1.1 マクロ経済スライドを考慮すると実質目減り

1.9%の引き上げと聞くと、「ちゃんと物価に応じて年金が増えるなら安心」と感じるかもしれません。

しかし年金額の改定では、「マクロ経済スライド」の仕組みを理解しておく必要があります。

年金額は、前述の通り物価上昇率や賃金の変動率に応じて見直しが行われますが、その際は現役世代の負担が大きくなりすぎないように「マクロ経済スライド」と呼ばれる調整が入ります。

今年度の改定で見てみると、参考指標とされる名目手取り賃金変動率は2.3%の上昇となっています。

通常であれば年金額も2.3%の引き上げが行われるはずですが、マクロ経済スライドによる調整が▲0.4%入り、その結果1.9%の引き上げとなっています。

物価変動率が2.7%であることも考慮すると、1.9%の引き上げが行われていても物価上昇には追いついていない、つまり実質目減りしている状況だといえます。

2. 夫婦の年金はいくらになる?モデルケース別の支給額

2025年度の金額改定を踏まえたうえで、夫婦2人で年金を受け取るモデルケースについて確認してみましょう。

厚生労働省が提示している厚生年金の夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は月額22万8372円です。これは、男性が平均的な収入で 40 年間就業した場合をもとに算出されたケースとなっています。

ただし、夫婦共働きが広がる近年では、夫婦2人が厚生年金を受け取る場合など受給パターンも多様化しています。ここでは、さまざまなライフコースに応じた年金額を紹介します。

多様なライフコースに応じた年金額

多様なライフコースに応じた年金額

出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」

 

  • 厚生年金期間中心(20年以上)の男性…17万3457円
  • 国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の男性…6万2344円
  • 厚生年金期間中心(20年以上)の女性…13万2117円
  • 国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の女性…6万636円
  • 国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)の女性…7万6810円