2025年度がスタートしました。

毎年改定される公的年金額は、4月分から前年比+1.9%となり、3年連続の引き上げとなっています。ただし、マクロ経済スライドの発動により、昨今の物価上昇率には追い付けていません。

こうした現状は、多くのシニアの年金世帯の家計を圧迫するとともに、働き盛りの現役世代たちが日ごろの家計や貯蓄、さらには老後に向けた資産づくりについて考えるきっかけとなっているかもしれませんね。

今回は、老齢年金の一般的な受給開始年齢である65歳以上世帯の家計や貯蓄事情にフォーカス。

最新の公的年金受給額データをながめたあと、申請しないと受け取れない厚生年金の「加給年金」についても触れていきます。

1. 65歳以上のリタイア夫婦「家計は毎月黒字でしょうか?」エンゲル係数は何%?

一般的な老齢年金の受給開始年齢は65歳。このタイミングで仕事から完全に引退する人も多いでしょう。

そこで、厚生労働省の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」より、標準的な65歳以上の無職夫婦世帯の家計収支を見ていきます。

1.1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)

収入:25万2818円

■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円

支出:28万6877円

■うち消費支出:25万6521円

  • 食料:7万6352円
  • 住居:1万6432円
  • 光熱・水道:2万1919円
  • 家具・家事用品:1万2265円
  • 被服及び履物:5590円
  • 保健医療:1万8383円
  • 交通・通信:2万7768円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万5377円
  • その他の消費支出:5万2433円
    • 諸雑費:2万2125円
    • 交際費:2万3888円
    • 仕送り金:1040円

■うち非消費支出:3万356円

  • 直接税:1万1162円
  • 社会保険料:1万9171円

家計収支

  • ひと月の赤字:3万4058円
  • エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
  • 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%

この世帯の場合、毎月の収入は25万2818円、そのうち約9割(22万5182円)を占めるのが公的年金などの社会保障給付です。

一方で支出の合計は28万6877円。そのうち消費支出(いわゆる生活費)が25万6521円、非消費支出(税や社会保険料など)が3万356円でした。

なおエンゲル係数は29.8%、平均消費性向は115.3%。この夫婦世帯の場合、毎月3万4058円の赤字が発生し、主に貯蓄の取り崩しなどで不足分を補填していくことになるでしょう。

1.2 老後に必要な資金は「個人差・世帯差」がある

ただし上記の家計収支では、「住居費」が1万6432円である点や、「介護費用」が項目として含まれていないといった点に留意する必要がありそうです。

賃貸住宅に住まう場合は家賃分との差額を上乗せして考える必要があります。また、マイホームの修繕や住み替えが必要となる世帯もあるでしょう。医療費や介護費用が想定外にかさむケースもあります。

そこで頼りになるのは、現役時代から積み上げてきた「貯蓄」と言えるでしょう。次では世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の貯蓄事情についても見ていきます。