キーエンスは好調な2019年3月期Q1決算を発表
Phonlamai Photo/Shutterstock.com
センサー大手のキーエンスは2018年8月1日に2019年3月期Q1(4-6月期)決算を発表。対前年同期比で増収増益の決算となった。同社決算短信をもとに決算内容を振り返っていきたい。
キーエンスの2019年3月期Q1の主な決算内容
2019年3月期Q1決算は、売上高は対前年同期比で+20%増、営業利益は同+21%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は同+17%増という着地。尚、Q1決算発表時点で会社による連結業績予想の見通しの発表はない。
会社による連結業績予想はないものの、アナリストの予想平均値であるIFISコンセンサスによれば、2019年3月期通期の売上高予想は対前年度比+15%増、営業利益は同+17%増ということで、残り9か月を残してはいるが、このままのペースでいけばコンセンサス程度の水準には達しそうだ。
同社の当Q1の粗利益率は82%、また営業利益率は55%と、製造業ではありながらも驚異的な利益率である。もっとも同社のビジネスモデルはコンサルティング営業を強みとし、ファブレスとして外部の生産ラインを活用するモデルが高収益を実現している。
キーエンスの財務内容はどうか
キーエンスの総資産は2019年6月20日時点で約1.5兆円。そのうち株主資本は約1.4兆円もあり、バランスシートは非常に強固だ。資産の内容を見ていくと、現金及び預金が約4453億円、有価証券が4125億円、また投資有価証券も3911億円ある。
株式市場から見れば、蓄積されたキャッシュをどのように活用していくのか、それによってROEがどのように改善していくのか、という点に注目が集まろうが、着実に利益を伸ばし続ける同社マネジメントにはおいそれと注文を言いにくいというのが実際というところであろう。
キーエンスの今後の注目点
同社が取り扱う産業向けセンサーは生産設備における自動化の流れでは必要不可欠な商品であろう。とはいえ、国内だけではなく海外における設備投資サイクルをどのように乗りこなしていくのかに今後も注目が集まろう。
余談だが、キーエンスの時価総額は2019年8月1日終値ベースで約7.3兆円であるが、同じ電機セクターであるソニーの時価総額は約7.7兆円である。ソニーは業績好調で足元株価が上昇している。ソニーの時価総額の方がまだ大きいが、キーエンスの時価総額がここまで大きくなっているということに驚く方も少なくないであろう。
泉田 良輔
執筆者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役、株式会社モニクルフィナンシャル取締役も務める。東京工業大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2024年8月27日