SECは承認の却下や判断の先送りの理由として、価格操作や詐欺などの不正防止策や投資家保護が不十分であると指摘しています。ただ、ウィンクルボスETFの却下やCBOT ETFの判断先送りの本当の理由はカストディにあるようです。カストディとは証券の管理業務のことですが、焦点は分離保管にあるようです。

やや専門的な話となりますが、ヘッジファンドは顧客の資産を預かって運用しており、証券の売買をしている運用者(ファンドマネージャー)と口座所有者は違います。顧客の資産が分離されていないことが発覚すれは規則違反で処罰の対象となります。

ところが、ビットコイナーには当然のことかもしれませんが、ビットコインは買った人とその所有者が一致します。たとえば、あるファンドマネジャーが100人分のビットコインを購入した場合、すべてビットコインはいったんそのマネジャーのアカウントに入ってから振り分けられることになります。

ただし、それぞれのビットコインに色がついているわけではありませんので、どれが誰のビットコインなのかは買った本人にしか分かりません。

こうした問題は証券を売買する際にも発生しますが、こうした面倒な作業を引き受けているのがカストディアンであり、大手の証券会社であればどこもこのカストディアン・サービスを受けられます。

ここで重要なのが、ETFの申請者とカストディアンは別が望ましいということです。先ほどの例からもわかると思いますが、第三者のカストディアンが中立な立場で保管しないと、購入した証券が恣意的に振り分けられる恐れがあるからです。

そして、ビットコイン市場には信頼できるカストディアンが不在であり、そのことがETF承認の大きな壁になっています。たとえば、ウィンクルボスETFを例にとると、申請者がカストディアンを兼務しており、こうした構造上の問題が却下の理由ではないかとみられています。

カストディ業務の整備を急展開中

仮想通貨業界は現在、悲願のビットコインETF上場に向けてカストディ業務の確立を急いでいます。

たとえば、昨年11月には米仮想通貨取引所大手のCoinbase(コインベース)がカストディアン・サービスを開始しています。ただ、取引所へのハッキング事件が相次いでおり、コインベースも昨年12月の価格急落時に取引を停止するなど、仮想通貨取引所への信頼は必ずしも高いものではありません。

しかし、8月には、5月に仮想通貨市場への参戦を表明していたゴールドマン・サックスがカストディ業務を検討していることが報じられたほか、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)が仮想通貨業務に特化した新会社・Bakktを設立し、カストディ業務も提供することが表明されています。

こうした動きは、ウィンクルボスETFの申請却下、CBOE ETFの承認先送りという厳しい現実に直面し、仮想通貨業界がカストディ業務に本腰を入れ始めたことをうかがわせています。

CBOT ETFの承認判断は9月30日まで先送りされましたが、最大の審議延長期間となる来年2月まで判断が先送りされるとの見方が有力視されています。SECは必ずしもビットコインに否定的なわけではなく、カストディ業務の整備を待っていると見られているからです。

こうして考えると、ビットコインETFが承認されるのは時間の問題といえるのかもしれません。ただ、いつになるのかはゴールドマンやNYSEを中心としたカストディ業務の整備スピードにかかっているようです。

LIMO編集部