6月は、公的年金の振込月であり、将来の年金や生活設計を見直すタイミングとして、年金制度について関心が高まる時期です。
筆者はファイナンシャルプランナーとして、老後の生活設計や年金制度の相談を受けています。
今回は、熟年離婚が増える中で注目される「年金分割制度」について、仕組みや実際の利用状況、注意点をわかりやすく解説します。
1. 「熟年離婚は増えているのに…」年金分割の利用はまだ少数派?
近年、「熟年離婚」する人がじわじわと増えているようです。2022年8月24日に厚生労働省が発表した「令和4年度「離婚に関する統計」の概況」についてみていきましょう。
同居期間20年以上の離婚は、年々その割合を高めていることがわかります。昭和の時代は「5年未満」が半数を占めている状況で短期離婚が主流でしたが、令和に入ってからは同居期間「20年以上」の割合が大きく伸び、今や離婚全体のおよそ2割を占める状況がわかります。
しかし、専業主婦やパートなどで働いていなかった配偶者が離婚をすると、十分な年金が受け取れなくなる可能性があります。そうした課題を解決するために、2007年から始まったのが「年金分割制度」です。制度の目的は、婚姻中の経済的貢献を年金にも反映させることにあります。特に熟年離婚が増える中で、老後の生活資金を守る重要な仕組みとなっています。
ちなみに、この年金分割制度は離婚した夫婦のうち、どのくらいの組が利用しているのでしょうか?
厚生労働省が発表した「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の厚生年金保険(第1号)における離婚等に伴う年金分割の状況についてみていきます。
【令和5年度】離婚等に伴う保険料納付記録分割件数について
- 離婚件数(組) :18万4223件
- 分割件数総数(件):3万2642件
→離婚件数に対する保険料納付記録分割件数の割合:17.8% - 離婚分割(件) :2万1625件
- 3号分割のみ(件):1万1017件
令和5年度に実施された年金分割の件数は合計3万2642件、これは離婚した夫婦のおよそ2割弱しか年金分割をしていないということになります。熟年離婚が増加する中でも、制度の活用が進んでいない現状がうかがえます。
また、離婚分割は2万1625件で、そのうち配偶者の合意がいらない「3号分割」は1万1017件実施されています。
この年金分割には、夫婦の必要な「合意分割」と、合意がいらない「3号分割」の2種類あります。次の章でポイントにしぼって解説していきます。