年金制度に関しては、さまざまな部分での改正が実施、検討されています。昨年10月には、厚生年金保険への加入が必要なパート・アルバイトの事業所要件が、従業員101人以上から51人以上へと変更されました。
また、2025年度の国民年金保険料は1万7510円と、今年に比べて530円上昇しています。社会保険料の負担が増える改正が相次いでいる状況です。
現在改正が検討されている年金制度のひとつが「遺族年金」です。遺族年金は、より時代に適した制度となるよう、国の審議会で改正内容について話し合われています。この記事では、遺族年金の概要や見直し案、現在の受給額を解説します。
1. 現行の遺族年金制度の概要
遺族年金は、年金の被保険者が亡くなった際、被保険者に生計を維持されていた遺族に対して支給される年金です。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つがあり、亡くなった人の年金加入状況によって、支給される年金が変わります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件や受給額は、以下のとおりです。
【写真全7枚中1枚目】現行の遺族年金制度の概要、2枚目以降で、遺族厚生年金の問題点を見る
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出所:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」、日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」をもとに筆者作成
1.1 遺族基礎年金
受給要件
- 以下のいずれかを満たした場合
・国民年金の被保険者である間に死亡したとき
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
受給対象者
- 亡くなった人に生計を維持されたいた子のある配偶者または子(※1)
受給額
- 子のある配偶者が受給するとき
・昭和31年4月2日以後生まれの人:816,000円 + 子の加算額(※2)
・昭和31年4月1日以前生まれの人:813,700円 + 子の加算額(※2) - 子が受給するとき
・816,000円+2人目以降の子の加算額(※2)
1.2 遺族厚生年金
受給要件
- 以下のいずれかを満たした場合
・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
受給対象者
- 子のある配偶者
- 子(18歳になった年度の3月31日までにある方人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人。)(※3)
- 子のない配偶者(※4)
- 父母(※5)
- 孫(18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人。)
- 祖父母(※5)
受給額
- 亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
遺族基礎年金は、国民年金の加入者や老齢基礎年金の受給権がある人などが亡くなった際に、子どものいる配偶者や子ども自身に支給されます。
遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入している人や老齢厚生年金の受給権がある人などが亡くなった際に、遺族が受給できる年金です。遺族基礎年金と違って、子どものいない配偶者や亡くなった人の父母、祖父母も受給できます。
次章では、遺族年金の見直し内容について解説します。