2024年7月24日、厚生労働省において「令和6年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会(第5回)」が開催され、最低賃金が全国平均で時給1054円と決まりました。
昨今の物価高が続く中で、インフレに応じた賃金アップは国民の生活を支えるうえで重要な措置といえるでしょう。しかし、この改定には課題もあります。
1つ目は、都道府県による最低賃金の格差です。地域によって生活費や物価が異なるものの、最低賃金の格差が拡大することで、地方で働く人々の生活が厳しくなる可能性があります。
2つ目は、配偶者が扶養内で働く世帯における「年収の壁問題」です。最低賃金が上がることで配偶者の収入が増え、一定の「年収の壁」を超える場合、結果的に世帯の手取り収入が減少してしまうケースがあります。この問題は2024年11月の衆院議員選挙でも大きな論点となり、各党が政策に盛り込んで議論を展開しています。
本記事では、最低賃金引き上げの詳細に加えて、これらの課題についても掘り下げて解説していきます。最低賃金の改定が私たちの生活にどのような影響を与えるのか、一緒に考えていきましょう。
1. そもそも「最低賃金」とは?
厚生労働省は「最低賃金制度」を「最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度」と定義しています(※1)。
なお、最低賃金は「地域別最低賃金(※2)」「特定最低賃金(※3)」の2種類。使用者は高い方の最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。
2024年7月24日、厚生労働省の中央最低賃金審議会において、2024年度の最低賃金の目安を全国平均で50円引き上げ「時給1054円」にすると決定。
なお政府は「2030年代半ばごろまでに全国平均1500円を目指す」と表明しています。この先のさらなる引き上げに注視したいところですね。
ただし、地域別最低賃金は都道府県差が大きいのが現状。次では各地方最低賃金審議会の答申状況を見ていきます。
※1:厚生労働省「賃金 (賃金引上げ、労働生産性向上)」より引用
※2:「地域別最低賃金」 都道府県ごとに定められている、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金
※3:「特定最低賃金」 産業別最低賃金とも呼ばれ、特定地域内の特定の産業について、関係労使が基幹的労働者を対象として「地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を定めることが必要」と認めるものについて設定される最低賃金(2024年3月末日現在、全国で224件)