年金を主要な収入源としているシニア世帯では、近年続く物価高に加えて、年金額が実質的に減少しているため、経済的に困窮しているケースが増加しています。

政府や自治体は、生活が苦しいシニアを支援するためのさまざまな給付金や助成支援を行っています。

しかし、このような支援制度の多くが「申請しないと受け取れない」ため、注意が必要です。

本記事では、シニアが対象の申請をしないともらえないお金について紹介します。

1. 【年金関連】申請しないともらえないシニアが対象のお金3選

まずは、「年金」に関連する制度の中で、申請によって受け取ることができるお金について確認していきましょう。

1.1 年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は、公的年金やその他の収入が少ない高齢者の経済的負担を和らげることを目的として設けられた制度です。

この給付金を受け取るには、「老齢基礎年金(国民年金)」「障害年金」「遺族年金」のいずれかを受給していることに加えて、いくつかの基準を満たすことが条件となります。

たとえば、老齢基礎年金(国民年金)を受け取っている方が「老齢年金生活者支援給付金」を受給するための要件は下記のとおりです。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者である
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税である
  • 前年の公的年金等の収入金額※1とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下※2である。
    ・※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
    ・※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2025年度における老齢年金生活者支援給付金の月額は「5450円」とされており、この額が毎月支給された場合、年間ではおよそ6万円の給付を受けることができます。

なお、この制度は「年金受給者ごと」に支給されるため、夫婦それぞれが受給資格を満たしていれば、月に約1万円を受け取ることも可能です。

1.2 加給年金

「加給年金」は、厚生年金保険の加入者が年金を受け取る際に、一定の要件を満たす配偶者や子どもを扶養している場合に、年金額に上乗せして支給される制度です。

この制度は言わば「年金の扶養手当」とも呼ばれており、加給年金を受給するためには、次の2つの条件をクリアしている必要があります。

  • 厚生年金保険の被保険者期間が20年※以上であること
  • 65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている配偶者または子どもがいること
    ・配偶者:65歳未満で厚生年金加入(共済を含む)が20年未満
    ・子ども:18歳到達年度の末日まで(高校卒業の3月まで)、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満

※または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年

留意点として、加給年金の対象となるのは「厚生年金」に加入していた方に限られます。

したがって、自営業などで「国民年金のみ」に加入していた方は、この加給年金の支給対象には含まれないため注意が必要です。

支給額は最大で年間約40万円となるため、老後の家計を支える上で大きな助けとなるでしょう。

1.3 振替加算

振替加算は、加給年金の支給が終了した後に、一定の条件を満たす65歳以上の配偶者に支給される制度です。

つまり、前章で紹介した「加給年金」は、配偶者が年金受給資格年齢に達すると支給が終了しますが、その後は「振替加算」が配偶者の老齢基礎年金に加算されるのです。

振替加算が受け取れる要件は、下記のとおりです。

  • 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
  • 妻(夫)が老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間をあわせて240月未満であること
  • 妻(夫)の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の(夫は40歳以降の)加入期間が、次の表未満であること

振替加算の金額は、年間約1万9000円から1300円の範囲で、受給者の生年月日によって異なります。

なお、65歳を過ぎてから老齢基礎年金の受給資格を得た場合、加給年金の対象者でなかったとしても、特定の条件を満たすことで振替加算が適用されることがあります。

振替加算は基本的に自動的に適用されますが、例外として上記のように「加給年金は受け取っていないが振替加算は受け取れる」という場合には、申請が必要になりますので、その点は注意が必要です。