公的年金の金額には、物価や賃金の動きをみながら毎年度改定がおこなわれるルールがあります。2025年度分は、6月に支給される「4・5月分」の年金から、前年度より1.9%引き上げられることが決まっています。

ただし、ひとりひとりが実際に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況により個人差があります。将来の年金見込み額は、ねんきんネットやねんきん定期便を活用して把握しておきましょう。

今回は、令和のシニア世代がどの程度の年金を受け取れているか、厚生労働省の一次資料をもとに確認していきます。

年金は私たちの老後の生活とは切り離せない大切なものですが、その制度はやや複雑で分かりにくいと感じる人もいるでしょう。

記事後半では、「現役時代から知っておきたい」意外な盲点についても、豆知識として触れていきます。

1. 「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」

日本の公的年金制度は「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」から成り立つ2階建ての構造です。

厚生年金と国民年金の仕組み

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

まずは、ふたつの年金制度の違いをおさらいしましょう。

1.1 1階部分:国民年金

加入対象

  • 原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人(職業・収入・国籍は問わない)

年金保険料

  • 全員一律、ただし年度ごとに改定あり(※1)

老後の受給額

  • 保険料を全期間(480カ月)納付すると、65歳以降で満額の老齢老齢年金(※2)を受け取ることができる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる。

※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円

1.2 2階部分:厚生年金

加入対象者

  • 会社員や公務員、またパートで特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入

年金保険料

  • 収入に応じて(上限あり)決まる(※4)

老後の受給額

  • 加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

国民年金と厚生年金では、加入対象や年金保険料の決定方法、そして受給額の計算方法などが全く違います。そのため実際に受け取る年金額は人それぞれとなるのです。

なお公的年金額は年度ごとに見直しがおこなわれます。次では2025年度(4月分から)の年金額改定について触れておきましょう。

※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算されます。