はじめに
セクハラやパワハラを始めとするハラスメントが、1つの社会問題になっています。テレビのニュースなどでも頻繁に取り上げられる、このハラスメント。「職場が舞台になっていることが多いようだけれど、一体何?」と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、代表的なハラスメントを幾つかご紹介しながら、ハラスメントがもたらす企業へのリスクや、対策について解説していきます。
目次
1. ハラスメントとはどんな行為?
2. 職場で多く見られる「パワーハラスメント」
3. 男女間に多い「セクシュアルハラスメント」
4. パワハラやセクハラ以外にもハラスメントの種類がある!
5. ハラスメントのリスクとは?
6. ハラスメント問題の解決に向けて必要な対策は?
7. ハラスメントが起こらないような職場をつくろう!
1. ハラスメントとはどんな行為?
ハラスメントとは、相手を不快にさせるような言動をする、言葉や行動で尊厳を傷つけるという行為を指します。また、相手が不利になるようなことをする、言動で脅威を与えるといったこともハラスメントに含まれます。嫌がらせやいじめの流れで行われることが多いようですが、最近の事例では、無意識、無自覚でこのような言動をとってしまった場合も、結果的に相手に精神的な苦痛を与えていれば、ハラスメントとして成立するケースも多くなっているようです。
ハラスメントの大きな特徴のひとつとして、「相手が不快に感じれば、ハラスメントは成立する。」という点があげられます。このため、ハラスメントを行ったとされる当人が「そんなつもりでやったのではない」と後から否定しても、簡単には糾弾を逃れることができません。しかし、同じ言動をしても人によって受け止め方が違うケースもあり、その行為がハラスメントに該当するかどうかの判断が難しい時もあります。
職場で起こることが多いハラスメントですが、最近では、学校や病院、家庭といった場所でも、よく聞くようになってきました。教師と生徒、医師と患者、夫と妻など、お互いの立場に上下関係が発生しやすい人間同士の間では、とくに起こりやすい現象といえるからでしょう。
ハラスメントは個人の感覚にも左右されるため、明確に定義づけをするのが難しいケースもあります。このため、被害を受けた当事者がその行為をどう捉えるかが、ハラスメント成立の1つの基準になるといえるのではないでしょうか。
2. 職場で多く見られる「パワーハラスメント」
職場の上司と部下の間で多いのが、パワーハラスメント(パワハラ)です。このパワハラで多く見られるのは、次のような行為です。
身体的な暴力を振るう
仕事中に、指導などと称して相手を殴る、蹴る、胸倉をつかむといった暴力的な行為を行うことは、パワハラに該当します。
言葉の暴力で相手を傷つける
相手が仕事で失敗したときに、相手の尊厳を傷つけるような暴言を吐く、皆の前で大声で叱責するといった行動も、パワハラではよく見られるケースです。
過大要求、過少要求をする
常識的に考えて到底達成できないようなノルマを課すといった過大要求、ごく簡単な仕事しか与えないなどの過少要求も、職場におけるパワハラの典型的なケースといえます。
仲間はずれにするなど、人間関係からの切り離し
飲み会や社員旅行などに1人だけ誘わないよう指示するなどの行為もパワハラが成立するケースになります。
プライバシーを侵害する
職場内で、個人の私生活に立ち入るような言動をして、プライバシーを侵す行為もパワハラといえます。
本来の業務の範囲を超えて、相手に身体的、精神的な苦痛を与えるパワハラ。職場でのポジションの違いなど、人間関係における優位性を背景として行われるのが、大きな特徴といえるでしょう。
3. 男女間に多い「セクシュアルハラスメント」
男性と女性がともに働く職場内で発生しやすいのがセクシュアルハラスメント(セクハラ)です。
体を触る
女性の胸やお尻などはもってのほかですが、肩に手を置く、頭をぽんぽんとするという行為も、触られた相手が何らかの不快感をもっていれば、立派なセクハラとなります。これは、親しみをこめて行ったつもりであっても同じです。
身体的なことを話題にしてからかう
「胸が大きい/小さい」「太っている/痩せている」など、相手が嫌がる身体的な話題を持ち出すこともセクハラとなります。
執拗に交際を強要する/交際を拒絶した相手に仕事で嫌がらせをする
上司から部下に対してなど、職務上の立場を利用して交際を強要する行為は、セクハラとして成立します。また、交際を断られた相手に、仕事上での嫌がらせをすることもセクハラとなります。なお、これらの行為は、パワハラもあわせて認定されることが多いケースのようです。
結婚や恋愛について立ち入った質問をする
仕事に全く関係がないのに、「付き合っている人はいるの?」「結婚はまだ?」などとプライベートに立ち入った質問をすることも、相手が不快に思えば、セクハラになる可能性が高いといえます。
性的な面で、相手に不快感を与えるセクハラ。圧倒的に多いのは、男性から女性に対して行われるケースですが、このようなセクハラは、業務に少なからず悪影響を与えるということで、相談窓口を設けるなど、1人で悩まずに済むよう、本腰を入れて対策を進める職場が増えているようです。
4. パワハラやセクハラ以外にもハラスメントの種類がある!
