2. 遺族年金の問題点と見直し案の内容とは
現在、国の社会保障審議会年金部会で行われている遺族年金の見直しは、遺族厚生年金に関する内容です。
現行の遺族厚生年金の問題点は、子どものいない配偶者の性別によって、受給額や受給権に違いがあることです。詳細を見てみましょう。
夫を亡くした妻は、30歳以上であれば遺族厚生年金が終身給付となります。40〜65歳の間は中高齢寡婦加算が追加で支給されるため、手厚い生活支援を受けられます。
一方、妻を亡くした夫は55歳になるまで遺族厚生年金の受給権を得られません。受給権を得るまでの間にも、中高齢寡婦加算に該当する加算はありません。さらに、受給権を得ても実際に受給できるのは原則60歳からです。
加えて、社会経済状況の変化も、国が遺族厚生年金の改正を検討する要因となっています。厚生労働省によれば、40〜59歳の女性就業率は2040年(推計)時点で82.4%〜95.1%と、2023年時点の男性並みに上昇する見込みです。また、男女の賃金格差も40歳以下の若い世代ほど格差が少なくなっており、40歳以降の世代では最大で12.33ポイントと大幅に改善されています。
現代では共働き世帯数が1206万世帯なのに対し、専業主婦世帯は404万世帯となっており、共働き世帯が大幅に増加している状況です。世帯数の差は拡大傾向にあり、今後も働く男女は増えると予想できます。
こうした背景から、遺族厚生年金を時代に即した内容に改正しようとしているのです。