2018年10月11日に行われた、株式会社ファーストリテイリング2018年8月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料①/IR資料②
スピーカー:株式会社ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井正 氏
株式会社ファーストリテイリング グループ執行役員 神保拓也 氏
ファーストリテイリング 今後の展望
柳井正氏(以下、柳井):柳井でございます。決算の内容に関しましては、岡﨑から詳細に説明しましたので、私からはファーストリテイリングの今後の展望……どのように情報製造小売業になるのかについて、また、会社変革についてお話ししたいと思います。
「お客様にとって、もっとも良いビジネスとは何か」を、徹底的に追求していきたいと思っています。サプライチェーン、コミュニケーション、組織のあり方、自らの働き方、他の企業や個人とのパートナーシップのあり方、すべてを革(か)えていこうと思います。世界中の人々のために、世界中の人々と一緒に、新しい商品をつくっていきたい。
そのために……次をお願いします。ここに(2018年)8月に作りました、スウェーデンのストックホルムに、ユニクロの店舗があります。これは「LifeWear」のコンセプトに従いまして、ストックホルムの人々がより豊かなライフスタイルを送れるように、高品質でバラエティに富んだ商品を提供しています。
この店舗は、ストックホルムの中心地の王の庭と言われる公園に面して、もっとも歴史がある百貨店に隣接するという、ストックホルムで最高の立地にあります。しかも、ストックホルムの都市計画を作った世界的な建築家であるスヴェン・マルケリウス氏が、このビルの建築設計をしました。非常に多くのお客様にご来店いただきまして、大盛況でした。
ぜひ、オープンの日の様子を動画でご覧いただきたいと思いますので、ちょっと時間を(いただきまして)この動画を見てください。よろしくお願いします。
(動画が流れる)
柳井:今ご覧になったように、お客様に対する服の感度の高さ……列を作られてるんですけど、オープンをお待ちになる余裕のある態度。お互いに譲りあい、フレンドリーに会話しつつお買い物を楽しまれる、余裕ある態度。世界トップクラスの先進国の成熟した文化に対して、感銘を受けました。
また、現地の従業員ですが、少人数でキビキビ動き、効率の高い働き方をしています。集中力を持って仕事をして、毎日の生活を楽しむ。これが本来の、少ない人口で高い付加価値を生み出すワークスタイルなのだと、改めて目を開かれる思いがしました。
我々のコンセプトの1つである、「LifeWear」です。
あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着である。
世界中の人々が気楽に買える、ライフスタイルを作る道具である。そのような服を、私たちは「LifeWear」と呼んでいます。
「LifeWear」の中心にある理念でありますが、「MADE FOR ALL」……あらゆる人のための服という考え方。
ユニクロの服とは、服装における完成された部品。
ユニクロの服とは、人それぞれにとってのライフスタイルをつくるための道具。
ユニクロの服とは、つくり手ではなく着る人の価値観からつくられた服。
ユニクロの服とは、服そのものに進化をもたらす未来の服。
ユニクロの服とは、美意識のある超・合理性でできた服。
我々は、こういった理念を持つ服を通して、あらゆる人の生活をより良くすることを使命としています。
グローバルブランドとしてのポジションを確立するために、ユニクロはこれまで、世界の各地の主要都市にグローバル旗艦店をオープンしてまいりました。
ニューヨーク・パリ・ロンドン・上海・香港・シンガポール・マニラ・台北・ソウル。そして日本国内では、東京と大阪。
こうした一連のグローバル戦略の中で、服の文化の先進地域であるヨーロッパは、今後のグループ戦略の最重要マーケットの1つであり、ユニクロブランドの評価は非常に高いし、昨年(2017年)のバルセロナに続き、今年(2018年)は(スウェーデンの)ストックホルム、オランダのアムステルダム、来年(2019年)春にはデンマークのコペンハーゲンに出店する予定であります。
次に、グローバルブランドのポジションを構築する上で、最需要なのがヨーロッパだとすれば、世界的な経済の成長センターは、中国・インドを中心とするアジアにあります。
ユニクロは来年(2019年)秋に、南アジア地域の進出の第一歩として、インドのデリーに同国1号店をオープンします。インド進出において、過去の他の国の出店のようなチェーン展開だけでは、絶対うまくいかないと思っています。
インドのように、独自の文化を持つ巨大な国で本気で商売をし、成長しようと思うなら、基礎の基礎から仕組みをすべて、自分たちでつくらないといけないと思っています。
