会社員や公務員は、厚生年金に加入します。将来は基礎年金と厚生年金の2つを受け取れるため、老後の収入がいくぶん安定します。
厚生年金は、保険料を自分と会社とで折半して納めるのも特徴です。そのため、人によっては国民年金に加入するよりも安い保険料で済む場合があります。
しかし、ねんきん定期便を見ると、企業が負担してくれる厚生年金保険料については記載がありません。「企業が負担する保険料は自分の年金に反映されないの?」と気になる人もいるでしょう。
この記事では、厚生年金保険料の企業負担分について、使途やねんきん定期便に反映されない理由を解説します。
1. 厚生年金保険の仕組み
厚生年金は会社員や公務員が加入する年金です。「2階建て」とよばれる日本の年金制度の2階部分にあたります。
【写真全6枚中1枚目】日本の公的年金制度は「2階建て」構造。2枚目以降で、厚生年金保険料や年金額(報酬比例部分)の計算方法などを確認する。1/6
出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成
厚生年金保険料は、毎月の給与や賞与から天引きにより納付されます。保険料率は以下のとおりです。
- 【毎月の保険料】標準報酬月額×保険料率(18.3%)
- 【賞与の保険料】標準賞与額×保険料率(18.3%)
標準報酬月額は、手当を含む税引き前の給与を一定額ごとに区分したものです。標準賞与額は、税引き前の賞与から千円未満の端数を切り捨てた金額で、上限は支給1回あたり150万円までです。
年3回まで支給されるものは標準賞与額とみなされますが、4回以上の賞与は標準賞与額ではなく標準報酬月額の対象報酬となります。
保険料率は2004年から年金制度改正により引き上げが続いていましたが、2017年9月に引き上げが終了しました。
現在は自分と企業の負担分合わせて18.3%の保険料を納めますが、実際に自分が負担する保険料は9.15%です。保険料の算出に給与や賞与の金額が関与するため、月収が高い人ほど保険料負担も大きくなります。
また、受け取れる厚生年金の金額は標準報酬月額によって決まります。標準報酬月額に対して加入期間や特定の割合を乗じることで、受給額を算出します。
よって、厚生年金の受給額は現役時代の給与が高く、加入期間の長い人ほど多く受け取れるのです。
次章ではねんきん定期便での厚生年金保険料の記載について解説します。
2. ねんきん定期便に企業負担の年金保険料が反映されていないのはなぜ?
自分の誕生月に送られてくるねんきん定期便には、公的年金に関するさまざまな情報が掲載されています。厚生年金保険料についても、これまでいくら支払ってきたのかが確認可能です。
しかし、確認できる厚生年金保険料は自分が負担した分のみです。企業が負担した分については、認できません。なぜねんきん定期便には企業負担分の年金保険料が反映されていないのでしょうか。
これは「毎月給料からいくら保険料が引かれているかを確かめてもらうため」とされています。
ねんきん定期便は、あくまで自分が納めた保険料を確認できる書類であり、企業が負担している厚生年金保険料については記載していません。
厚生年金保険料は会社と折半して納めるため、会社負担分も含めた保険料をこれまでいくら払ってきたのか知りたい場合は、数字を2倍にすれば簡単に確認できます。
では、次章では厚生年金保険料の企業負担分の使途について見ていきましょう。
3. 企業が負担した分の厚生年金保険料は何に使われている?
ねんきん定期便には企業が負担した厚生年金保険料に関する記載はありません。「企業負担分はどこかへ消えてしまった?」「企業負担分の保険料が何に使われているのかわからない」と疑問を持つ人も多いでしょう。
企業負担分の厚生年金保険料は、自分が負担する保険料と同じように「厚生年金勘定」と呼ばれる厚生年金給付などに使うお金としてプールされています。そして、厚生年金の受給権を得た人に対して、確実に支給されています。
一方で、気になるのが基礎年金の財源です。厚生年金勘定は、基礎年金に一部のお金を拠出しています。基礎年金拠出金は基礎年金勘定にプールされ、基礎年金の受給権がある人全員に対して給付されています。
基礎年金勘定は国民年金勘定と厚生年金勘定から拠出されているお金です。拠出された分は区別せずにすべて同じ基礎年金の給付財源として扱うため、拠出時点で国民年金保険料と厚生年金保険料が入り混じってしまいます。
よって、自分が納めた厚生年金保険料が、厚生年金に加入していない人の基礎年金の給付財源として使われているように見えてしまうのです。
実際には、基礎年金勘定への拠出は、国民年金受給者の第1号被保険者、厚生年金を受給する第2号被保険者とその人に扶養される第3号被保険者の人数に合わせて調整されています。
しかし、制度の仕組み上、保険料が勝手に使われているように感じてしまうのです。
「国民年金」と「厚生年金+基礎年金」とで勘定管理を分けて考えるなど、財政方式がよりシンプルになれば、企業負担分の保険料に関する不安や不満は多少改善されるのではないでしょうか。
4. 年金は消えないが保険料負担増は大きな課題
2024年7月の年金財政検証によれば、今後日本がどのような経済成長となっても、年金制度自体が破綻することはないとしています。
一方で、現役時代の手取り収入と比較していくらの年金を受給できるか示した所得代替率は、33%〜59%と、経済成長の度合いによって異なるようです。
年金については「106万円の壁の撤廃」や「国民年金の水準底上げに向けた厚生年金保険料の活用」など、制度運営にかかわる報道が相次いでいます。
将来年金が受け取れることで老後生活においては貴重な収入となりますが「保険料負担が増えるのは嫌」という人は多いでしょう。
保険料収入に頼った現在の年金財政には課題が山積みです。適切な制度運営がなされるよう、今後の情報を注視してみましょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 日本年金機構「令和6年度「ねんきん定期便」(ハガキ)の見方(50歳以上の方)」
- 日本年金機構「表示されている厚生年金保険の保険料には、事業主負担分も含まれているのですか。」
- 厚生労働省「[年金制度の仕組みと考え方] 第2 公的年金制度の財政方式」
- 厚生労働省「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しー令和6(2024)年財政検証結果ー」
石上 ユウキ