「年金生活者支援給付金制度」は、低年金の方の生活を支援することを目的としています。
給付金の対象者には、毎年9月頃から順次「年金生活者支援給付金請求書」が送付され、申請すれば公的年金に上乗せして給付金を受け取れます。
今回は、2024年12月に厚生労働省年金局が公開した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、年金生活者支援給付金の支給要件や平均給付額についてご紹介します。
また、最新資料をもとに、厚生年金と国民年金の平均支給額も確認しておきましょう。
1. 「年金生活者支援給付金」を受け取れる人とは?
まず、年金生活者支援給付金を受け取れるのは、以下の支給要件を満たす方です。
年金生活者支援給付金の支給要件
1.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
次に、障害年金生活者支援給付金の支給要件もチェックしていきましょう。
1.2 障害年金生活者支援給付金の支給要件
- 障害基礎年金の受給者
- 前年の所得(※1)が472万1000円(※2)以下
※1 障害年金等の非課税収入は、給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※2 扶養親族等の数に応じて増額。
1.3 遺族年金生活者支援給付金の支給要件
- 遺族基礎年金の受給者
- 前年の所得(※1)が472万1000円(※2)以下
※1 遺族年金等の非課税収入は、給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※2 扶養親族等の数に応じて増額。
このように、年金生活者支援給付金を受け取るには所得制限が設けられています。
老齢年金生活者支援給付金を受け取るには、公的年金等の収入が88万9300円以下もしくは88万7700円以下とされているので、月額にすると約7万4000円以下の場合は給付を受けられる可能性があります。
なお、上記の支給要件を満たし、「年金生活者支援給付金請求書」を提出している方は、12月支給分から給付金が上乗せされています。
2. 年金生活者支援給付金の平均給付金額
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金生活者支援給付金の平均給付金額は以下のようになっています。
年金生活者支援給付金の平均給付金額
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 老齢年金生活者支援給付金:4014円
- 補足的老齢年金生活者支援給付金:2116円
- 障害年金生活者支援給付金:5555円
- 遺族年金生活者支援給付金:5057円
また、年齢別にみた老齢年金生活者支援給付金の平均給付金額は以下のとおりです。
老齢年金生活者支援給付金の平均給付金額
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 70歳未満:4691円
- 70~74歳:4187円
- 75~79歳:3930円
- 80~84歳:3835円
- 85~89歳:3883円
- 90歳以上:3952円
なお、給付金の支給額は、以下の計算式のとおり「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」によって決まります。
- 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5310円×保険料納付済期間/被保険者月数480月
- 保険料免除期間に基づく額(月額)=1万1333円×保険料免除期間/被保険者月数480月
給付基準額である5310円を受け取れる場合、年間で約6万円を受け取れる計算です。
続いて、厚生年金と国民年金の平均月額と、受給額ごとの受給者数も見ていきましょう。
3. 【厚生年金・国民年金】平均月額と受給額ごとの受給者数
厚生年金と国民年金の平均月額は以下のとおりです。
〈全体〉
厚生年金:14万6429円
国民年金:5万7584円
〈男性〉
厚生年金:16万6606円
国民年金:5万9965円
〈女性〉
厚生年金:10万7200円
国民年金:5万5777円
なお、厚生年金と国民年金の受給額には個人差があります。特に、現役時代の収入と加入期間に左右される厚生年金の受給額には差が出やすいので、受給額ごとの受給者数も確認しておきましょう。
3.1 厚生年金・受給額ごとの受給者数
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
※国民年金部分を含む
厚生年金のボリュームゾーンは10~11万円前後および17~18万円前後となっています。
続いて、国民年金における受給額ごとの受給者数も見てみましょう。
3.2 国民年金・受給額ごとの受給者数
- 1万円未満:5万8811人
- 1万円以上~2万円未満:24万5852人
- 2万円以上~3万円未満:78万8047人
- 3万円以上~4万円未満:236万5373人
- 4万円以上~5万円未満:431万5062人
- 5万円以上~6万円未満:743万2768人
- 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
- 7万円以上~:227万3098人
国民年金のボリュームゾーンは6~7万円未満となっています。
4. まとめにかえて
年金生活者支援給付金は、低年金の方の生活を支援するための制度であり、年間で約6万円の給付金を受け取れる可能性があります。
厚生年金への加入期間がない方(もしくは短い方)など、給付金の対象となる場合は必ず請求書を提出しましょう。
また、厚生年金と国民年金の平均支給額は、それぞれ14万6429円、5万7584円です。
年金額は個人差が大きいため、ご自身の年金額(見込み)を確認し、必要に応じて老後対策を始めていきましょう。
参考資料
加藤 聖人