4. ねんきん定期便の見落としがちな注意点
ねんきん定期便は、自分の年金記録を確認できる大切な書類ですが、記載されている情報の中には見落としやすいポイントがあります。特に注意すべき項目として、「保険料納付状況」「標準報酬月額」「受給見込み額の計算」について詳しく解説します。
4.1 保険料納付状況の確認
未納や未加入期間があると将来の年金額に影響します。転職や学生時代の記録を含め、未納・未加入期間がないかを確認しましょう。また、免除や猶予が適用されているかも重要です。未納期間がある場合、追納制度を利用すれば過去10年分まで納付できます。
4.2 標準報酬月額のチェック
標準報酬月額は厚生年金の額を決める基準ですが、誤りがあると本来の年金額より少なくなる可能性があります。ボーナスが標準賞与額に反映されていない場合、会社が年金事務所への届出を忘れている可能性もあります。特に転職や退職時には、厚生年金の加入記録が正しく引き継がれているか確認しましょう。
給与明細と標準報酬月額を照らし合わせ、記録に誤りがあれば、過去の勤務先の総務部に問い合わせます。解決しない場合は年金事務所に記録の訂正を申請できます。その際、源泉徴収票や給与明細を提出するとスムーズに対応してもらえます。
4.3 受給見込み額の計算ミス(繰上げ・繰下げ受給の影響)
ねんきん定期便に記載されている「これまでの加入実績に応じた年金額」は65歳で受給を開始する前提で計算されています。しかし、繰上げ受給(60歳~)や繰下げ受給(66歳~75歳)を選択すると、実際の受給額が大きく変わります。
- 繰上げ受給(60歳~) … 1カ月ごとに0.4%減額(最大24%減)
- 繰下げ受給(66歳~75歳) … 1カ月ごとに0.7%増額(最大84%増)
長生きするほど繰下げのメリットが大きくなりますが、健康状態によっては早めに受給したほうが安心です。どちらが自分に合った受給方法か、シミュレーションしてから選択するのがよいでしょう。
年金に記録ミスや見落としがあると、誤った老後資金計画を立ててしまうリスクがあります。誤りや疑問があれば、早めに年金事務所や勤務先に確認しましょう。
5. まとめにかえて
本記事では「ねんきん定期便」のチェックすべき11項目を紹介しました。
これを機に公的年金に関する興味が出てきたという人もいるかもしれませんね。年金制度は健全なバランスを維持できるよう定期的に見直しが行われています。
ねんきん定期便を毎年チェックすると同時に、現行の年金制度がどのようになっているかも確認しておくと良いでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認」
- 日本年金機構「「ねんきん定期便」とは何ですか。」
- 日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
- 日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
和田 直子