3. 受給できる遺族年金はいくら?ケース別に解説

実際に受給できる遺族年金は、いくらなのでしょうか。配偶者や子どもがいる場合と、単身の場合で年間受給額を計算し、本来受け取れるはずだった厚生年金額と比較してみましょう。

なお、亡くなった人の厚生年金への加入月数は300月、平均標準報酬月額は35万円とし、以下の計算に基づき算出した報酬比例部分を活用します。

  • 35万円×0.005481×300月=57万5505円

また、亡くなった時点での基礎年金額は、以下の計算で算出した金額とします。

  • 83万1700円×300/480=51万9813円

3.1 配偶者や子どもがいる場合

配偶者や子どもがいる場合は、条件次第で支給される金額が増えます。遺族年金を受け取るのが妻であり、年齢が40〜65歳の場合の支給額を見てみましょう。

  • 遺族厚生年金:43万1629円
  • 中高齢寡婦加算:62万3800円
  • 合計:105万5429円

中高齢寡婦加算を受けられる年齢であれば、厚生年金の年間受給額よりも多くの金額を受け取れます。

ただし、配偶者(妻)の年齢が40歳未満の場合や、夫が遺族年金を受け取る場合の受給額は43万1629円で、亡くなった人が本来受け取るはずだった厚生年金額よりは低くなります。

配偶者に18歳未満の子どもが1人いる場合、支給されるお金は以下のとおりです。

  • 遺族基礎年金:83万1700円+23万9300円=107万1000円
  • 遺族厚生年金:43万1629円
  • 合計:150万2629円

子どもがいる場合は、基礎年金に子の加算額が上乗せされるため、受給できる金額はさらに増えます。子どもが18歳になった年度の末までは、上記の金額を受け取れます。

基礎年金は、遺族基礎年金のほうが現時点で受け取れる金額が多いようです。

なお、遺族基礎年金は亡くなった人に生計を維持されていた人に対して支給されるものです。そのため、もし配偶者が会社員やパートとして働いている場合は、支給対象が配偶者から子どもへ移ります。

3.2 独身の場合

独身の場合は中高齢寡婦加算を受け取れる人がいないため、支給合計額が減少します。

また、離婚して子どもと暮らしているなど、子どもがいる場合を除くと、遺族基礎年金も支給されません。遺族年金の支給額は、決して多くはないといえるでしょう。

もし単身で子どもが1人いる場合、遺族に支給されるお金は以下のとおりです。

  • 遺族基礎年金:83万1700円
  • 遺族厚生年金:43万1629円
  • 合計:126万3329円

この場合、子どもに遺族年金が支給されます。子どもが2人以上いる場合は、2人目の子ども以降に対して、加算が上乗せされます。

もし配偶者や子どもがいない場合、遺族基礎年金は支給されません。遺族厚生年金は父母、孫、祖父母の順番で優先的に支給されます。

支給される金額は43万1629円であり、亡くなった人が本来受け取れるはずだった厚生年金額よりも低い金額です。

4. まとめ

遺族年金は亡くなった人の遺族の生活を保障する性質を持つ年金です。遺族の年齢や性別、身分によって受給額が変わるため、老齢年金と比べると平等性に欠けます。

年金の受給額については、老齢年金のように「納めた保険料に対していくらの給付を受け取れるのか」を考えがちです。

しかし、遺族年金は誰もが同じ条件で受け取れるわけではありません。あくまで「保険の一種」として捉えておくのがよいのかもしれません。

参考資料

石上 ユウキ