物価高の影響で家計が圧迫され、これまで当たり前に買えていたものが手に入りにくくなったと感じる方も多いのではないでしょうか。
ファイナンシャルアドバイザーである筆者は普段、お金に関する相談をさまざまな世代の方から受けていますが、最近では「将来に備えて資産形成を始めたい」という声が年々増えています。今の生活を維持するだけでなく、老後の安心のために準備を進める方が増えているのです。
資産形成の手段として、NISAやiDeCoといった税制優遇のある制度が充実してきました。しかし、大切なのは「何のために」「いつまでに」「いくら貯めるのか」という目的と目標を明確にすることです。
今回は、多くの方が気にしている老後資金について、年金制度を確認しながら、老後の平均年金月額について見ていきます。将来の生活を見据え、今からどの程度資産形成に回すべきかを考える参考にしてみてください。
1. 公的年金【国民年金・厚生年金】のしくみ
日本年金機構のHP内「公的年金制度の種類と加入する制度」を見ると、下記のような2階建ての図解が載っています。
これは、日本の公的年金が国民年金と厚生年金の「2階建て」であることを示しています。
国民年金は年金のベース部分、厚生年金がその上に乗っているイメージです。
1.1 1階部分「国民年金」とは?
- 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳までの全員
- 年金保険料:全員定額。年度ごとに改定される(※1)
- 老後の年金額:全期間(40年間)保険料を納めると、満額(※2)受給できる
※1:国民年金保険料:2024年度の月額1万6980円
※2:国民年金の満額:2024年度の月額6万8000円
1.2 2階部分「厚生年金」とは?
- 加入対象:会社員や公務員、パート・アルバイトで一定要件を満たした方(※国民年金に上乗せで加入)
- 年金保険料:給与や賞与に応じて決定される(※ただし上限あり)
- 老後の年金額:年金加入期間と納付済保険料額で計算されるため、個人差が出やすい
1.3 国民年金保険料を「自分で納める」人とそうでない人?
国民年金保険料を自分で納める必要がある人と、そうでない人がいます。
自ら納めなくてはならないのは、以下の方です。
- 自営業者(第1号被保険者)
- 農業や漁業に従事している方(第1号被保険者)
- 第1号被保険者に扶養されている配偶者
- 厚生年金に加入している65歳以上の方に扶養されている配偶者
一方、以下の「第2号被保険者」と「第3号被保険者」は、国民年金保険料を直接納める必要はありません。厚生年金や共済組合が「第2号被保険者」に代わり、国民年金に必要な負担をしてくれているからです。
- 会社などに勤めていて、厚生年金や共済組合に加入している方(第2号被保険者)
- 厚生年金や共済組合に加入している方に扶養されている配偶者(第3号被保険者)
なお、厚生年金の受給額は現役時代の働き方や収入、厚生年金の加入期間などに応じて異なります。
次章では、60歳から90歳以上のシニア世代が受給している「厚生年金の月額平均」を見てみましょう。