インドの銀行システムが大転換期に突入。その変化とは?

インド経済が直面する課題(1)

加速が予測されるインドの成長率

国際通貨基金(IMF)が10月9日に発表した世界経済見通し(World Economic Outlook, October 2018)では、インドの実質GDP成長率は2017年実績で+6.7%(前年比、以下同様)から、18年は+7.3%、19年には+7.4%と成長ペースが加速すると予測されています。

2014年に誕生したモディ政権により進められたインフラ整備やデジタル経済化、GST課税の全国統一化と高額紙幣の廃止は、インド経済がさらに成長軌道に乗るためには不可欠の政策であり、長期的には着実に成果を上げていくと予想できます。

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特に、インドの消費は着実に伸びています。特にGST導入により、それまで州ごとにバラバラだった煩雑な申告・納税手続きが大幅に簡素化されただけではなく、4回に及ぶ税率改訂で段階的に税率が引き下げられてきました。インフレ率が安定して推移してきたことも追い風となり、税率の低下した品目を中心に消費も拡大してきました。

銀行システム安定化への対策を強化

インドの課題を挙げるとすれば、脆弱な銀行システムをいかに安定化するかということと、短期的には農業で表面化した問題が社会的にノイズを起こし、財政を脅かしかねないことでしょう。また、来年の選挙を控えた政局の流動化も一部で懸念され始めました。

インドの銀行が抱える不良債権の大きさと破綻企業の処理は、かねてより課題として指摘されてきました。不良債権負債は総額2100億ドル(約23兆5200億円)を超えると推定され、インドの民間銀行の不良債権比率はイタリアに次ぎ世界で2番目に高いと言われています。

政府も、不良債権処理の加速については踏み込んできています。2016年5月には、破綻企業の迅速な処理を目指して債務超過・破綻法(IBC)を成立させ、同年12月には施行させました。さらに17年5月には、不良債権処理に際してインド中銀RBIの権限を強化するために銀行法を改正しました。すると、翌月17年6月にはRBIが当時の不良債権全体の25%を占めると言われた大口債務企業12社の破たん処理を迫ったのです。

また、17年10月には国営銀行のバランスシート改善のため、総額2.11兆ルピー(約3.2兆円)の公的資金を注入することを決めました。2018年1月4日には、国営銀行に対する資本注入の原資となる総額8000億ルピー(約1.2兆円)の国債発行を決定して、不良債権や破たん企業を迅速に処理していく仕組みを整えました。

そして、巨額の負債を抱えた銀行システムの強化を図るため、国営銀行3行(ビジャヤ銀行、デナ銀行、バロダ銀行)の統合を検討していると言われています。統合が実現すればインド第3位の銀行が誕生することとなります。

また、一部ノンバンクで流動性不足が表面化したのをきっかけに、「影の銀行」全体で信用リスクへの懸念が広がっています。ノンバンクの多くは自己資本が不十分な小規模事業者であることから、免許の取り消しや、自己資本が十分な大手事業者が零細事業者を飲み込み、業界での淘汰が進むと予想されます。

読者の皆さんには、日本の金融危機当時のことを記憶していらっしゃる方も多いと思いますが、ちょうどその頃のように、インドの銀行システムは大きな転換期を迎えているのです。

出典:IMF, World Economic Outlook, October 2018(Bloomberg記事 2018年9月18日)

ニュースレター

長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。