梅雨空の合間に夏の気配を感じる季節となりました。新社会人として新たな生活をスタートした方のなかには、初任給を受け取り、仕事や一人暮らしにも少しずつ慣れてきたという人も多いのではないでしょうか。

こうした時期は、毎月の収支を見直したり、将来に向けた資産形成について考え始めたりする良いタイミングです。また、夏のボーナスシーズンを迎え、「まとまったお金をどのように活用するか」を検討している方もいるかもしれません。

実際に、株式会社トレジャープロモート(株の学校ドットコム)が2026年3月に実施した「資産運用に関する意識調査」では、新社会人が「今後始めてみたい資産運用」として最も多く選んだのが「NISA」(43.0%)でした。

また、全国の個人投資家に「新社会人に勧めたい資産運用」を尋ねたところ、こちらも「NISA」が60.3%で最多となっています。「少額からでも早く始めることが大切」「長期間続けることで効果を期待しやすい」といった声が多く寄せられており、投資経験者ほど時間を味方につける重要性を強調しています。

では、積立投資を始める時期によって、将来の資産形成にはどの程度の差が生まれるのでしょうか。

本記事では、あえて「50歳から老後資金づくりを始めた場合」を想定し、老後資金2000万円を目指すために必要な積立額をシミュレーションします。また、毎月の積立だけでなく、夏と冬のボーナスを活用した資産形成の考え方についても紹介します。

新NISAの基本的な仕組みを確認しながら、「50歳スタート」の負担感や、20代・30代から始めた場合との違いについて見ていきましょう。

1. 【新NISA】制度改正で何が変わったのか 基本ポイントを整理

NISA(少額投資非課税制度)は、個人の資産形成を後押しすることを目的として設けられた制度です。2014年にスタートした後、制度改正が行われ、2024年からは「新NISA」として大幅に内容が見直されました。

通常、株式や投資信託で得た利益には税金がかかります。売却による利益や配当金、分配金には20.315%の税率が適用されるため、仮に10万円の利益が出ても、実際に手元へ残るのはおよそ8万円程度です。

これに対して、NISA口座内で得た利益は非課税となります。そのため、本来であれば税金として差し引かれる分もそのまま資産として残り、再投資に回すことも可能です。運用期間が長くなるほど、この非課税メリットは大きな差となって表れてきます。

利益に対して税金がかからないことは、NISA制度の最大の魅力といえるでしょう。将来に向けた資産づくりの手段として関心を集めている背景には、この大きなメリットがあります。

新NISA「非課税」のしくみ2/5

新NISA「非課税」のしくみ

出所:金融庁「NISAを知る」

もっとも、新NISAには投資できる金額や対象商品など、あらかじめ定められたルールがあります。制度を有効に活用するためにも、まずは基本的な仕組みを理解しておきましょう。

1.1 「新NISA」の知っておきたい魅力的な6つのポイント

新NISAでは、長期・積立・分散投資をより続けやすくするために制度が拡充されています。押さえておきたい主なポイントは次の6つです。

【新NISA】「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の特徴3/5

【新NISA】「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の特徴

出所:金融庁「NISAを知る」

  1. 非課税で運用できる期間に期限がなく、長期保有が可能
  2. 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同時に利用できる
  3. 年間の投資上限は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円
  4. 生涯で使える非課税枠は合計1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)※売却した枠は、翌年以降に取得価額(購入金額)ベースで再利用が可能
  5. つみたて投資枠は、長期・分散投資に適した一定の投資信託に限定
  6. 成長投資枠では、上場株式や投資信託など幅広い商品が対象

「投資は資金に余裕がある人だけのもの」と考えている方もいるかもしれません。

しかし現在は、数百円程度から購入できる投資信託も数多く存在します。新NISAを活用すれば、少額からコツコツ積立投資を始めることも可能です。まとまった資金を準備しなくても始めやすいことは、制度の大きな魅力のひとつといえるでしょう。

