1年の終わりを感じさせるイルミネーションが始まる
11月になりました。今年も残すところ2カ月です。今週末が過ぎたあたりからは、街並みは一気にクリスマス・年末モードに突入するでしょう。いきなり大きなクリスマスツリーが飾られる店も珍しくありません。
しかし、その年の終わりが近づいたことを実感させる代表的なものは、イルミネーションではないでしょうか。美しいイルミネーションが飾られた街並みを観て歩いて、過ぎ去ろうとする1年に思いを馳せる…今や、これは日本だけでなく、世界共通の恒例イベントと言えそうです。
国内イルミネーションの格付け「日本新三大夜景都市」
さて、そんなイルミネーションですが、日本では一応、正式なランキング付けが行われているのをご存知でしょうか。
これは、一般社団法人「夜景観光コンベンション・ビューロー」が2015年に、新たな日本ブランドとして国内外への発信・普及と夜景観光の活性化を目的として発表した「日本新三大夜景都市」がそのランキングになります。
選考方法は、全国約4,500人の“夜景鑑賞士”と称される人が投票を実施。投票された各夜景スポットを都市別に分類し、集計結果から上位三都市を日本新三大夜景と認定するものです。“夜景観賞士”は耳慣れない言葉ですが、少なくとも、夜景観光コンベンション・ビューローの独断で決められるものでないことは確かのようです。
2018年に第2回ランキングが発表!その結果は…
そして、今年2018年は3年に1回の再認定の年となり、改めて“投票”が行われた結果、第2回ランキング発表に至りました。先ずは、その結果を見てみましょう。なお、カッコ内は前回(2015年実施)の順位です。
- 第1位:長崎市(1位)
- 第2位:札幌市(2位)
- 第3位:北九州市(5位)
- 第4位:神戸市(3位)
- 第5位:東京都(8位)
- 第6位:函館市(4位)
- 第7位:大阪市(6位)
- 第8位:横浜市(7位)
- 第9位:京都市(9位)
- 第10位:静岡市(圏外)
大躍進の北九州市が神戸市や函館市を上回る
いかがでしょうか。今回の注目は、何と言っても北九州市の躍進でしょう。“1,000万ドルの夜景”と称される神戸市や、世界屈指の夜景と評される函館市を抜いて堂々の第3位となり、新たな日本新三大夜景都市として認定されました。前回も第5位と一定の高評価はあったようですが、神戸や函館を上回るとなれば、一度は観てみたくなりますね。
ただ、“北九州市の夜景”と聞いてもピンと来ない人が少なくないかもしれません。
しかし、北九州市はコツコツと夜景観光に注力してきました。特に、北九州工業地帯にある多くの工場にイルミネーションを付して、さらに、その工場の夜間作業に伴う照明も加わり、それを海から眺める“夜景クルージング”が大人気となっているのです。従来の夜景観光とは違った、ある意味で斬新なアイデアと言えましょう。
夜景観光に注力する都市が増加する背景
実は現在、北九州市に限らず、夜景観光に注力している自治体(大都市、地方都市等)は非常に多いようです。
この背景にあるのが、観光客、とりわけ、外国人観光客の“素通り”です。確かに、訪日外国人観光客は大幅増加が続いており、2018年は年間3,000万人を大きく突破する勢いです。
しかしながら、有名観光地やランドマークへは日帰りで行く外国人が圧倒的に多く、宿泊は有名飲食店や繁華街のある大都市に集中しているのが実情です。実際、地方の中堅都市のホテルが満室で予約が取れないということは稀と言っていいでしょう。その結果、大都市以外には想定していたほど経済効果が及んでいないと見られています。
やはり、泊まって飲み食いして支出金額を増やしてもらわないと、観光地は経済的に潤わないのかもしれません。つまり、外国人観光客をいかにして長く滞在させるかが、非常に重要な課題となっているのです。
夜景観光が外国人観光客を長く滞在させる?
この課題を解決する1つの大きな手段が夜景観光です。何しろ、夜景を観るためには基本的に宿泊する必要があります。また、外国人(日本人も?)が大好きなSNSに美しい夜景はピッタリ合致します。インスタ映えには最適と言っていいでしょう。さらに、一部の新興国では治安上の問題などから、夜景を観るという発想そのものがないのかもしれません。
美しい夜景を安全に観ることができるのは、日本の”クールさ”の1つとして定着しつつあると考えられます。
北九州市のブランド化は始まったばかり
しかし、夜景観光が根付くには時間を要します。今回の新ランキングで躍進した北九州市の外国人観光客データ(平成29年実績)を見ても、観光客数は増加しながらも、一人当たり宿泊数や消費額の増加は限定的に止まっており、いまだ改善の途上にあります。海外で北九州イルミネーションがブランド化するのは、今回の躍進を踏まえたこれからなのかもしれません。
今後は、各都市間でのイルミネーション競争も激化することが予想されます。今後の各都市の取り組みに注目しましょう。
葛西 裕一