物価の上昇が続き、特に食品や日用品の価格高騰が家計に影響を与えています。こうした状況の中、年金を頼りに暮らす高齢者世帯の生活は、どのような生活を送っているのでしょうか。
年金だけで現在の生活を維持できるのか、不安を抱えている方も多いかもしれません。そのような方々を支援する制度の一つに、「年金生活者支援給付金」があります。これは基礎年金に上乗せして支給され、一定の条件を満たせば受け取ることができます。特に、生活費のやりくりが厳しい世帯にとっては心強い制度といえるでしょう。
しかし、この給付金は一時的な支援策であり、恒久的に続くわけではありません。将来を見据えた資産形成や生活設計も、同時に考えていく必要があります。
本記事では、「年金生活者支援給付金」の制度概要を整理しながら、老後の生活をより安定させるために今からできる準備について考えていきます。
1. 年金生活者支援給付金とは?
「年金生活者支援給付金」は3種類
出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
「年金生活者支援給付金」は、年金収入やその他の所得が一定基準額以下の年金生活者を支えるために、2カ月に一度、年金に上乗せして支給されるお金です。
近年しばしば実施されている「住民税非課税世帯を対象とする給付金」などの一時的な支援とは異なり、後述の支給要件を満たす場合は継続して受給ができるものです。
年金生活者支援給付金を受け取るためには、請求書を提出して申請手続きをおこなう必要があります。
既に年金を受給している人が新たに支給対象となった場合、毎年9月の第一営業日以降、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます(※)。
「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金年金生活者支援給付金」「遺族年金年金生活者支援給付金」の3種類。
今回は、この中でシニア世代の暮らしとかかわりが最も深い「老齢年金生活者支援給付金」についてお伝えします。
※請求書が届くタイミングは「繰上げ受給中の人」「これから年金を受け取り始める人」など、個々の年金受給状況により異なります。詳しくは日本年金機構のホームページなどでご確認ください。
2. 老齢年金生活者支援給付金《支給要件・給付基準額・計算方法》
ここからは「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件・給付基準額・計算方法について整理していきます。
2.1 老齢年金生活者支援給付金《対象となるのはどんな人?》支給要件
老齢年金生活者支援給付金の支給要件は、以下の全てに該当するケースです。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額( 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない)とその他の所得との合計額が下記の要件に該当。基準額を超えた一定の人には「補足的老齢年金生活者支援給付金(詳しくは後述)」を支給
1956年4月1日以前生まれの方《支給要件》
- 老齢年金生活者支援給付金:78万7700円以下
1956年4月2日以後生まれの方《支給要件》
- 老齢年金生活者支援給付金:78万9300円以下
2.2 老齢年金生活者支援給付金《いくらもらえる?》給付基準額
老齢年金生活者支援給付金の基準額(月額)
- 2024年度:5310円
- 2025年度:5450円(+140円)
老齢年金生活者支援給付金の基準額は、物価の変動に応じて年度ごとに改定がおこなわれます。2024年1月24日、厚生労働省から、2025年度の基準額は「前年より2.7%のプラス改定」となることが公表されました。
実際の支給額は、上記の基準額をもとに保険料納付済期間等に応じて計算されます。次ではその計算方法についても触れていきます。