次章では、毎月一定額を積み立てた場合に、将来どの程度の資産形成が期待できるのかをシミュレーションで確認していきます。

2. 【新NISA】毎月5万円を15年間積み立てると資産はいくらになる?想定利回り別・試算シミュレーション

ここからは、新NISAを活用して積立投資を続けた場合に、資産がどのように増えていく可能性があるのかを見ていきます。

今回は次の条件を設定し、想定利回りを年1%から5%まで変えながら試算しました。

  • 積立期間:50歳〜65歳までの15年間
  • 毎月の積立額:5万円
  • 運用商品:年率1〜5%で運用したケースを想定

2.1 【想定利回り別シミュレーション結果】「毎月5万円」×15年×「年1~5%」で積立投資

【新NISA】想定利回り別「月5万円」積立投資シミュレーション結果4/5

【新NISA】想定利回り別「月5万円」積立投資シミュレーション結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

想定利回り:資産評価額(元本部分は900万円)

  • 年1%:970万6000円
  • 年2%:1048万6000円
  • 年3%:1134万9000円
  • 年4%:1230万5000円
  • 年5%:1336万4000円

毎月5万円の積立を15年間継続した場合、投資元本は合計900万円になります。

さらに、積立と運用を同時に続けることで、最終的な資産額が1000万円を超えるケースも期待できます。

例えば年1%で運用できた場合でも、元本に対して約70万円の運用益が見込まれます。年5%で運用できたケースでは、利益部分だけで400万円を超えており、複利の効果によって資産形成に大きな差が生じることが分かります。

ただし、高いリターンが期待できる商品ほど値動きも大きくなりやすい点には注意が必要です。

そのため資産運用では、「どれだけ増えるか」だけではなく、「値下がりした局面でも続けられるか」という視点を持つことが重要です。自身の収入やライフプランを踏まえながら、無理なく継続できる方法を選びましょう。

3. 【新NISA】投資だけに頼らない 老後資金づくりの考え方

3.1 老後資金の全体像を整理する

老後資金を考える際、「投資でどれだけ資産を増やせるか」に目が向きがちです。しかし実際の老後生活は、投資の利益だけで成り立つものではありません。

多くの人にとって生活の土台となるのは公的年金です。そのうえで、退職金や預貯金、場合によっては就労による収入などを組み合わせながら家計を支えていくことになります。

そのため、老後に向けた準備では「これから増やす資産」だけに注目するのではなく、「すでに持っている資産や将来受け取る収入」を整理することも欠かせません。

まずは年金見込額や退職金の金額、現在の預貯金残高などを確認し、不足が見込まれる部分をどのように補うかを考えることが、現実的な資金計画につながります。

3.2 新NISAの位置づけを考える

新NISAは長期的な資産形成を支援する制度ですが、老後資金のすべてを投資で準備するための仕組みではありません。

むしろ、公的年金や退職金だけでは不足する可能性がある部分を補う手段のひとつとして活用するほうが、現実的な考え方といえるでしょう。

「老後資金は投資で作らなければならない」と考えすぎると、相場下落時の不安が大きくなり、長期運用を続けることが難しくなる場合があります。

一方で、「生活の基盤は年金や預貯金で確保し、その一部を新NISAで補う」という考え方であれば、値動きに対する精神的な負担も抑えやすくなります。

3.3 投資に不安がある人が意識したいこと

投資経験が少ない人ほど、「もっと資産を増やさなければ老後資金が足りなくなるのではないか」と不安を抱きやすい傾向があります。

しかし、老後資金づくりにおいて重要なのは、大きな利益を狙うことだけではありません。預貯金、公的年金、投資などをどのような割合で組み合わせるかがポイントになります。

例えば、生活防衛資金として一定額の預貯金を確保したうえで、余裕資金の範囲内で新NISAによる積立投資を続ける方法も、十分に現実的な選択肢です。

長期の資産形成では、「無理なく続けられること」が何よりも重要なポイントになります。

4. 【新NISA】2000万円形成を目指すには?現実的な積立プランをシミュレーションで検証

老後資金として必要になる金額は、持ち家か賃貸か、家族構成はどうかといった条件によって大きく変わります。それでも、多くの人がひとつの目標として意識しているのが「老後2000万円」という水準ではないでしょうか。

そこで今回は、50歳から65歳までの15年間で2000万円の資産形成を目指す場合、毎月どの程度の積立が必要になるのかをシミュレーションをもとに見ていきます。

4.1 【シミュレーション結果】「15年間」×3%で積立投資

【新NISA】積立金額別「想定利回り3%」積立投資シミュレーション結果5/5

【新NISA】積立金額別「想定利回り3%」積立投資シミュレーション結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

