不動産投資の目的は、インカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売買益)と説明される場合が多いですね。もちろん間違いではありませんが、これに加えて、筆者はローン元金の減少スピードも重要なポイントだと思っています。
たとえば、アパートローン金利が年利2%の場合と5%の場合を比べてみましょう。借入元金5,000万円をボーナス払い無しで元利均等払い35年ローンを組むと、毎月のローン返済額は前者が16万5,600円となり後者は25万2,000円となります。金利が高いと支払額が膨らむのは当然ですが、さらに重要なのはこれら毎月の返済額中の元金返済分が、どの程度になっているかなのです。
年利2%の場合、毎月返済額に占める元金の割合は初回返済時に約50%になります(元金8万2,300円、金利8万3,300円)。一方、年利5%の場合は約17%となります(元金4万4,000円、金利20万8,300円)。つまり、金利が高くなればなるほど最初は金利ばかりを払うことになり、元本はなかなか減っていきません。つまり、金利が低ければ低いほど元本返済スピードが漸増し、その不動産が実質的に自分のものになっていくスピードが速くなるということです。
さて、この5,000万円の物件を10年間賃貸し、その後売却したとして考えてみましょう(頭金なし、税金、売買手数料等を除く)。金利2%の場合の10年後の元金は3,900万円となり、金利5%の場合の10年後の元金は4,300万円となります。この物件が4,800万円で売れたとして、前者の場合はローン返済後900万円の売買益となりますが、後者の場合は500万円にしかなりません。
10年間の家賃収入は全て返済に回し、家賃収入と毎月の返済額が同額だったとして、10年間の実質投資収益率は前者が年率1.2%、後者が年率0.9%となります。実質投資収益率で見るとかなり低いリターンに見えますが、ローン返済を家賃で返済して売却益が出るのですから、こういうケースでは不動産投資はかなり固い投資ともいえるでしょう(その他、賃貸物件の原価償却等による損金計上、個人所得税の減額による実質リターン向上効果はここでは触れません)。
つまり、不動産投資の本質は以下のようにまとめることができます。
- 優良物件にしか手を出さない(売るという前提で買う。自宅購入も同じ目線で)
- 金利はなるべく低く借り、頭金はゼロが望ましい
- 表面利回り(年間家賃収入÷購入価格)ではなく、売却後のキャッシュフローで考える
単純に考えれば、不動産投資の最終的な実質リターンは家賃収入による表面利回りではなく、”(家賃収入-ローン返済)+(売却価格-ローン残高)となるのです。
本稿は以上です。なお、GCIアセット・マネジメントでは、2019年から毎月数回、資産形成・運用などに関するさまざまなテーマで無料セミナーを開催いたします。ご興味のある方は、こちらからセミナー情報の詳細をご覧ください。