現在の日本では、定年となり年金受給によって生活が支えられている人が多く居ます。厚生労働省による統計結果によると、2022年時点での老齢年金の受給者数は、およそ4932万人です。

【写真全8枚/1枚目】公的年金受給者数の推移。2枚目は年金から天引きされる税金や保険料を一覧で紹介1/8

公的年金受給者数の推移

出所:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業年報 結果の概要」

このように多くの人の老後の生活資金となる年金について「自分はどのくらい受給することができるのだろう」と疑問に感じて調べる人も多いのではないかと思います。

受給額の平均や計算方法は、検索をすることで出てきますが、その「受給額」が全て受け取れるわけではないことをご存知でしょうか。

年金を受給するときは、原則として年金額から「4種類の税金・保険料」が天引きされ、控除されたあとの額が手取りの受取金額となります。今回は、受給する厚生年金と国民年金から天引きされるものについて1つずつ解説します。ぜひ参考にしてください。

1. 年金から控除される税金・社会保険料の一覧

老齢となったことで受け取る老齢年金からは、次の4つの税金・社会保険料が天引きされます。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)
  • 介護保険料

年金から控除される税金・社会保険料2/8

年金から控除される税金・社会保険料

筆者作成

そのため、実際に受け取る年金額は「年金受給額」として算出される金額より低い金額となります。次に、それぞれの計算方法や基準について、1つずつ説明していきます。

1.1 所得税

年金から天引きされる1つ目の税金が、所得金額に応じて課される所得税です。老齢年金の収入は「雑所得」として扱われ、毎月の受給額に応じて所得税が計算されて受給額から天引きされます。

【所得税の計算方法】

  1. 年金収入から社会保険料等の控除額を差し引いて課税所得を算出
  2. 課税所得に税率を乗じて所得税額を計算

※税率は扶養親族等申告書を年金機構に提出している場合は5.105%、提出していない場合は10.21%となります。

公的年金等の源泉徴収3/8

公的年金等の源泉徴収

出所:国税庁「公的年金等の源泉徴収事務」

所得税は毎月の受給額に応じて控除されますが、年間の所得金額や控除金額によって差が生じる可能性もあります。年金以外の収入がある場合や、扶養に変更があった場合、追加の控除がある場合などは確定申告を行って精算することが必要です。

1.2 住民税

年金から天引きされる2つ目の税金が、前年の所得金額に応じて課される住民税です。住民税は各市区町村によって計算されるため、居住している場所により詳細な計算方法は異なる部分もあります。

住民税は所得税と異なり、その年の所得ではなく、前年の所得に応じて金額が計算されます。そのため、徴収後に確定申告のような精算をする必要はありません。

【住民税の計算方法】

  1. 前年の年間収入(年金その他の合計)から、公的年金等控除等の控除額を差し引いて課税所得を算出
  2. 課税所得に税率(原則10%)を乗じて住民税額を計算
  3. 住民税額から税額控除金額を差し引いて所得割額が決定
  4. 所得割額に、全員一律で加算される均等割額(東京都の場合4000円)を足した合計が、住民税納付税額

個人住民税の所得割額の計算の流れ4/8

個人住民税の所得割額の計算の流れ

出所:東京都主税局「個人住民税」

決定された住民税額は、翌年の6月から12ヶ月で年金から天引きされて徴収が行われます。

1.3 健康保険料

年金から天引きされる1つ目の社会保険料が健康保険料です。

70歳以上の年金受給者は、原則として国民健康保険に加入することになります。国民健康保険料(75歳以上は後期高齢者医療保険料)に加入をすることで、市区町村より健康保険証が交付されて診療などを受けることができるようになります。国民健康保険料の計算も市区町村により行われるため、住民税と同様にその計算方法は居住する場所により異なる場合があります。

【健康保険料の計算方法(国民健康保険料の場合)】

  1. 前年の年間収入(年金その他の合計)から、公的年金等控除等の控除額を差し引いて課税所得を算出
  2. 保険料算定基礎額に「医療分」「支援分」「介護分」それぞれの保険料率を乗じて保険料を算出
  3. 上記2で計算された所得割額と、全員一律に課される均等割額(医療分・支援分・介護分)を足した合計により、納付保険料額が決定

2024年度の国民健康保険料の計算方法5/8

2024年度の国民健康保険料の計算方法

出所:江戸川区「国民健康保険料の計算方法」

※保険料率や詳細な計算方法は地域によって異なります

1.4 介護保険料

年金から天引きされる2つ目の社会保険料が、介護保険料です。

65歳以上の人は、原則として介護保険の第1号被保険者となり、自身で介護保険料を負担する義務が生じます。一定額以上の年金を受給している場合には、年金から介護保険料が天引きされます。保険料の決定は市区町村により行われるため、居住する場所により計算方法や段階ごとの保険料は異なる場合があります。

【介護保険料の計算方法】

  1. 前年の課税所得に応じて、適用される所得段階を判定
  2. 該当する所得段階の保険料にて、介護保険料の年額が決定

65歳以上の方の介護保険料の決め方6/8

65歳以上の方の介護保険料の決め方

出所:練馬区「65歳以上の方の介護保険料の決め方」

2. 年金から税金や保険料が控除されない人とは?

ここまで年金から控除される4種類の税金・保険料について説明をしましたが、年金受給者のうち、一定の条件を満たさない人は、これらの金額が天引きされることはありません。

条件については、基本的に年金の受給金額が一定額を超えるかどうかによりますが、その基準額は所得税・住民税・健康保険料・介護保険料でそれぞれ異なります。

年金から天引きされない場合、それらの納付が免除されるわけではありません。非課税ではない限り、住民税・健康保険料・介護保険料は普通徴収として自ら納付の必要があり、所得税は確定申告をして納める必要があります。

3. おわりに

受給する年金額からは、所得税、住民税、健康保険料、介護保険料の4つの金額が天引きされます。これらの税金や社会保険料は、地域により計算方法に差はありますが、基本的に年金受給者の所得によって計算されます。

年金受給額の計算をする際は、これらの天引き項目を理解し、自身の受給額からどの程度の手取りがあるのかを把握することが大切です。

税率や保険料額などは定期的に改正もあるため、最新の情報を確認することも重要です。必要に応じて専門家に相談することで、より詳細な情報や個別のアドバイスを得ることができます。

参考資料

斎藤 彩菜