「親の年収で教育費に差が出ているのだろうな」と多くの人は何となくお感じなのではないでしょうか。今回は文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」をもとに実際にはどの程度の差があるのかを数字をもとに見ていきましょう。
教育費とは何か
さて、教育費とは一体どこからどこまで含むのでしょうか。
文科省は、教育費を「学習費」と定義し、大きく3つの項目の合計を「学習費総額」としています。その3つの項目は以下の通りです。
- 授業料やクラブ活動などで必要な教科外活動費、通学費が含まれた「学校教育費」
- 給食費として必要となる「学校給食費」
- 学習塾や家庭教師費用、また習い事に必要な費用を含んだ「学校外活動費」
教育費といっても人によって様々でしょう。ただし、学校に関係する費用、塾に関係する費用、習い事に関係する費用が主な教育費だと考えれば、文科省の定義による「学習費総額」にすべて含まれていると考えて話を進めてもよいのではないでしょうか。そこで、以下は文科省の「学習費総額」をもとに話を進めます。
幼稚園の世帯年収と学習費総額
子どもが幼稚園生の世帯では年収が上がるにしたがって学習費の平均値が上昇していることが分かります。これは幼稚園が公立でも私立でも変わらない傾向です。以下、図表は文科省の同調査をもとに作成をしました。
世帯年収 | 公立(万円) | 私立(万円) |
400万円未満 | 20.0 | 42.0 |
400~599万円 | 21.5 | 43.1 |
600~799万円 | 24.7 | 50.5 |
800~999万円 | 28.0 | 50.9 |
1000~1199万円 | 34.0 | 60.0 |
1200万円以上 | 44.4 | 67.0 |
小学校の世帯年収と学習費総額
これも幼稚園のケースと変わらないのですが、世帯年収が増加するにつれて学習費は増加します。ただ、幼稚園のケースと異なるのは学習費が私立の場合には年収400万円未満でも100万円を超えているということです。世帯年収の4分の1が学習費というのは非常に高い割合に見えます。
世帯年収 | 公立(万円) | 私立(万円) |
400万円未満 | 23.3 | 104.9 |
400~599万円 | 26.6 | 117.3 |
600~799万円 | 31.3 | 130.0 |
800~999万円 | 37.1 | 139.7 |
1000~1199万円 | 43.7 | 152.4 |
1200万円以上 | 58.4 | 173.0 |
中学校の世帯年収と学習費総額
中学校でもこれまでのケースと同様に世帯年収が上昇するとともに学習費が増加します。そして私立の中学校では私立の小学校と同様に世帯年収が400万円未満でも学習費が100万円を超えます。
世帯年収 | 公立(万円) | 私立(万円) |
400万円未満 | 39.3 | 109.4 |
400~599万円 | 43.4 | 112.7 |
600~799万円 | 48.9 | 123.0 |
800~999万円 | 51.2 | 131.4 |
1000~1199万円 | 58.1 | 132.9 |
1200万円以上 | 62.8 | 146.9 |
高等学校の世帯年収と学習費総額
高等学校(全日制)ではこれまでのケースと同様に世帯年収が増加するとともに学習費が増加しています。ただ、私立の高等学校では年収1000~1199万円のレンジのケースでは学習費が800~999万円の世帯を下回っているのは付け加えておきます。また、小学校や中学校のケースと異なるのは私立の高等学校でも世帯年収が799万円以下では学習費は100万円を超えていません。
世帯年収 | 公立(万円) | 私立(万円) |
400万円未満 | 35.0 | 76.0 |
400~599万円 | 39.6 | 89.4 |
600~799万円 | 46.4 | 99.9 |
800~999万円 | 52.4 | 114.0 |
1000~1199万円 | 56.0 | 110.0 |
1200万円以上 | 73.2 | 130.4 |
【補足】平均値と標準誤差
当記事では「平均値」を中心に記載をしてありますが、文科省の同調査結果には「標準誤差」及び「標準誤差率」もあわせて丁寧に記載がされています。「標準誤差」の使い方ですが、「平均値」を中心として「標準誤差」の2倍ずつの幅をとれば、その中に全数調査から得られる真の年間平均額が約95%の確率で存在すると考えてよいとされています。
青山 諭志