夫婦の平均的な家計収支や、65歳以上の平均貯蓄額について解説しました。
65歳以上のリタイア夫婦は《毎月赤字が約3.4万円》となっており、年金のみで老後生活を過ごすには厳しい状況にあることがわかりました。
生活費が不足する場合、これまで貯めてきた預貯金などから補うことになるでしょう。
65歳以上の無職夫婦世帯の平均貯蓄額を見てみると、2019年~2024年まで増加傾向にあります。
しかし、貯蓄額には個人差あり、貯蓄が200万円未満の世帯が11.7%存在しています。
老後は現役時代よりも収入が低くなる傾向にあるため、今のうちから老後生活に向けた資金の準備方法について考えてみてはいかがでしょうか。





