中国景気の現状は? 関税措置によるダメージを考えるヒント

「柏原延行」のMarket View 2018年11月20日

皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

東京では、街の木々が一部色付き始めました。写真が好きな私にとっては、楽しみな季節です。

さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。

  • 11月末に予定されているトランプ大統領と習近平国家主席との会談結果は、市場に大きな影響を与えると思われる。
  • 昨今の報道をみると、なんらかの合意が行われる可能性があるとの見方もある。一方で、トランプ大統領の最終的な決断には不透明感が強い。
  • 合意が実現した場合は、株式市場は上昇すると思われる。問題は、合意が得られなかった場合、どのような反応があるかである。
  • 合意が得られなかった場合のポイントは、現在の(あるいは、強化される)関税措置などにより、中国経済が底割れする可能性があるか、否かであると考える。中国の7~9月期の実質GDPは低調な数字であり、かつ貿易・知財問題が長引いた場合のコンセンサスは景気悪化であるが、足元の一部のデータからは、中国政府の景気対策などにより、景気の大幅な落ち込みは回避できると考えることも可能であると思われる。
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トランプ大統領と習近平国家主席は、11月末に会談すると伝えられており、米中の貿易・知財問題に関する会談結果は、市場に大きな影響を与えると思われます。

ムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相が電話会談したとの報道をクドロー米国家経済会議(NEC)委員長が認めるなど、なんらかの合意が行われることを示すサインが出てきており、貿易・知財問題に関する(なんらかの)合意が行われ、現在の関税措置などが緩和される可能性があるとの見方もあります。

しかし、トランプ大統領がどのような判断をするかを、自信を持って、高い確度で予測できる識者はいないように思われます。

もし、なんらかの合意が行われた場合、(少なくとも短期的には)株式市場の上昇要因になると考えることが自然です。それでは、逆に11月末の会談で、現在の措置を緩和する方向での合意が行われなかった場合には、どの程度の影響があるのでしょうか(なお、仮に合意に至らなかった場合でも、昨今の株式市場の不安定さを考えると、交渉が続けられることが示唆される可能性が高いと私は考えています)。

しかし、念には念をいれて、仮にこの問題の解決には長い時間を必要として、かつその解決までの期間は、現在の(あるいは、強化される)関税措置などが続けられることになった場合の市場の反応は、中期的かつ持続的な株式市場の下落になるのでしょうか。

まず、短期的な反応としては、株価は下落すると思われます。それでは、中期的な反応はどうなるのでしょうか? この問題を考える上でのポイントは、現在の(あるいは、強化される)関税措置などが中国経済にどの程度のダメージを与えるか、具体的にいうと「中国の景気減速が世界的なリスクオフをもたらすような大規模なものになるか、否か」であると思われます。

これを考えるヒントとして、現在の中国の景気がどのような状況であるかを整理したいと考えます。

経済成長を示す最も基礎的な統計は実質GDPですが、中国の7~9月期実質GDPは、前年比6.5%であり、2009年1~3月期以来の低い数字となりました。これだけをみると「経済がどこまで悪くなるかわからないと不安になり、かつ貿易・知財問題が長引いた場合のコンセンサスは当然景気悪化」ですが、足元のデータが、すべて景気悪化を示唆しているわけではありません。

中国政府の発表する統計には様々な意見があるため、国際機関や民間、市場データから探してみました。OECDの発表する景気先行指数(中国)は、本年4~6月期を底にして反転しています。小松製作所の発表する建機の平均稼働時間データ(月次KOMTRAXデータ、10月、中国)は、前年比8%を超える伸びとなりました。前年比のプラスは、2018年1月以降9カ月ぶりです(1月、2月データには春節の影響があると思われます)。

また、市場データに目を転じてみると、中国株が足元でやや戻しています(図表1)。中国景気が底割れすると豪州の資源輸出は弱含む可能性が高いため、中国景気の影響を受けると思われる豪ドル(対米ドル)も、足元で上昇しています(図表2)。

これらのデータからは、仮に米中貿易・知財問題についての解決が長引いても、中国政府の景気対策などにより、景気の大幅な落ち込みは回避できると考えることも可能であると思われます。

図表1:中国上海総合指数
2017年11月1日~2018年11月15日:日次

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図表2:豪ドル(対米ドル)
2017年11月1日~2018年11月15日:日次

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出所:図表1、2ともブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成


(2018年11月19日 9:30頃執筆)

【当資料で使用している指数についての留意事項】
上海総合指数は上海証券取引所が公表する指数です。

柏原 延行

参考記事

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柏原 延行
  • 柏原 延行
  • アセットマネジメントOne株式会社 
  • 運用本部調査グループ チーフ・グローバル・ストラテジスト

現みずほ銀行の運用担当者(外国債券など)を経て、運用会社にて、株式運用部長、企業調査部長、運用戦略部長などを歴任後、現在はアセットマネジメントOneにて、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めております。
運用会社に勤務して、はや25年を超えました。遊び心も忘れずに、皆さまのお役に立てるコラムをお届けしたいと考えます。妻、娘の3人家族です。
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター非常勤講師、日本証券アナリスト協会検定会員。大阪大学卒業、筑波大学大学院修了。