金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」によると、二人以上世帯のうち60歳代の70歳代の約3割(※1)が、年金だけでは日常生活費程度もまかなうことさえ難しいと感じています。
さらに、年金だけではゆとりがない理由として最も多かったのは「物価上昇で支出が増えると見込んでいるから」というものでした。60歳代、70歳代ともに6割を超える人(※2)が、今後の物価変動を懸念していることも明らかになっています。
「人生100年時代」と呼ばれる長寿化が進む現代において「老後に向けたお金の備え」への関心が高まるのは自然なことでしょう。しかしながら物価上昇への不安も決して見過ごすことはできません。
今回は、年金生活を送るリタイア世帯の家計収支データを、夫婦世帯と単身世帯に分けて見ていきます。働き盛り世代のみなさんが、遠い将来の生活設計を立てる上でのヒントになればと思います。
※1 60歳代の32.6%、70歳代の30.6%
※2 60歳代63.3%、70歳代62.8%
1. 65歳以上のリタイア世帯「ふたりの老後・ひとりの老後」月の食費や光熱費はいくら?
2025年3月11日、総務省統計局は「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」を公表しました。
ここから、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支データをのぞいてみましょう。
1.1 《夫婦》65歳以上のリタイア世帯「ふたりの老後」月の食費や光熱費はいくら?
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 諸雑費:2万2125円
- 交際費:2万3888円
- 仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
- 3万4058円の赤字
この世帯の場合、支出の合計は28万6877円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万356円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が25万6521円です。
一方で、ひと月の収入は25万2818円。その約9割(22万5182円)を社会保障給付(主に公的年金)が占めますが、結果的には毎月3万4058円の赤字となりました。