ハラスメントの種類は、パワハラやセクハラだけではありません。他にも、次のようなハラスメントがあります。
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルに反するような言動をして、相手に精神的な苦痛を与えるハラスメントです。言葉による攻撃はもちろんですが、身振りや態度による攻撃も、その対象となります。
このモラルハラスメントも、職場では多く見られるハラスメント。パワーハラスメント(パワハラ)と少し似ている部分がありますが、パワハラは、立場に上下関係のある間柄で起きるのに対し、モラルハラスメントの場合はお互いの立場に関係なく起こるという特徴があります。相手を精神的に追い詰めて、辞職に追い込むといった行為も、モラルハラスメントの一例といえるでしょう。
マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠中や育児中の女性に対して行われる「産休を取得しようとしているスタッフに対して嫌がらせをする。」「妊娠した途端、正当な理由なく解雇を言い渡された。」などの行為を指します。
ドクターハラスメント(ドクハラ)
病院の医師が患者に対して行うハラスメントです。患者を傷つける言葉を投げかけるなどは、この典型的パターンになります。
アルコールハラスメント
主に宴会などお酒を伴う席における不快な行為を指します。無理に飲酒を勧める、意図的に酔いつぶす、酔って絡むといった行為がこれにあたります。
5. ハラスメントのリスクとは?
ハラスメントは、企業にとってもリスクのひとつといわれています。というのも、こういったハラスメントが企業内で起こることで、いろいろな面で不利益が発生するからです。例えば、2005年の中央労働災害防止協会の報告によると、以下のリスクがあることが明らかになっています。
- 社員の心の健康を害する。
- 職場風土を悪くする。
このように、1人に対して行った行為であっても、職場全体の雰囲気に影響を与えてしまいかねないのが、ハラスメントの問題点といえるでしょう。
他にも、次のようなリスクもあります。
- 本人のみならず、まわりの士気が低下する。
- 職場の生産性を低下させる。
- 十分に能力が発揮できない。
- 優秀な人材が流出してしまう。
職場環境が悪いと、スタッフの働く意欲に影響を与えるだけでなく、場合によっては離職者を増やしてしまう可能性も出てきます。キャリアのある優秀な人材が他社に転職してしまえば、企業としても大きな損失を被ることになります。また、ハラスメントの被害者が、うつ病などに罹患して労災認定された場合には、企業の社会的な評判にも傷がつくことになります。
6. ハラスメント問題の解決に向けて必要な対策は?
万が一、職場内でハラスメントが起きたら、まずはマネージャーなど管理職の立場の人が状況を正確に把握することが必要になるでしょう。加害者と被害者の双方から話を聞き、客観的な立場から状況を判断していくのが理想的です。このとき、対応を迅速に行うためにも、マネージャーなどの管理職の立場の人が、予めハラスメントについてしっかりと理解している必要があります。
ハラスメントが起こる原因のひとつとして、「加害者と被害者の間の認識のギャップ」があげられます。以後同じような問題が起きないように予防策を講じるためにも、双方のギャップを埋めていくことが、問題解決の1つのアプローチになると考えられています。
なお、このようなアプローチに役立つと考えられているのが、例えば画像などの映像を利用して、ハラスメントのイメージを共有していくという方法です。認識のギャップがある場合、口頭のコミュニケーションだけでは、なかなかハラスメントの具体的なイメージを共有できませんが、画像などの映像で実際のハラスメントの状況を伝えることで、認識のギャップが少なくなる可能性があります。
また、このように画像を使う方法は、態度や身振りなど、認識にギャップが生じやすい問題行動を正しく理解してもらうためにも役立ちます。ハラスメントの具体例をストーリー仕立てで紹介するといった内容であれば、マネージャーなどの管理職の立場の人だけではなく、スタッフ全体がハラスメントを正しく理解することが期待できます。
7. ハラスメントが起こらないような職場をつくろう!
社会問題となっているハラスメントについては、職場でも早急に対策を立てるべきだという考えが一般的となっています。ここで、2007年に日本産業カウンセラー協会が行ったアンケート調査によれば、以下の方法が、ハラスメントの予防策として有効と考えられているようです。
1位:管理職研修を含む企業内教育
ハラスメントを予防するには、まず管理職の立場にある人間が、正しい知識を身につけるべきと考えている人が多いようです。
2位:成果主義等の改善による職場のゆとり回復
パワハラ、モラルハラスメントなどは、職場環境の悪さが影響していることが多いものです。というのも、厳しいノルマを常に求められているなど、スタッフに精神的なゆとりがない職場の場合は、雰囲気も悪くなりがちだからです。このため、仕事の評価方法を変えて、ゆとりを生み出していくということもハラスメントの予防に役立つ方法と考えている人も次いで多いようです。
ハラスメントが起きないようにするためには、職場の雰囲気から変えていくことが1つの対策になるのかもしれません。なお、万が一ハラスメントが起きた場合に備えて、専門の委員会を作っておくなど、すぐに解決に向けて動くことができる態勢を整えておくことも大切といえるでしょう。
おわりに
職場におけるハラスメント問題は、決して少なくありません。パワハラやセクハラなど様々なハラスメントの内容を、スタッフひとりひとりが正しく理解し、意識を高めておくことが、予防のための第一歩になるでしょう。また、すでにハラスメント問題を経験した企業において、現在ハラスメントがどのように受け止められているか、その後の対策はどうしているのかといったことを学んでおくと、大きな問題に発展する前に手を打つことができるかもしれません。
関連記事
モラハラとパワハラの違いって?被害者の感じ方や退職後のトラウマについて
スメハラ被害者が声を上げられないのはなぜ?スメル・ハラスメントも社会問題化するのか
柔軟剤の匂いで頭痛、「香害」の被害者は6割にも?ビジネス、今日のひとネタ
LIMO編集部