「預金者が亡くなるとすぐに口座凍結される」、こんな話を聞いたことはないでしょうか。
親が亡くなったとき、葬儀費用や当面の生活費をどう工面するかは多くの人が直面する問題です。
この記事では、知っておきたい口座凍結の仕組みや、死亡後にATMで引き出すことの可否について元銀行員の筆者が解説します。
1. 亡くなってすぐに口座凍結されるわけではない
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よく「預金者が亡くなると口座が凍結されて引き出しができなくなる」と耳にすることがあります。
しかし、銀行口座は預金者が亡くなってただちに凍結されるわけではありません。
銀行口座が凍結されるのは、銀行側が死亡の事実を知ったタイミングです。具体的には、下記のような例が挙げられます。
- 新聞のお悔やみ欄への掲載
- 遺族から死亡の事実の届け出
- 銀行役職員による通夜・葬儀への参列
銀行では、役所から死亡の情報が共有されるような仕組みはありませんので、もし亡くなったことが伝わらなければ長い間凍結されないことも十分起こり得ます。
2. 凍結されていなければATMで引き出すことは可能
たとえば、親が亡くなったときに「当面の生活資金を引き出したい」、「葬式代を親の預金から支払いたい」ということもあるでしょう。
銀行側に死亡の事実が伝わらずに凍結されていなければ、預金者が亡くなった後もATMで引き出すことは可能です。
ただし、口座に預けている預金は、親が亡くなった時点で「相続資産」となります。
ATMで引き出して使うことで、後々他の相続人とトラブルに発展してしまうこともあるかもしれません。
相続トラブルと聞くと「うちに限ってそんなことはない」と思うかもしれませんが、遺産分割に関するいざこざは決して珍しいことではありません。
最高裁判所の「司法統計」によると、2013年には1万2263件だった遺産分割に関するトラブルが2023年には1万3872件へと増加しており、年々増加傾向にあることが分かります。
つまり、相続トラブルはどの家庭にも起こり得ることといえるでしょう。
ATMからの引き出しについても、他の相続人から「他のことに使ったのでは?」「自分だけ相続資産が多く受け取っているのでは?」といった疑いをかけられないためには、引き出す際にきちんと出金する金額やその目的を共有しておくことが大切です。
また、葬式代などに充てた場合はその領収書も保管しておくようにしましょう。
2.1 税務署から疑いをかけられるきっかけになることも
前述の通り、口座に預けている預金は亡くなった時点で相続資産となります。
そのため、もし税務署から調査が入ったときに死亡後に何度も出金している履歴があると「資産隠しなのでは?」、「他にも資産があるのでは」と疑いをかけられるきっかけにもなりかねません。
葬式代など資金使途を証明しやすいものを除いて、「口座が凍結される前にとりあえず出金しておこう」といった安易な資金移動は控えるようにしましょう。
3. 相続預金の払い戻し制度の活用がおすすめ
死亡によって凍結された預金口座は、相続手続きが終わるまで引き出すことができません。
もし当面の生活資金や葬式代などを引き出したい場合は、「相続預金の払い戻し制度」を活用することがおすすめです。
相続預金の払い戻し制度とは、相続手続きが終わる前でも一定金額を引き出すことができる制度です。引き出しができる金額は下記の式によって算出されます。
- 相続開始時の預金額(口座・明細ごと)×1/3×払戻しを求める相続人の法定相続分(ただし、150万円が上限)
たとえば、相続人が子供3人で相続開始時の預金が900万円だった場合、100万円まで引き出しができる計算です。
凍結後に資金が必要となった場合は、こういった仕組みを活用するとよいでしょう。
4. むやみに引き出すことは避けよう
預金口座は亡くなるとすぐに凍結されるわけではないものの、ATMでむやみに引き出していると後々相続トラブルに発展してしまうことも考えられます。
当面の生活資金や葬式代などどうしても資金が必要な場合は、他の相続人の同意を得たうえで出金し、きちんと領収書を残しておくようにしましょう。
また、こうした相続に関することは普段から家族間で話し合っておくことも大切です。
いざというときに慌てないために、「葬式代はどこから工面する?」、「どの金融機関と取引がある?」といったことを家族内できちんと共有しておくようにしましょう。
参考資料
椿 慧理