4. 年金額は1.9%増も実質目減りに…シニアの3割が「年金だけでは日常生活費もまかなえない」

公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。

2025年1月、厚生労働省は2025年度(令和7年度)の年金額が前年度より1.9%引き上げられることを公表しました。3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。

なお、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、60歳代・70歳代の二人以上世帯の60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と答えています。

老齢年金世代が「年金にゆとりがない」と感じる理由

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

また、年金にゆとりがないと感じる理由として、下記のような理由が上位に挙がりました。

  • 物価上昇で支出が増えると見込んでいるから:60歳代63.3%・70歳代62.8%
  • 医療費負担の増加:60歳代28.3%:70歳代34.8%
  • 介護費負担の増加:60歳代18.1%・70歳代26.4%

また、介護保険料や後期高齢者医療制度の保険料なども引き上げ傾向が続いています。年金受給者の多くは、こうした社会保険料や税金を老齢年金からの天引きで納めています。いずれも生涯にわたり納付が必要となるため、シニア世代の負担感が増すことも懸念されるでしょう。

5. まとめにかえて

本記事では、現シニア世代の老齢年金(国民年金・厚生年金)の受給額を確認しました。

老後、終身で受け取れる大切な収入源となる公的年金。しかし、平均月額は国民年金で5万円台、厚生年金で14万円台です。個人差はありますが、年金収入だけで全ての生活費をカバーするのは容易ではないでしょう。

収入だけで家計をやりくりできない場合は、世帯収入を増やしたり、貯蓄を取り崩したりして補填しなければいけません。

老後も働くという選択肢もありますが、年を重ねて働くことが難しくなるリスクも考慮すると、相応の資産を準備して老後を迎えるのが理想的です。

老後資金を準備する際には、物価上昇によりお金の価値が下がる可能性があること、税金や社会保険料の負担が増える可能性があることも想定しておきましょう。

参考資料

和田 直子