会話の最中に気まずい沈黙が訪れる瞬間ってありますよね。会話を続けるためには「質問力」が大事だとよくいわれますが、気を利かせた質問をしたつもりでも、すぐに話が終わってしまって、お互いに次の話題を探して沈黙が訪れる……誰でも経験があると思います。
この記事では、『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』の著者で、ANAやディズニーなど、7年でのべ100万人にもおよぶ接客を行い、現在はコミュニケーション講師として活躍する桑野麻衣さんが、気まずい沈黙を防ぐ質問テクニックについて教えます。
「ただ質問すればいい」わけではない
最近よく聞く「質問力」ですが、「ただ質問さえすれば、相手の話に関心があるように見せることができる」と勘違いされがちです。よくよく考えれば、相手から根掘り葉掘り質問されるというのは、正直あまりいい気持ちがしないものですよね。
私自身、ANAで一般の搭乗カウンターから、VIPカウンターやラウンジでの仕事がメインになった際に、急に質問力を問われることとなりました。それまでのカウンターと違い、お客様の多くがヘビーユーザーの方であるため、ちょっとした「顔見知り感」が求められるのです。
質問をしすぎれば「馴れ馴れしい」という印象になり、ただ軽くあいづちをしているだけでは「素っ気ない」という印象になります。そこで私は、適度に会話を広げたり、深めたりすることを意識するようになりました。そして、「線の質問」と「点の質問」の2種類の質問を織り交ぜると、会話がスムーズになることに気づいたのです。それぞれについて説明していきます。
話を深掘りする「線の質問」
「線の質問」とは、話を深掘りする質問です。たとえば、「旅行が好き」という人に対しては、次のようになります。
A「国内旅行と海外旅行どちらがお好きですか?」
B「国内旅行のほうが好きですね」
A「国内だと、どこがお好きですか?」
B「沖縄が好きですね」
A「沖縄で一番魅力的なものって何ですか?」
B「やっぱり、海がいいですね」
A「おすすめのビーチってありますか?」
このように、相手の話した内容について、どんどん深掘りしていくのが「線の質問」です。相手の話にわかりやすく深く関心を寄せていることを表すことができます。しかし、ずっと線の質問をし続けてしまうと、しつこい印象を与えてしまったり、内容によっては相手のプライベートに踏み入りすぎてしまい、不快感を与えてしまったりする危険性もあります。そこで、「点の質問」の出番です。
話を広げる「点の質問」
「点の質問」は話を広げる質問です。たとえば、先ほどと同じ「旅行が好き」という話題に対しては、以下のようになります。
A「国内旅行と海外旅行どちらがお好きですか?」
B「国内旅行のほうが好きですね」
A-1「どれくらいの頻度で行かれるんですか?」
A-2「今年はもうどこかにご旅行の予定はありますか?」
A-3「旅行以外にはどんな趣味をお持ちなんですか?」
このように、相手が話した内容から、少し視点を変えて広げていくのが「点の質問」です。ただ、はじめから一切深掘りせず、ずっと点の質問をしてしまうと、「相手の答えに興味がない」「その話題から遠ざかりたい」という印象にもなりかねません。まるで、健康診断の時の問診票にある「お酒は飲みますか?」「日頃から運動はしていますか?」のような、一問一答の味気のない会話になってしまいます。つまり、会話をスムーズに続けるためには、この2種類の質問を織り交ぜる必要があるのです。
「線・線・点」の質問テクニック
このときに意識してほしいのが、「線の質問→線の質問→点の質問」という、2対1のバランスです。2つの「線の質問」をし、まずは話を深堀りします。その上で、少しずらした点の質問で話題を少し広げます。話題を広げたら、その内容にまた2つの線の質問をし、深すぎず浅すぎず深掘りします。その後、また少し話題を広げる、ということを繰り返します。すると、相手のパーソナルな部分に入り込みすぎずに、適度な距離で興味、関心を示すことができます。
たとえば、上司やクライアント先のご家族との会話で、お子さんの話が出てきたら、
「お子さんは息子さん、娘さんどちらなんですか?(線の質問)」
「娘さんはいまおいくつでいらっしゃるんですか?(線の質問)」
「3歳くらいだとちょうど一番かわいい時期なんじゃないですか?(点の質問)」
というふうに、主題をお子さんから相手のほうへと少しずらしていくといいでしょう。
このように、「線の質問」と「点の質問」をバランスよく使えば、スムーズに会話を続けることができます。会話の中で気まずい沈黙が流れ出したら、ぜひ試してみてくださいね。
■ 桑野 麻衣(くわの・まい)
学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。7年間で100万人を超えるお客様サービスに携わる。ANA在籍中にオリエンタルランドに出向。その後、ジャパネットたかた、再春館製薬所グループ企業を経て独立。接遇マナーやコミュニケーション、人材育成等の企業研修や各種セミナー、大学生や経営者、医療法人向けの講演など幅広く活動中。
桑野氏の著書:
『思わずマネしたくなる 好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』
桑野 麻衣