いっとき、老後2000万円問題が話題になりましたが、実は今では2000万円以上に不足する人もいると言われています。
物価上昇や年金問題などが影響し、当時の予想とは異なる形で状況が目まぐるしく変化しています。
また、厚生労働省が今年公表した令和5年簡易生命表によると、日本人男性の平均寿命は81.09年、女性の平均寿命は87.14年となり、「人生100年時代」「長生きの時代」と言われています。
老後生活が長くなるということは、その分必要な生活費も増えていくということです。
このような時代の中で、老後の生活に不安を感じている人は日々増えています。
実際に筆者も、資産運用アドバイザーとして多くの相談を受けていますが、そのほとんどが「老後資金の不安」です。
しかし、この老後に対する不安はその多くが漠然としたものであり、自分に今できることは何なのか理解できている方は正直少ないと感じます。
そこで本記事では、老後を迎えた70歳代世帯の貯蓄額にフォーカスしていきます。
老後生活がスタートしている方の貯蓄額を一つの目安として、どんな準備をしていったらいいのか紐解いていきましょう。
貯蓄だけで十分に老後生活を備えられている世帯はどのくらいいるのでしょうか。
1. 「貯蓄が3000万円以上ある」70歳代世帯は19.7%
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」では、「二人以上世帯」と「単身世帯」のお金に関する調査を「インターネットモニター調査」により実施し、公表資料を毎年公表しています。
こちらをもとに、70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を確認していきましょう。
1.1 【70歳代・夫婦世帯(二人以上世帯)の平均貯蓄額】
- 平均値:1757万円
- 中央値:700万円
1.2 【貯蓄額一覧表】70歳代・夫婦世帯の貯蓄割合
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
70歳代の二人以上世帯において貯蓄額の平均は1757万円。そして、貯蓄が3000万円以上ある世帯は全体の19.7%であることがわかりました。
「70歳代は退職金を受け取り、また十分な年金で豊かな老後を過ごしているのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、実際の貯蓄状況は二極化しています。
実際に、より実態に近いとされる「貯蓄の中央値」は700万円です。
「貯蓄が全くない世帯」が19.2%、「貯蓄500万円未満の世帯」も22.2%も存在していることから、生活が苦しい世帯も少なくないことがうかがえます。
次章では、2024年度の年金額や、国民年金と厚生年金の受給額について詳しく見ていきましょう。