毎月の積立金額:資産評価額

  • 1万円:227万円
  • 3万円:680万9000円
  • 6万円:1361万8000円
  • 9万円:2042万8000円
  • 12万円:2723万7000円

※想定利回り:年3%

今回のシミュレーションでは、年3%で運用できたと仮定した場合、毎月9万円を15年間積み立てることで、最終的な資産額は約2000万円に達する結果となりました。

ただし、毎月9万円という積立額は、多くの家庭にとって決して軽い負担ではありません。また、運用成果は市場環境によって変動するため、常に想定通りの利回りが得られるとは限らず、結果が下回る可能性もあります。

そのため、老後資金を準備するうえでは、「毎月いくら積み立てるか」だけでなく、「どれだけ長く運用できるか」という視点も重要になります。

例えば同じ年3%で運用するケースでも、30歳から65歳まで35年間積立を続けた場合、2000万円を目指すために必要な積立額は毎月およそ2万7000円程度まで抑えられます。

このように、積立を始める時期が早いほど時間を味方につけやすくなり、毎月の負担を軽減しながら効率的に資産形成を進めることが可能になります。

5. 【新NISA】積立額を増やす選択肢としての「ボーナス積立」

先ほどのシミュレーションでは、毎月5万円を15年間積み立てるケースを見てきました。

しかし、実際の家計では毎月一定額を積み立て続けることが難しい人も少なくありません。特に住宅費や教育費など固定的な支出が大きい世帯では、毎月の積立額を増やすことに負担を感じる場合もあるでしょう。

そこで考えたいのが、「ボーナス積立」という方法です。

5.1 毎月の積立額を抑えるという選択肢

資産形成では「毎月いくら積み立てるか」に注目が集まりがちですが、必ずしも毎月同じ金額を積み立てる必要はありません。毎月の積立額を抑え、その代わりに夏と冬のボーナスを活用する方法も選択肢のひとつです。

家計に無理のない範囲で積立を続けやすくなるため、長期投資との相性も良い方法といえるでしょう。

5.2 毎月3万円+ボーナス20万円ならどうなる?

たとえば、毎月3万円を積み立て、さらに夏と冬のボーナス時にそれぞれ10万円ずつ追加投資するとします。

年間の投資額は次のようになります。

  • 毎月3万円×12か月=36万円
  • ボーナス時10万円×年2回=20万円

合計56万円/年

15年間続けた場合の投資元本は840万円です。

これを年3%で運用できたと仮定すると、資産額はおよそ1040万円前後になります。

毎月5万円積立(元本900万円)のケースには及ばないものの、毎月の負担を2万円減らしながら1000万円規模の資産形成を目指せる計算です。

5.3 ボーナス活用で積立額を調整する選択肢

同じ年間投資額でも、積立方法は一つではありません。

たとえば、

  • 毎月2万円+ボーナス15万円×年2回
  • 毎月3万円+ボーナス20万円×年2回
  • 毎月4万円+ボーナス10万円×年2回

など、自身の家計に合わせて配分を調整できます。

新NISAは長期間続けることで効果を発揮しやすい制度です。毎月の積立額だけにこだわるのではなく、ボーナスも活用しながら無理のない形で投資を継続することが、長期的な資産形成につながるでしょう。

6. まとめにかえて:長期・積立・分散。長期投資を成功させるために意識したいポイント

ここまで、新NISAを活用した積立投資について、具体的なシミュレーションを交えながら見てきました。

50歳から老後資金2000万円の形成を目指す場合、必要となる積立額は決して小さくありません。一方で、若いうちから積立をスタートできれば、運用期間を長く確保できるため、毎月の負担を抑えながら目標に近づきやすくなります。

また、物価上昇が続く環境では、預貯金だけで資産を保有していると、金額は変わらなくても実質的な価値が少しずつ低下していく可能性があります。そのため、「少額でも始める」「できるだけ早く始める」「長く続ける」という考え方が、これまで以上に重要になっています。

新NISAは、少額から利用できる非課税制度であり、長期の積立投資との相性にも優れています。最初から大きな金額を用意する必要はなく、自分の家計に無理のない範囲で継続することが将来の資産形成につながります。

将来のお金に対する不安を軽減するためにも、まずは現在の家計状況や老後の目標額を整理し、自分に合った積立計画を考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料