第100回全国高等学校野球選手権大会(以下、「夏の甲子園大会」)が始まり、毎日熱戦が繰り広げられています。
もうすっかり日本の夏の風物詩となった夏の甲子園大会ですが、今年は第100回の記念大会ということで、過去最大の56校(例年は49校)が地区代表校として甲子園に集まっています。
地方大会の参加校数は15年前のピーク時から▲382校減少
しかし、地方大会(代表校を決める都道府県大会、硬式野球部)の参加校数を見ると、現在の日本が抱える少子化・人口減少問題と、それに対処する学校教育の取り組みを垣間見ることができます。
まず、地方大会に出場する学校数は、年々減少しています。今年の参加校数は昨年より▲58校減少の3,781校となり、これで15年連続の減少となりました。平成14年と15年には過去最高の4,163校が参加したので、それ以降の15年間で▲382校減少していることになります。
また、今年の地方大会には、連合チームが81(学校数では212校)あることも特徴の1つです。ちなみに、昨年の連合チームは57(183校)でした。連合チームとは、部員が不足している複数の学校で結成するチームですが、その中には、学校の統廃合が予定されているために結成された連合チームも含まれています。
少し前まで、“連合チーム”は想像できなかった事態です(離島など特殊事情を除く)。日本高等学校野球連盟(以下、日本高野連)では、原則として1校1チームとしています。しかしながら、少子化による部員不足や学校の統廃合という構造変化に、対応せざるを得なくなっている事情が見て取れます。
なお、地方大会に参加するためには、日本高野連に加盟しなければなりません。今年の例で言うと、加盟校数が3,971、前述したように地方大会への参加校数が3,781でした。
この差異は何らかの理由(不祥事による出場停止を含む)で出場を取りやめたために生じたものですが、中には、部員数が減った学校で連合チームでの参加を断念したケースもあると推測されます。
なお、この加盟校数で見ても、ピークは平成17年の4,253校であり、現在はそこから▲282校減の状況になっています。
日本全国の高校数はもっと減少しているのに…
しかし、ちょっと待ってください。
日本における高等学校の校数は、ピークが平成2年の5,506校、最新データ(平成29年5月時点)が4,907校ですから、ピークから▲599校減っています。
もちろん、減少した高校の中には、女子高など元々硬式野球部がない学校もあるでしょう。しかし、そうした事情を勘案しても、日本高野連の加盟校数の減少(▲282校)は、全国高校数の減少より緩やかと見ることができます。
つまり、減少の一方で、新たに日本高野連に加盟する高校が増えているのではないか?と推察されます。実際はどうなのでしょうか? 残念ながら、新規加盟校数のデータは公表されていません。
しかし、少子化が懸念され始めた平成初期以降、1)男子校・女子高の共学高への転化増、2)大学付属校の新設の増加などの動きが顕著になっています。いずれも、少子化の進行に伴い、入学生徒数を確保するためと考えられます。
特に、共学高への転化は、文科省から認可を受ける手続きが比較的簡単であることから、年々増えていると見られます。また、後者の大学付属校の場合は、大学への入学学生数を高校時から囲い込む意図が明らかです。いずれの場合も、数年後には硬式野球部が誕生している可能性は高いと言えましょう。
このように、日本の大きな社会問題である少子化・人口減少問題は、高校野球1つを取ってみても、“連合チーム”のように以前は起こり得なかったような事象が発生しているのです。
最後に、かつての有名女子高が、人口減少の流れを受けて変化した1つの例を紹介しておきます。
山口百恵が卒業した女子高にも大きな変化が次々と…
東京(品川区)に、多くの芸能人がタレント活動を行いながら通う有名な女子高がありました。古くは山口百恵(敬称略、以下同)も卒業生ですし、現在活躍しているタレントの卒業生も、仲間由紀恵、新垣結衣、剛力彩芽など数多くいます。
その女子高は、2005年に共学高となり、学校名から「女子」が消えました。そして、現在では硬式野球部も創設され、今年の東東京大会にも出場しています(初戦敗退)。
さらに、来年(2019年)4月からは、今春に世間を騒がせた日本大学の付属校になることも発表されました。わずか15年弱の間に、女子高が共学高になり、さらに大学の付属校になるという大きな変化が生じたのです。
皆さんの卒業校はいかがでしょうか? いつの間にか全然違う学校になっていても不思議ではありませんから、一度調べてみてもいいかもしれません。
LIMO編集部