10月12日付の記事『投資から資産形成へ。変化のキーワードは「積立」?』では、2018年のサラリーマン1万人アンケートで「投資をしている人」の比率が上昇していることを紹介しました。その背景のひとつとして、10月19日付の『投資に対するイメージがポジティブなのはどんな人?』では、「投資という言葉に対するイメージ」がポジティブに変わってきたことを指摘しました。

少ない資金でも投資ができるという考え方の浸透

もうひとつ、注目できる傾向がアンケートからわかります。投資をしない理由の変化です。サラリーマン1万人アンケートでは、投資をしていない人に、「資金が減るのが嫌だから」、「投資するだけのまとまった資金がないから」、「何をすればいいのかわからない」、「いろいろ勉強しなければならないと思うから」といった選択肢を挙げて、投資をしていない理由を聞いています。

2018年の調査では、投資をしていなかった人は7,935人で、全体の66.1%に相当します。投資をしない理由として最も多くの人が挙げたのが、「資金が減るのが嫌だから」で32.6%となりました。この理由を挙げている人は2010年の調査から「全体のほぼ3分の1を占める」という傾向は変わっていません。

逆に注目できるのは「まとまった資金がないから」とする理由が2010年の48.4%から2018年には27.8%へと大きく低下していることです。グラフでは、赤の折れ線グラフで示していますが、調査期間中、一貫して低下していることがわかります。これは、「投資はまとまった資金がないからできない」と考えている人が、着実に減っているということを示しています。

「少額投資非課税制度(NISA)」が導入された2014年とその前年の金融各社の積極的なキャンペーンで、多くの方に「少額」で投資ができることが認識され、さらに2017年のiDeCoの拡充や2018年のつみたてNISAの導入などが、積立という投資方法を浸透させたのではないでしょうか。

相場の変動に左右されない投資家の拡大へ

投資から資産形成へ。変化のキーワードは「積立」?』でも指摘したのですが、積立投資の浸透は株価が変動しても投資を継続する人が増える可能性を高くします。これまでは、相場が高くなれば投資をする人が減り、相場が安くなれば投資をする人が増えるといった傾向が強かったのですが、これが今後さらに変わってくるのではないでしょうか。

投資をしない理由の変化(単位:%)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート(2010年、2013年、2015年、2016年、2018 年)と勤労者3万人アンケート(2014年)
注:各年の調査で投資をしていないと回答した人が対象。アンケート調査では8つの選択肢を提示したが、ここでは上位4つのみを表示。

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史