厚生労働省が公表した「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から1.9%の引上げです~」によると、2025年度の年金額は前年度より1.9%増えることがわかりました。

物価の上昇が続いていますが、年金を受給している世代はどのような暮らしをしているのでしょうか。

本記事では【65歳以上・無職二人以上世帯】の平均的な「貯蓄額」「中央値」をご紹介します。

また《厚生年金・国民年金・家計収支》の平均も見ていきますので、老後生活の参考にご覧ください。

1. 【65歳以上・無職夫婦世帯】「ひと月の収入・支出」はいくら?

老齢年金世代が「年金にゆとりがない」と感じる理由1/6

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2024年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、60歳代・70歳代の二人以上世帯において、60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答。

年金にゆとりがない理由として「物価上昇」「医療費・介護費負担の増加」などが上位に挙がっています。

完全リタイア後の老齢年金世帯では、現役時代よりも収入が下がるケースが一般的ですから、今後も引き続き、こうした負担感が増えることが見込まれるでしょう。

まずは、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を確認していきます。

「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支2/6

65歳以上の生活費

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」

1.1 【老齢年金世帯】65歳以上無職夫婦:毎月の収入

  • 収入合計:25万2818円
  • うち社会保障給付(主に年金):22万5182円

1.2 【老齢年金世帯】65歳以上無職夫婦:毎月の支出

  • 消費支出:25万6521円
  • 非消費支出:3万356円

支出合計28万6877円

この世帯の場合ひと月の収入は25万2818円、その約9割22万5182円を公的年金などの社会保障給付が占めます。

一方で支出の合計は28万6877円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万356円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が25万6521円でした。

この夫婦世帯の場合、毎月約3万円の赤字となり、貯蓄の取り崩しなどで補填する必要があります。

そこで気になるが「老齢年金世代」の貯蓄事情です。次では65歳以上世帯の貯蓄額データを見ていきましょう。

2. 【65歳以上・無職二人以上世帯】「平均貯蓄額」は2000万円超え?

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-」によると、65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の貯蓄額に関するデータは以下のとおりです。

世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄の種類別現在高の推移(二人以上の世帯)3/6

65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」

「世帯主が65歳以上の無職世帯」の貯蓄の平均貯蓄額は、2560万円でした。

その推移をみると、2019年 2218万円→2020年 2292万円→2021年 2342万円→2022年 2359万円→2023年 2504万円→2024年 2560万円と、直近5年は右肩上がりの状態が続いています。

貯蓄の種類別に見ていくと、最も多いのは定期性預貯金の859万円。次いで通貨性預貯金が801万円、有価証券(※1)が501万円、生命保険などが394万円、金融機関外(※2)が6万円です。

また、前年からの増え幅を見ると、通貨性預貯金が+47万円(+6.2%)、有価証券が+21万円(+4.4%)などとなっています。

次では勤労世帯も含めた「65歳以上二人世帯」全体の貯蓄事情をのぞいてみましょう。

※1 有価証券:株式,債券,株式投資信託,公社債投資信託,貸付信託,金銭信託など(いずれも時価)
※2 金融機関外:金融機関以外への貯蓄のことで、社内預金、勤め先の共済組合への預金など

3. 【65歳以上・勤労世帯を含む二人以上世帯】「貯蓄の平均」「中央値」はいくら?

同じく「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、勤労世帯も含めた世帯主が65歳以上世帯全体の貯蓄額を見ていきます。

世帯主が65歳以上の世帯の現在貯蓄高階級別世帯分布(二人以上の世帯)ー2024年ー4/6

65歳以上の貯蓄分布

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」

3.1 65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

  • 平均:2509万円
  • 貯蓄保有世帯の中央値(※):1658万円

勤労世帯も含めた「世帯主が65歳以上の二人以上世帯」の平均貯蓄額は2509万円でした。ただし、貯蓄保有世帯の中央値(※)を見ると1658万円にまで下がります。

次はシニア世帯の暮らしを支える柱となる「老齢年金」についても見ていきます。

※貯蓄保有世帯の中央値:貯蓄が0円の世帯を除いた世帯を、貯蓄現在高の少ない方から順番に並べたときに真ん中に位置する世帯の貯蓄現在高

4. 【2025年度】増額改定で「国民年金・厚生年金」は1.9%増える

公的年金額は、物価や現役世代の賃金を考慮して年度ごとに改定されます。2025年度分は前年度より1.9%増額となり、3年度連続のプラス改定となりました。

年金額例を具体的に見ていきましょう。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分※1
  • 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分※2

ただし上記はあくまでも「年金例」です。実際に支給される年金額は、現役時代の年金加入状況により個人差が出ます。

なお、年金額自体は1.9%増えますが、マクロ経済スライド(※3)の発動により、実質的には目減りしている点には留意が必要です。

次では、今のシニア世代が実際にどの程度年金を受け取れているかを確認します。

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
※3 「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ

5. 【国民年金・厚生年金】今のシニア世代はいくら受給できているのか?

国民年金・厚生年金「平均月額や個人差を見る」6/6

出所:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、国民年金・厚生年金(※)の平均年金月額や個人差を見ることができます。

2023年度末現在の平均年金月額は以下の通りです。

※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。また、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)部分が含まれています。

5.1 国民年金(老齢基礎年金):平均年金月額

  • 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
  • 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万5777円

5.2 厚生年金(国民年金部分を含む):平均年金月額

  • 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万7200円

平均年金月額は、国民年金のみを受け取る場合で男女ともに5万円台。厚生年金(国民年金部分を含む)を受け取る場合で、男性16万円台、女性10万円台です。

ただしグラフでもわかるように、国民年金、厚生年金それぞれの受給権者どうしでも年金額には大きな個人差があります。

老後の年金額は、現役時代の働き方や収入が反映されます。ご自身の年金見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認が可能です。

6. まとめにかえて

ここまで【65歳以上・無職二人以上世帯】の平均的な「貯蓄額」「中央値」をご紹介しました。

また《厚生年金・国民年金・家計収支》の平均も見ていきました。

現在のシニア世代のお金事情を見てみると、平均で毎月約3万円の赤字が出ていることがわかりました。

2025年度の年金額は前年度より1.9%増えることが決定していますが、物価の上昇に追い付いていないため、老後生活の負担が大きく軽減されるわけではなさそうです。

現役世代の方が年金を受給する年齢になる頃には、さらに物価が上がっている可能性も考えられます。

老後の生活に向けて、今の家計の状況だけでなく「年金の見込額」なども把握しておくことが大切です。

ライフスタイルに合った「老後資金の準備方法」について検討してみてはいかがでしょうか。

参考資料