3. 貯蓄が不十分ならできるだけ長く働くとよい

総務省「〔活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制について〕」によると、2023年における高齢者の就業率は以下のようになっています。

  • 60〜64歳:74.0%
  • 65〜69歳:52.0%
  • 70〜74歳:34.0%
  • 75歳以上:11.4%

65~69歳の方は半数以上、70~74歳の方の3人に1人以上が働いています。昨今は労働力不足に悩む企業が増えているため、心身ともに健康であれば、高齢者でも働ける機会が増えています。

また、高齢者を支援するための公的制度の一つに、雇用保険給付による「高年齢雇用継続給付」があります。

高年齢雇用継続給付とは、60歳到達時点に比べて賃金が75%未満に低下した60歳以上65歳未満の就業者に対して、給付金を支給する制度です。最大で各月に支払われた賃金の15%(2025年4月1日以降は10%)が支給されます。

たとえば、60歳以上65歳未満の期間中における賃金が20万円の場合、最大で3万円(2025年4月1日以降は2万円)の給付を受けることが可能です。

高齢者が働きやすい環境になっているだけでなく、政府による公的援助もあるため「貯蓄が不十分かもしれない」という不安をお持ちの方は、できるだけ長く働くとよいでしょう。

特に、昨今は晩婚化や晩産化が進んでいる関係もあり、子どもが独立したあとに老後資金を十分に用意できないケースがあり得ます。たとえば、子どもが独立したときに自分が55歳だと、再雇用を含めて老後資金を貯める期間は10年間です。

場合によっては、10年間で十分な老後資金を貯めるのは難しいというケースもあり得ます。心身が健康であれば70歳や75歳まで働くことで、経済的な不安を軽減できるでしょう。

4. まとめにかえて

高齢期における生活を支える収入は公的年金ですが、昨今は働く高齢者の方が増えています。寿命が伸びていることを考えると、経済的な不安を軽減するうえで、できるだけ長く働くのは有効な選択肢でしょう。

一般的に高齢になるほど気力と体力が衰えるため、無理に働くことはおすすめしません。パートやアルバイトなど、自分の都合や体力に合わせて、無理なく就労して収入を得るとよいでしょう。

参考資料

柴田 充輝