職場におけるストレスの多くは、人間関係によって生み出されるといっても過言ではありません。中でも上司との人間関係は職場の居心地を大きく左右することがありますよね。時には、何気ない一言でやる気をなくしたり、怒ったり、人望のなさに絶望したり。

若手社員は直属の上司に、中間管理職は会社の上層部に、役員はトップに……というふうに、ほとんどの人が上司と折り合いをつけながら働いています。

それでは、どんな言葉が人のやる気を失わせるのでしょうか。

言われるとドっと疲れが押し寄せる「上司の言葉」は?

養命酒製造が今年6月、東京都で働く20歳~59歳のビジネスパーソン1,000人に対して行った調査によれば、上司のセリフによって疲れが倍増した経験を持つ男女はなんと41%にのぼりました。

実際に言われて疲れが倍増した言葉は、以下の通り(複数回答可)。

1位・・・「常識でしょ」/「当たり前でしょ」(24.4%)
2位・・・「前にも言ったよね?」(23.9%)
3位・・・「まだ終わらないの?」/「仕事遅いね」(21.0%)
4位・・・「そんなこともできないの?」(20.7%)
5位・・・「やる気あるの?」(17.3%)
6位・・・「自分で考えてやれ」&「勝手にやるな」(15.9%)
7位・・・「仕事だから」/「プロなんだから我慢してやって」(15.4%)
8位・・・「暇そうだね」(14.9%)
9位・・・「忙しいから後にして」&「なんで早く言わないの?」(13.4%)
10位・・・「前例がないから」/「慣習だから」(10.7%)

このような結果になりましたが、いかがでしょうか? 読んでいるだけでも疲れが押し寄せてきそうですよね。

上司の言い方も受け手の印象を大きく左右するのでしょうが、部下に対して常識や慣習を振りかざして相手を突き放す態度はとても嫌がられる模様。今回1位の「常識でしょ」は、何気ない一言ですが、遠回しに「常識を知らない」「仕事ができない」と自分を否定されたような気持ちになる言葉でもあるようです。

また、「自分で考えて」といったのに、後になって「勝手にやるな」と怒りだすなど、矛盾した言動も部下を疲弊させる要因となっています。

部下のやる気がアップする言葉は?

一方で、養命酒製造は、上司に言われたら疲れが半減すると思うセリフも調査しています。1位~5位までをご紹介します。

1位・・・「君がいると安心だ! いつも頼りにしているよ」(21.3%)
2位・・・「すごいね、よくやった! 期待以上の出来だ」(20.1%)
3位・・・「君の心配りや優しさにはいつも感謝してる」(17.3%)
4位・・・「○○さんじゃないとこの仕事はできなかった」(15.9%)
5位・・・「ありがとう! 君の頑張りのおかげで成功した」(14.4%)

他にも「頑張りすぎるな」「リフレッシュ休暇を取って」などの言葉が並んでいました。

仕事の疲れは仕事のモチベーションに直結します。がんばったらきちんと認められ、疲れたら休むことができる土壌によって、部下のやる気を育むことができるのかもしれません。

尖った言葉より優しい言葉の方が部下の心に届く

今回の調査結果は、管理職の方にとっては部下や後輩との付き合い方の難しさが表れた結果となりました。「そんなに褒めてばかりいたら、甘やかしてしまうのでは」と心配している方も多いかもしれません。

しかし、自己啓発本の金字塔とも言われるD. カーネギー氏の著書『人を動かす』(初版は1937年)には、今回の調査結果とリンクした記述がありました。

人を変える9原則

  1. まずほめる
  2. 遠回しに注意を与える
  3. 自分のあやまちを話す
  4. 命令をしない
  5. 顔をつぶさない
  6. わずかなことでもほめる
  7. 期待をかける
  8. 激励する
  9. 喜んで協力させる

(『人を動かす 目次より』)

職場の人間関係は、古くて新しい問題

相手にわかってもらおうと、「そんなこともできないの?」と尖った言葉で批判するより、「○○はもう少し注意が必要だけど、○○は良かったよ」といったフォローつきの優しい言い方のほうが相手の心に届きそうですね。

働き方に注目が集まる中、管理職の重責やブラックになりやすい勤務実態にも少しずつ注目が集まり始めています。とはいえ、上に立つ人は良くも悪くも部下の生活に大きな影響を与える存在です。管理する立場の人が意識的に部下への愛情と感謝をベースとした明るい言葉を使うことで、周囲の雰囲気が良い方向に変わっていくかもしれませんね。

【参考】
東京で働くビジネスパーソンの疲れの実態に関する調査 2018(養命酒酒造)
『人を動かす 新装版』1999年(D.カーネギー著、創元社)

北川 和子