インドの優秀な企業や個人と一緒に強いパートナーシップを組んで、自分たちも(彼らのことを)一生懸命勉強して、彼らにも我々のことを知ってもらう。お互いに成長していくという、そういった決意がなければ、決して成長できないと思っています。
中国と同じく、今後はインド抜きでは、世界一にはなれないと考えています。
やるのであれば、ゼロからすべて新しくつくり革(か)える。過去の成功や失敗の経験を総動員して、フルスイングでホームランを狙う。それくらいしないと、インドに出ていく意味がないと思います。
改めて申し上げるまでもないんですけれども、世界は今、あらゆる情報が瞬時にグローバルに飛び交い、すべての経済活動は、国や企業の壁を超えた視点で考えないといけないという時代になっていますし、「超情報化時代」……そういう時代にもっとも重要なことは、世界中の優れた企業や個人とのパートナーシップにあると思います。
東レとの、十数年に及ぶ戦略的なパートナーシップをはじめ、グローバルブランドアンバサダーであるアダム・スコット(選手)、最近契約したロジャー・フェデラー選手といった卓越した人材とチームを組み、一緒に服をつくり、世界中の人々に我々のサービスを提供する。今後世界で勝つには、パートナーシップが大事な要素だと思います。
先日、パリで島精機製作所の島(正博)社長とご一緒し、「The Art and Science of LifeWear:Creating a New Standard in Knitwear」と命名したイベントを行いました。
パリ・コレクションの期間中であり、会場のジュ・ド・ポーム国立美術館に多くの方にご来場いただきました。
「世界中の情報を整理し、誰もが使えるようにする」という理念を持つGoogle、自動倉庫世界シェアNo.1のダイフク。これらのパートナー企業との協業を発表し、「有明プロジェクト」をさらに加速できる体制が、作り上がりつつあります。もう一度お伝えしたいのが、我々が取り組んでいる「有明プロジェクト」は、単に既存の情報システムをバージョンアップしようとか、Eコマースの比率を高めようとか、そういった発想ではないということであります。
従来の概念をすべて捨てて、世界中の情報を集めて、世界中の人々と一緒に服をつくる。まったく新しい、情報製造小売業になるということであります。
目指しているのは、全員が経営者になること。そのために、幅広い経験を積むことが必要であります。
世界中の社員がさまざまな地域に出ていき、さまざまな部署で仕事をしていく。日本からたくさんの人材が海外に出ていき、海外からも多くの人が日本に来る。さまざまな経験、異なる専門領域を持った人が、多様性を活かしながら、一緒に仕事をする。
性別も国籍も年齢も社歴も関係なく、同じ理念を共有する人がシームレスにつながり、世界のどこにでも行く。そして、たくさんの経験を積んだ人材が、各国や地域で成長し、経営者となり、真の経営トップとして育っていく。そういう組織にしていこうと思います。
グローバルヘッドクォーターと世界各地域の本部・店舗がダイレクトに(つながり)、経営者と経営者同士、経営者と個々の社員、これが直にコミュニケーションするフラットな組織を作りたいし、誰もがダイレクトに話をして、その場で答えを出していくし、即判断し、即実行する。
世界のどこでも、誰とでも、まるで自分の隣にいるかのように仕事が可能になる。そういう企業になりたいと思っています。
そして、企画・生産・物流・販売に至る全社のサプライチェーンも、根本から革(か)えようと思っています。
世界最強のパートナーたちと一緒にパートナーシップを組み、最新の情報と情報技術を活用し、まったく新しい産業を創り出そうと思っています。
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」。
これは、我々FRのステートメントであり、毎回お伝えしていることですが、すべての出発点がここにあると思います。
ビジネスはお客様、そして社会をより豊かにするためにある。より良い世界を本当に実現するために、努力を継続するということでありますので、ぜひみなさまのご支援をお願いいたしたいと思います。以上であります。
サプライチェーン改革について
神保拓也氏:ご紹介にあずかりました、神保です。私は現在、全社改革プロジェクトであります「有明プロジェクト」の全体統括および、グローバルサプライチェーンマネジメントを担当しています。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、一昨日(2018年10月9日)株式会社ダイフク様と戦略的グローバルパートナーシップを締結しまして、共同記者発表の場では物流改革、そして自動倉庫の2点にフォーカスをして、私から説明をさせていただきました。
