2.2 繰下げ受給のデメリット

繰下げ受給のデメリットは、早く亡くなった場合、年金の総受給額が少なくなることです。

70歳に受給開始して1年で亡くなると、年金は1年分しか受け取れません。年金額の増額を期待して受給を我慢していても、損をすることもあります。

また、加給年金や振替加算(※)の受給権がある人は、繰下げ待機中(65歳から繰下げ受給開始までの期間)は支給停止となるので注意が必要です。

特に、加給年金額は下記の通り高額であるため、繰下げ受給して支給停止になると損をすることもあります。

  • 配偶者:41万5900円(2025年度)
  • 1人目・2人目の子ども:23万9300円
  • 3人目以降の子ども:7万9800円

※厚生年金加入20年以上の人とその配偶者や子どもが一定要件を満たした場合、本人または配偶者に加算される年金のことです。詳細は参考資料で確認ください。

さらに、繰下げ受給によって年金額が増えた場合、所得税や住民税、社会保険料が増える可能性があります。

年金額が高額な人ほど、期待したほど手取り収入が増えないという事態が考えられます。税金や社会保険料も考慮して、繰下げ受給の可否を検討しましょう

3. まとめにかえて

繰上げ受給の魅力は、65歳前までの収入が増えることです。ただし、年金額が減少し長生きするほど老後生活が厳しくなるというデメリットもあります。

一方、繰下げ受給は待機期間中は年金が受け取れないというデメリットはありますが、受給開始後の年金額は増えます。

総受給額を考えると、早く亡くなった場合は繰上げ受給が有利、長生きするほど繰下げ受給が有利です。

実際には、すぐにお金が必要な人は仕方なく繰上げ受給し、65歳以上も収入に困らない人が繰下げ受給を検討するというケースが多いでしょう。

60歳以降の収入や支出、健康状態、長期的な損得(損益分岐点)などを総合的に勘案して、受給開始時期を検討しましょう。

参考資料

西岡 秀泰