LINEペイが中小規模の店舗向けに決済手数料を無料に

LINEは2018年6月28日、事業戦略説明会「LINEカンファレンス」を開きました。同カンファレンスでは、来場者を驚かせる発表もありました。決済サービス「LINEペイ」を重点的に推進するとともに、その一環として、飲食店など、中小規模の店舗向けに、決済手数料を8月から3年間、無料にすると発表したのです。

LINEペイの決済方法には、店頭で専用端末やPOSレジで決済する方法、レジ周辺などに掲示されたQRコードをユーザー(お客)がスマートフォンで読み取る方法、商店主向けのスマホアプリで決済する方法などがあります。商店主向けのスマホアプリを利用する方法であれば、導入コストもかかりません。

日本でキャッシュレス化が遅れている要因の一つは手数料の高さ

「中国では屋台でもQRコードの決済ができる」「むしろ現金お断りの店が多い」とも言われます。それに対して、日本では依然としてキャッシュレス化が進んでいません。その要因の一つが手数料だとされます。

国内でのクレジットカードの加盟店手数料は3~5%とされます。100円の商品を販売して3~5円の手数料を取られるのでは、小規模の店舗では経営に大きな影響が出ます。

経済産業省が2016年に実施した「観光地におけるキャッシュレス決済の普及状況に関する実態調査」では、クレジットカード未対応の実店舗などから、「手数料の高さ」が最たる理由に挙げられています。

経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)」では、日本でキャッシュレス化が遅れている社会要因として、「現金を持ち歩いても安心できる治安の良さ」「偽札の少なさ」などを挙げています。

中国でキャッシュレス化が一気に進んだのは、これらの課題を解決できることに加えて、国民のスマホ普及率が急速に拡大したこと、そして何より、広く利用されている決済サービスである「微信支付(ウィーチャットペイ)」や「支付宝(アリペイ)」の手数料が0.5%前後と安価であることも理由の一つでしょう。

さまざまなプレイヤーがQRコード決済市場に参入

前述したLINEのカンファレンスに先立つ6月12日、福岡市は、公共施設の支払いをキャッシュレス化する実証実験に「LINEペイ」を採択したと発表しました。博物館、アジア美術館、動植物園、自転車駐車場などの市の施設でキャッシュレス決済の実証実験が始まっています。

同市ではこのほか、市内の屋台、タクシー、商店街、都心商業施設など民間施設でのキャッシュレス決済の実証実験についても、LINEグループのほか、楽天、福岡銀行、ヤフーなど8事業者のサービスを採択し支援を行います。

日本でも「屋台でQRコード決済」が当たり前になる時代が来るかもしれません。ただし、有望な市場だけに、競争も激化しそうです。

楽天の「楽天ペイ」、NTTドコモの「d払い」などは既存の顧客基盤を武器にQRコード決済でも強みを発揮しそうです。QRコード決済では老舗の「Origami(オリガミ)」も存在感があります。

逆に新規参入では、ソフトバンクとヤフーの合弁会社のPayPay(ぺイペイ)が7月27日、QRコード決済サービスを今秋に始めると発表しました。このほか、メルカリやKDDIも準備を進めています。また、みずほフィナンシャルグループがメタップスの「pring(プリン)」と実証実験を行っているように、銀行の参入も考えられます。

一方で、リクルートライフスタイルは8月6日、これまでの「支付宝(アリペイ)」に加え、「微信支付(ウィーチャットペイ)」への対応も可能にしたと発表しました。こちらは訪日中国人向けということになりますが、国内での決済市場にインパクトを与えそうです。

しばらく、さまざまなプレイヤーの乱立と戦国時代が続きそうです。遅ればせながら、政府もQRコードを使った決済の規格統一に取り組み始めました。実現すれば、日本におけるキャッシュレス化が一気に加速するかもしれません。

上山 光一