本日は、より広範囲にわたるサプライチェーンの変革について、改めて私からご説明を申し上げたいと思います。
今日は、3点ご紹介したいと思います。
1つ目が、目指すべきサプライチェーンの方向性。(2つ目が)これまでのサプライチェーン。そして、今後のサプライチェーン。これらの3点について、お話しできればと思います。
①めざすべきサプライチェーンの方向性①
それではさっそくですが、目指すべきサプライチェーンの方向性について、お話を差し上げたいと思います。
結論から申し上げます。無駄なものをつくらない。無駄なものを運ばない。無駄なものを売らない。
これは、今から約1年前の2017年10月12日、この決算発表の場で、社長の柳井から、ファーストリテイリングの経営方針としてみなさまにお伝えさせていただいた言葉です。
これは、まったく新しい産業、情報製造小売業を作るための「有明プロジェクト」の基本概念になります。この取り組みを通じて、現在我々は企画・計画、そして生産・物流・販売に至るまでのすべてのプロセスで、主体的に変革を推し進めています。
それを実現する上で、サプライチェーン改革は、まさに「有明プロジェクト」の1丁目1番地だと考えていただいてけっこうでございます。本日は、この概念をどのように実現しようとしているのかについて、改めて私から説明をしたいと思います。
①めざすべきサプライチェーンの方向性②
まず、ファーストリテイリングのサプライチェーンの大前提を、3点ご共有申し上げたいと思います。
我々は年間、グループで13億着もの服をつくらせていただいています。世界の年間の服の製造数が約800億枚と言われていますが、仮にこの数値が正しいとすると、我々1グループだけで、その1.6パーセントを製造している計算になりまして、おそらくファーストリテイリンググループは、世界でももっとも多くの服を製造している企業の1つではないかと思っています。
そして、先ほど柳井の話の中にもありましたが、ただ服を量産するビジネスをやっているわけではなく、我々は「LifeWear」という服の哲学を持って製造しています。つまり、単純に質は度外視して、量だけにこだわって量産をしているというビジネスではなく、このような哲学・理念のある服を、大量に13億着つくっている企業でございます。
さらに申し上げますと、つくった商品は必ず売り切り、廃棄は絶対にしません。また、お客様の不要になった商品、それ自体も我々自身で回収をしまして、全商品リサイクル活動として、難民支援であったり、素材のリサイクルといったものにつなげています。
このような大前提をベースにサプライチェーンを構築しますと、どうしても次のスライドで説明するような問題に当たってしまいます。
②これまでのサプライチェーン①
それは、こちらになります。大量の13億着もの服をつくるためには、どうしても企画・計画から生産・物流・販売に至るまで、1年以上の時間をかけてしまう商品がございます。
理由は大きく2点です。1点目。我々の「LifeWear」は、お客様の生活ニーズから発想し、考え抜かれた独自の服でございます。決して流行だけを追いかけたり、他社の真似事のような服ではないため、現在の仕組みでは商品企画・計画に時間がかかっています。
また、2点目。高機能・高品質の服をつくるために、素材から非常にこだわっていまして、1点1点の商品を丁寧に製造しています。それを大量に生産するためには、どうしても物理的な生産の時間がかかってしまっているという、構造的な問題がございます。
まとめますと、これまでのサプライチェーンは、すべてがそういうわけではないものの、やはり無駄なものをつくり、運び、売るというサプライチェーンになっていたことは事実だと思っています。もちろん、すでに改革には着手しており、先ほど岡﨑からも説明がありましたが、成果も出始めています。
②これまでのサプライチェーン②
このスライドでは、どのような課題に我々が今チャレンジしているのか、それを「作る」「運ぶ」「売る」という順番に沿って、わかりやすく説明できればと思っています。
まず、1点目の「企画・計画」ですが、一部の情報しか集められておらず、商品企画・販売数量に活かしきれていないという課題がございます。ポイントは2点です。情報収集を人に頼っているため、どうしても世界中の情報すべてにリーチすることができていません。また2点目は、人が集めている一部の情報しか商品企画・販売量に反映できていないため、企画ないしは生産数量といった予測が、どうしても外れてしまうという課題を抱えています。
そして、「生産」です。大量生産のため生産リードタイムが長くなり、販売動向に完全連動した生産が、まだ実現できていない。道半ばだと思っています。だいぶ連動できる生産体制は進んできているものの、ポイントが2点ございまして、高品質・高機能な「LifeWear」を大量に製造するため、膨大な素材の準備と生産プロセスを非常に丁寧に行っているため、リードタイムが長くなっています。よって、前づくり・先づくりをしなければ、実売期でのタイミングに商品が間に合わないという問題が、構造的にございます。
