4. 公的年金だけでは足りない場合の対処法
単身世帯では月15万円の年金受給が生活していく上での必要最低限のラインといえるでしょう。今後、物価が上昇していけば、必要になる年金額はさらに増えます。
そこで、老後の生活に困らないよう、今からできる対策をお伝えします。
4.1 年金額を増やす
公的年金以外に、企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)、民間の個人年金保険などを利用して老後に受け取れる年金額を増やしておきましょう。国民年金第1号被保険者は「付加年金」で年金の上乗せができます。
iDeCoは誰でも利用でき、税制上のメリットが大きいため、早めに加入しておくと、長い期間、掛金分の所得控除を受けられるのでおすすめです。
4.2 貯蓄を増やす
老後に年金だけでは足りない場合、貯蓄を取り崩して生活することになるでしょう。その際、NISAを利用して老後資金を作っておけば、資産寿命を延ばすことができます。
これはどういうことかというと、新NISAは期限がないため、運用を続けながら少しずつ取り崩して老後の生活費に充てることができるためです。
たとえば、2000万円を65歳から月10万円ずつ取り崩すとすると、何も運用をしなければ、81歳7か月で資金が尽きてしまいます。
しかし、NISAで年率3%の運用ができれば、88歳1か月まで資産の寿命を延ばすことができます。
4.3 老後も長く働く
老後も長く働くことで、足りない年金分を補うことができます。
65歳以降、厚生年金を受給しながら、仕事を続けて厚生年金の被保険者となれば、支給停止となる基準を超えない限り、給料と年金を全額受け取ることができ、さらに年金額を増やすことができます(在職老齢年金)。
また、給料だけで生活できる場合は、年金の繰下げ受給を検討してみてもいいでしょう。
66歳から75歳まで繰下げることができ、増額率0.7%が繰下げた月数分増額されます(最大42%)。増額された年金は生涯にわたって続きます。
5. まとめにかえて
今後、単身世帯が増えていく状況で、おひとりさまの老後は“ありきたり”になっていくでしょう。
健康であれば働き続けることができますが、働けなくなったとき、介護が必要になったときには、年金や貯蓄がものをいいます。今からできることを少しずつ始めておけば、老後の安心感につながるでしょう。
参考資料
- 『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(令和6(2024)年推計)|国立社会保障・人口問題研究所
- 総務省「家計調査報告 家計収支編2023年平均結果の概要」
- 総務省「家計調査/家計収支編 単身世帯 2023年/表番号6」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
石倉 博子