2.3 デメリット3:インフレリスクへの対応が難しくなる

支給される年金額は、世の中の物価変動に合わせて随時調整することとなっていますが、マクロ経済スライドという制度により、実際の物価上昇に完全に連動するわけではありません。

マクロ経済スライドは、物価上昇の際に連動して増加する年金給付額を抑制するための仕組みであり、それにより物価上昇よりも年金額の増額調整幅が抑えられることになります。

マクロ経済スライドの概要

マクロ経済スライドの概要

出所:日本年金機構「マクロ経済スライド」

現在の日本はインフレの流れが強くなっていますが、今後もインフレが進んだ場合、繰下げをすることによりその影響を大きく受けやすくなることが考えられます。

そのため、早めに年金の受給を開始して、自分自身でインフレリスクに備えた資産運用をしようと考えた場合には、繰下げ受給の選択をしないことが考えられます。

2.4 デメリット4: 税金や保険料の負担が増える可能性がある

繰下げ受給によって年金額が増えると、所得税や住民税、国民健康保険料などの負担が増える可能性があります。

これらは所得に応じて税率や税額、保険料額が変動するため、受給年金額が増えて年間の所得が増加することにより、支払わなくてはいけない金額も増えるためです。

また、高額療養費制度の自己負担限度額や介護保険料なども、所得に応じて変動します。

繰下げ受給によって年金の受給額は増えますが、同様に控除される税金や保険料の額も高くなり、結果として手取りの年金額が思ったほど増えないというケースも考えられます。

そういった年金や保険料の綿密な計算をすることは難しいため、原則的な受給開始年齢を選択する人も多いのではないかと考えられます。