生産量が増えれば増えるほど、糸・生機・裁断・縫製といった各工程一つひとつのプロセスがどうしても長くなりますので、結果的に1年以上前からつくらないと実売期に間に合わないという、構造的な問題を抱えています。
次に、「物流」です。販売に不必要な商品を保管することで、販売国の倉庫キャパが圧迫されて不足しています。また、そのオペレーションは、どうしても人海戦術で人に頼らざるを得ない部分がございますので、集人難、そしてその人件費も高騰する。このような問題が起こっています。
その結果、すべての問題がお店のところ(「販売」)に出てしまうんですが。売れない商品を過剰に持ってしまうということで、そういった商品は値引きでなんとか売り切るということであったり、逆に売れ筋の商品が店頭で欠品している。このような矛盾を、サプライチェーン上抱えています。
また、サプライチェーン全体で、領域横断の課題も大きく2点ございまして、すべてのサプライチェーンに関わる重要な情報・数値が可視化しきれておらず、各領域が連動したSKU管理がまだ不十分だと思っています。そして2点目に、世界中の生産工場・倉庫・店舗・本部が、ダイレクトかつフラットにつながりきれていない。このような課題も、まだ内在しています。
②これまでのサプライチェーン③
そうなると、お客様からは、どうしてもこのような声が寄せられます。
まず1点目に、トレンドに関するお客様の声です。「シャツの着心地がよくて型崩れしない」という商品に対してのお褒めの言葉はいただいているんですが、実際、細かい部分で「シルエットがもう少し細めだったらいいのにな……」であったり、「ニットは毎年買っているけれども、トレンドカラーと少しだけ違うんだよね……」といった声が寄せられています。
また、販売数量に関しても、お客様の声が寄せられています。「ユニクロで欲しいと思う商品は、いつも欲しいと思うタイミングで品切れている……」「もっとたくさんつくってくれればいいのに……」という声も寄せられています。
また、「話題の商品は発売初日にすぐに品切れになってしまって、せっかく来店したのに買えずに残念だ」。このような声も寄せられています。
③これからのサプライチェーン
それに対して、これから我々は「グローバルで事業を展開するさまざまな世界のトッププレイヤーとパートナーシップを締結することにより、無駄なものをつくらない、運ばない、売らない」という悲願を、必ず達成したいと思っています。
先ほどのスライドと同様、「作る」「運ぶ」「売る」という、今取り組んでいる数多くの変革プロジェクトの中から、この順にいくつかの事例を用いて説明したいと思います。
まず1点目。(「企画・計画」の)事例として、世界中の膨大な、そして良質な情報をリアルタイムで集め、商品企画・販売量に反映したいと思っています。取り組みは、事例として二つ挙げさせていただきます。先日提携を発表しました、Google社。この検索エンジン・AIを活用しまして、世の中の膨大な、そして有益な情報にリーチしようという仕組みの構築を開始しています。
そして、2点目。世界中の情報と、当社に蓄積されている過去の販売データをもとに、アクセンチュア社のアルゴリズムを用いて、精度の高い商品企画と販売数量を決定する。そういった仕組み(の構築)に今、もう着手をしています。
「生産」領域です。素材の備蓄、そして短リードタイムでの量産による、お客様の要望に適した生産体制の構築を行いたいと思っています。
ここでも2点、事例として挙げさせていただいています。東レ様との長年にわたるパートナーシップによる取り組み、そして、一つひとつの生産工場様との取り組みにより、素材をあらかじめ備蓄し、生産工程を大幅に短縮したいと考えています。
また、こちらも2点目。先日提携を発表させていただきましたが、島精機製作所様とのパートナーシップにより、お客様の要望に適した商品づくり。そして、リードタイムの短縮も実現したいと思っています。
3点目に、「物流」です。全世界に自動倉庫を展開する。これを軸に、そして、販売に必要な商品のみを販売国には保管する。このような変革を、今実施しています。
ここも(事例として)2点。まず、販売の実需期が到来する前の商品に関しては、これまで販売国に保管するという仕組みでサプライチェーンをやっていましたが、新たに生産国側に倉庫を設けまして、ダムの機能を生産国側で果たし、そこから実需に合わせたタイミングで国内に持ってくる。このようなサプライチェーンの改革に着手して、大きな成果をあげています。
そして、2点目。これは先日発表した内容ですが、庫内の人海戦術によるオペレーションを、抜本的に変えたいと思っていまして。これは、全世界の倉庫をすべて自動化するという戦略を、今進めています。
