8割が公的年金を不安視

2018年のサラリーマン1万人アンケートでは公的年金は安心できるかを聞いています。この設問は2010年以来、継続して聞いていますが、2010年から2015年にかけて少し改善したものの2015年以降は全く変わっていません。

「とても安心できる」(1.6%)、「まあまあ安心できる」(8.2%)、「あまり安心できない」(30.5%)、「不安だ」(50.2%)、「わからない」(9.5%)となっており、合計で8割の回答者が「あまり安心できない」、「不安だ」と答えています。

一般的には、公的年金に対して不安だという思いがあれば、それが自助努力につながって老後の資産形成につながっていくはずだと考えられます。しかし、実際にはなかなかうまくいっていないのは、どこに問題があるのでしょうか。「公的年金を理解したうえで不安視している」のか、単に「漠然と不安視している」だけなのかが課題ではないでしょうか。

年金受給額を知って退職後の生活が足りないと判断している人は4割弱

2018年のアンケートでは「不安なのは制度そのものの持続力か、それとも給付額なのか」を初めて聞きました。その結果、25.0%が「公的年金制度そのものが廃止になる」と思っており、また「制度も給付額も変化しない」と考えている人も17.8%に達していることがわかりました。

一般的には公的年金は100年安心プランで「制度そのものは残る」が「給付額が減る」といわれていますが、そう理解している人は57.2%にとどまっていました。

そこで公的年金は「安心かどうか」と、この公的年金を「どう評価しているか」をクロス分析してみると、12,010人を100%として、「制度は残るが給付が減る」とわかっているうえで、公的年金制度を「あまり安心できない」「不安だ」と答えた人は47.9%しかいないことがわかりました。

さらに「公的年金の受給額が生活に十分かどうか」を聞く設問では、76.7%の方が公的年金だけでは「かなり苦しい生活」「生活できない」と受給額を評価していることがわかります。

約8割ですから「公的年金は安心できない」とする人とほぼ同じくらいの比率ということになります。しかし、これは「公的年金の受給額を知っている」と答えた50.3%の人が対象で、12,010人全体でみれば、その比率は38.6%にとどまります。

意外に漠然とした思いだけで「公的年金は不安だ」と考えている人が多いようです。制度や受給可能金額を理解したうえで、自身の生活にどれくらい必要なものなのか、どこに課題があるのかを考えることが、資産形成への第一歩につながるように思われます。

公的年金受給額の評価と公的年金受給額の認知度 (単位:人、%)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート、2018年

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史