2. 年金分割には2種類ある

「合意分割」と「3号分割」の2種類がある年金分割とは、離婚した夫婦のうち、厚生年金に加入していた側の「年金記録(報酬比例部分)」を、婚姻期間中のものに限って2人で分け合うことができる制度です。分割された記録は、将来の年金額に反映されます。つまり、年金そのものを半分にするのではなく、年金の元になる保険料納付の記録を分ける仕組みです。分割ということで年金記録を書き換えるので、年金分割の手続きは年金事務所で行います。

「合意分割」は、婚姻期間中にどちらかが厚生年金に加入していた夫婦が対象です。共働き夫婦でも、専業主婦と会社員の夫婦でも利用できます。分割の際には、標準報酬の多い方から少ない方へ記録が移されるため、仮に妻の方が高収入だった場合には、妻の記録の一部が夫に分割されるケースもあります。
一方の3号分割は、会社員や公務員などに扶養されていた配偶者、いわゆる「第3号被保険者」だった人が対象です。専業主婦やパートで扶養に入っていた方が主な該当者となります。分割できるのは、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間中に配偶者が納めた厚生年金の記録です。この部分については配偶者の同意がなくても、自動的に2分の1に分けることができるのが特徴です。
それぞれの違いについてみていきましょう。

合意分割と3号分割

合意分割と3号分割

出所:筆者作成

「合意分割」と「3号分割」について、4つのポイントにしぼって解説していきます。

夫婦の合意

  • 合意分割は、夫婦の合意が必要で、話し合いで分割割合を決めるのが基本です。ただし、夫婦間で合意がまとまらない場合は、当事者の一方からの求めにより裁判所が按分割合を決めることができます。
  • 3号分割は、配偶者の同意がなくても請求すれば自動的に分割されます。制度上の強制力があります。

分割対象期間

  • 合意分割は、婚姻期間中の厚生年金の「報酬比例部分」が全期間対象です。婚姻開始から離婚までの年金記録が分割可能です。
  • 3号分割は、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間に限られます。対象期間が限定されている点が特徴です。

分割割合

  • 合意分割は、最大2分の1まで分割できますが、実際の割合は夫婦の話し合いまたは裁判所で決まるので、必ずしも半分とは限りません。
  • 3号分割は、対象期間中の記録を一律2分の1に分割します。割合の調整はできません。

分割方法

  • 合意分割は、離婚後に年金事務所で「年金分割の合意書」などを提出して手続きします。合意内容に基づいて分割が実施されます。
  • 3号分割は、必要書類を揃えて年金事務所に請求するだけで、自動的に2分の1が分割されます。この場合、署名や合意なしで、会社員や公務員など厚生年金に加入していた第2号被保険者から扶養していた第3号被保険者へ分割されます。

2.1 年金分割は「離婚から2年以内」に請求しないとできない

年金分割を請求するには期限があり、離婚した日から2年以内に請求しなければなりません。これを過ぎると、分割そのものができなくなり将来の年金額に反映されません。「合意できていないから…」と言って放置して2年を過ぎると、年金分割の権利が消滅するので、必ず期限内に年金事務所で手続きするように気を付けましょう。

2.2 年金受給者でも年金分割制度は利用できる!

年金受給者でも離婚後に年金分割を請求することができます。年金分割が行われると、老齢厚生年金や障害厚生年金の額は分割後の標準報酬に基づいて再計算されます。原則として、分割が行われた月の翌月から年金額が改定されます。これにより、受給中の年金額が増減する場合があります。