厚生労働省は7月3日、5年に1度行われる年金制度の「財政検証」の結果を発表しました。
財務検証とは、公的年金財政の定期健康診断に当たるものです。最新の人口や経済の状況を反映した、長期にわたる財政収支の見通しを作成しています。
筆者のもとに相談に来る方の中には、「私の世代だと、年金をもらえない可能性もありますよね」と言う方がよくいます。
年金制度は長期に渡って持続できるように考えられているので、年金がまったくなくなることは考えにくいでしょう。
しかしながら今回の検証結果でも、年金額が2割程度目減りするケースも考えられるという試算が出ており、私たち自身の資産形成の自助努力が求められています。
本記事では、2024年5月17日に公表された最新資料より、65歳以上の無職世帯の貯蓄事情とシニア世代の家計収支をご覧いただきます。ご自身の老後資金準備の参考にしてみてください。
1. 世帯主が65歳以上の「無職二人以上世帯」平均貯蓄額はどのくらい?推移もチェック
総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、65歳以上で無職の二人以上世帯の平均貯蓄額は2504万円となっています。
過去5年間の平均貯蓄額の推移は以下のとおりです。
【過去5年間の平均貯蓄額の推移】
- 2018年:2233万円
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
2018年から貯蓄額は緩やかに増加し、2023年には過去最高額を記録。
2019年に「老後2000万円問題」が話題となったことで、多くの人が老後のための貯蓄に対する意識が高まったのではないかとうかがえます。
なお、最近では銀行預金以外の方法で資産を蓄える人も増えてきていますが、具体的に保有資産の内訳はどのようになっているのでしょうか。
1.1 世帯主が65歳以上の「無職二人以上世帯」の保有資産の内訳を確認
合計:2504万円
- 有価証券:480万円
- 生命保険など:413万円
- 定期性預貯金:846万円
- 通貨性預貯金:754万円
- 金融機関外:11万円
有価証券は480万円で、前年比+80万円と大幅に増加しています。
また、通貨性預貯金も754万円で前年比+55万円増加しましたが、定期性預貯金は846万円と前年と比べて19万円減少しています。
NISAやiDeCoの認知度が年々高まっていることを考慮すると、今後も預貯金から投資へのシフトがさらに進むことが予想されます。
ここまで無職世帯の貯蓄額について紹介してきましたが、次章では65歳以上の「働くシニア世帯を含む」世帯の貯蓄状況について考察していきます。