5. 年金から天引きされるお金「額面と手取りは違う」
年金から天引きされるお金があるため、額面が20万円であっても実際の振込額は異なります。
どのようなお金が天引きされるのか、具体的に見ていきましょう。
5.1 【老齢年金からの天引き①】個人住民税および森林環境税
一定の条件を満たす場合、前年中の所得に対して課税される住民税は公的年金からの天引きで納めます。
また、2024年度からは新たに森林環境税(年額1000円)の徴収がスタートしました。
5.2 【老齢年金からの天引き②】 所得税および復興特別所得税
老齢年金は「雑所得」扱いとなり、一定額以上であれば所得税が課税されます。こちらも年金から天引きされます。
所得税とあわせて「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、復興特別所得税も課税されます。
5.3 【老齢年金からの天引き③】介護保険料
介護保険料は、64歳までは健康保険と合わせて納めますが、65歳からは単独での支払いとなります。年金の支給額が年額18万円以上の場合、介護保険料は年金から天引きされます。
また、「要支援」や「要介護」の認定を受け、介護サービスを利用し始めた後も、介護保険料の納付義務は生涯続く点に注意が必要です。
5.4 【老齢年金からの天引き④】健康保険料・後期高齢者医療制度の保険料
国民健康保険や後期高齢者医療制度といった健康保険料についても、原則年金からの天引きとなります。
少子高齢化の進行などを受け、社会保障制度を支える世代の負担は増加傾向にあります。
介護保険料や健康保険料は今後も上昇する可能性が高いといえるでしょう。
6. 老後資金対策、少しずつ始めよう
今回は年金平均受給額について確認しました。
1万円刻みの受給権者数をみてもわかる通り、年金受給額については個人差が大きいものです。平均はあまり参考にならないため、自分自身の年金額を確認してみましょう。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などが参考になります。
そちらを踏まえて老後の収支をシミュレーションしたとき、足りないと気づくこともあるでしょう。
足りない分は準備していく必要がありますが、その方法は預貯金だけではありません。
- 公的年金を増やす方法を考える
- 私的年金を準備する
- 預貯金を貯める
- 資産運用をする
- できるだけ働く
それぞれの選択肢ごとに合う人・合わない人があります。デメリットも熟考した上で、ご自身に合った老後対策を始めていきましょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
- 日本年金機構「ねんきんネット」
- 厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支 2023年(令和5年)平均結果の概要」
太田 彩子