その結果、「販売」のところで在庫過剰の削減と品切れの撲滅を同時に達成し、値引きでの商売から脱却し、粗利益率の向上に邁進したいと考えています。
サプライチェーン横断領域に関しても、RFIDをすべてのサプライチェーン領域に導入しまして、その情報・数値を見える化し、SKU管理を徹底し、個店経営を実現したいと思っています。これは、生産段階からRFIDタグを全商品に付与しまして、全領域でのSKU管理を徹底します。
これは「SKU管理」と言うと、どうしても店舗でのSKU管理が注目されがちなんですが、SKU管理とは生産工程からやっていかないと、最後の店舗領域のところでがんばるだけでは、やはり1点1点の商品管理はできませんので。商品が誕生する工場のタイミングから、すべての商品にRFIDタグを備え付け、1点1点の商品を全部情報化できて、変革につなげられる体制が整いました。
あとは、コミュニケーション・働き方の変革においても、こちらも先日、Google社との提携を発表させていただきましたが、彼らの「G Suite」のような仕組みを活用しまして、世界中の生産工場・倉庫・店舗、そしてヘッドクォーター本部を、ダイレクトかつシームレスにつなぐかたちで、即断・即決・即実行ができる経営体制を構築していきたいと思っています。
今日、みなさまにお伝えさせていただきました内容は、あくまで今やっている取り組みの一部でございます。また、ここに掲載されているような取引先様だけではなく、今後もますますパートナーシップを拡大して、世界中のトッププレイヤーと一緒に変革を進めていきたいと考えています。
③これからのサプライチェーン ~RFIDの具体事例~
本日は最後に、具体的な事例を1つ挙げて、説明を終わりたいと思うんですが。注目度の高い、RFIDの具体事例をお話しさせていただきます。
現状、生産工場、そして倉庫・物流、販売店舗という状況で、このような課題がございます。まず1点目。「どの商品がどのくらい、つくり終わっているのか?」。これが、完全には把握できていません。
2点目。そのつくられた商品が「いつ、いくつの商品が工場から倉庫に届くのか?」。これも、完全に把握しきれていません。
3点目。「どこの倉庫に、どれだけの商品があるのか?」。ここも、現状の体制では把握しきれなかったという課題がございます。
4点目。その倉庫を出た商品が「いつ、いくつの商品が、どの倉庫から店舗に届くのか?」。これも、完全に把握できていませんでした。
そして店舗の中においても、「店舗の売場・バックヤードにどれだけの商品があるのか?」。これも、把握しづらい状況が続いていました。
RFIDを生産段階から全商品に付けることで、どこにどれだけの商品があるのかを、瞬時に正しく把握することができるようになります。在庫情報を、各領域を越えて共有することができるようになるため、サプライチェーン全領域で、完全連動でのSKU管理を実現できる体制が整ったと考えています。
また、商品の確認作業も、今まではすべての在庫数を把握するために、工場・倉庫・店舗ですべて人海戦術で行っていたため、時間がかかり、また、どうしても人的エラーが発生するという課題がございました。今回、RFIDを導入したことにより、在庫を瞬時にすべてのプロセスで確認できるようになっているため、また人に頼らず、RFIDタグを瞬時に読み取るという行為から、エラーも大幅に削減できているという変革が起こっています。
この結果から、売上の向上という観点で言うと、店頭でどの商品が今欠品しているのか、ないしは欠品しそうなのかということを、店舗に導入した独自のアプリを活用して、アラートが掲示されるような店舗運営に変わってきていまして。この結果、販売機会のロスへの撲滅。それが、売上に直接つながると思っています。
そして、お客様がご不満に感じていることで、イメージが湧きやすいところで言うと、レジ待ち。これも、RFIDタグを読み取って精算をするため、今までは1点1点バーコードを読み取って精算をやっていたプロセスも、大幅に改善されます。
そして、コスト削減という観点でも、店舗の棚卸、倉庫の棚卸、膨大な商品の棚卸作業。これを、今までは人の手で1点1点やっていましたが、瞬時に棚卸作業ができるようになる。また、生産の出庫時の検品作業、倉庫の入庫時・出庫時の検品作業、倉庫から店舗に届くときの、店舗の入庫時の検品作業。これらのすべてに人が関わって、1点1点確認をしなければいけなかったというプロセスが、今回のRFIDタグの導入により、大幅に改善されるようになります。
このような取り組みを、今後も世界トップクラスの企業様のパートナーシップを通じて、そして当グループ全従業員13万人の英知を結集して、お客様が求めるものをつくり、お客様が求めるものを運び、お客様が求めるものを売っていくという、このサプライチェーンを必ず実現したいと思っています。
私からの説明は、以上です。どうもありがとうございました。