筆者はファイナンシャルアドバイザーとして勤務していますが、普段、様々なお客様から資産運用や保険の見直しについてなど、お金に関わることの相談を幅広く受けています。
そんな中、相談の中で最も多いのが「将来、年金を受け取れるかわからない」「自分自身で老後の資産を作りたい」といったものです。
昨今では、新NISAやiDeCoなど国が用意した制度を用いて資産運用をする方がとても増えてきています。
しかし、8月5日に日経平均株価が大きく下落し、相場への不安感が高まりました。このような大きな下落は新NISAの投資信託にも影響があり、資産運用について不安を感じたというお客様も多くいました。
今回のような下落は今後も発生する可能性があります。ただしそうなったときでも安心して老後の生活を送るために、老後の資産形成は計画的に進めていくということが大切なポイントになっています。
計画的に老後の資産を築き上げるためには、自分自身がどのような老後の生活を送りたいかをイメージするといいでしょう。
今回は、自分自身の老後の生活をイメージしやすくするために、現在年金を受給している人たちの生活はどのような水準なのかを見ていきましょう。
また、最後には安定的な老後の資産を作るためのポイントについても解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
1. 高齢者世帯の約59%が「生活が苦しい」
厚生労働省の2023年時点の生活意識の調査によると、高齢者世帯の約59%が生活が「大変苦しい」もしくは「やや苦しい」と答えています。
1.1 全世帯の結果
- 大変苦しい:26.5%(前回20.2%)
- やや苦しい:33.1%(前回31.0%)
- 普通:35.8%(前回42.1%)
- ややゆとりがある:3.9%(前回5.5%)
- 大変ゆとりがある:0.7%(前回1.1%)
1.2 うち児童のいる世帯の結果
- 大変苦しい:28.5%(前回22.9%)
- やや苦しい:36.5%(前回31.7%)
- 普通:31.5%(前回39.0%)
- ややゆとりがある:3.1%(前回5.4%)
- 大変ゆとりがある:0.4%(前回0.9%)
1.3 高齢者世帯の結果
- 大変苦しい:26.4%(前回18.1%)
- やや苦しい:32.6%(前回30.2%)
- 普通:36.7%(前回45.1%)
- ややゆとりがある:3.9%(前回2.5%)
- 大変ゆとりがある:0.4%(前回0.8%)
高齢者の生活が苦しくなっている主な要因は、物価の上昇と年金制度の問題が挙げられます。
特に食品や光熱費が高騰し、年金だけでは賄えなくなってきており、これに加えて医療費や介護費用の増加も家計を圧迫しています。年金額については毎年度改定されていますが、増額分が物価や賃金の上昇に追いつかないため、実質的には目減りとなっています。
では、現代シニアは年金をいくらほど受給しているのでしょうか。次の章では、年金の平均受給額についてみていきます。
2. 厚生年金・国民年金は月額いくら受給できる?平均年金月額をチェック
厚生労働省が公表する令和4年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額は月14万5000円ほどです。
2.1 厚生年金の平均月額
受給額が大きく伸びることがない昨今では、物価上昇に年金の増額率が追いつかず、実質的な目減りが続いています。
2.2 国民年金の平均月額
国民年金の平均受給額は次のとおりです。
- 注1.新法基礎年金について老齢基礎年金の受給資格期間を原則として 25 年以上有するものは「老齢年金・25 年以上」に、それ以外のものは「通算老齢年金・25 年未満」に計上している。
- 注2.( )内は、基礎のみ・旧国年の受給者について再掲したものである。ここで「基礎のみ」とは、同一の年金種別の厚生年金保険(第1号)(旧共済組合を除く)の受給権を有しない基礎年金受給者をいう。
- 注3.[ ]内は、基礎のみ共済なし・旧国年の受給者について再掲したものである。ここで「基礎のみ共済なし」とは「基礎のみ」の受給者のうち、共済組合等の組合員等たる厚生年金保険の被保険者期間(平成 27 年9月以前の共済組合等の組合員等の期間を含む)を有しない受給者をいう。
厚生年金と国民年金の平均月額は、それぞれの加入者の働き方や保険料の支払い状況によって異なりますが、厚生年金の平均月額は約14万円、国民年金の平均月額は約5万円です。これらの額はあくまで平均であり、実際には個々の年金額には大きな差があります。
食品や光熱費の高騰が続く中で、厚生年金の約14万円でも生活費を賄うのは簡単ではないでしょう。さらに、国民年金の約5万円では、日常的な支出をまかなうことは難しいと考えられます。
また、高齢者は年齢とともに健康への課題が増えるため、医療や介護にかかる費用が大きくなりがちです。年金額が生活費や医療・介護費用の増加に十分に対応できないため、年金だけで生活するのは困難であるケースがほとんどです。
政府は、生活が苦しい年金世帯に向けて「年金生活者支援給付金」を支給しています。
次章では年金生活者支援給付金について、支給金額や対象者などを解説します。
3. 政府から年金生活者への給付金「年金生活者支援給付金」とは
年金生活者支援給付金は、老齢年金、障害年金、遺族年金の受給者に対して支給される給付金です。
3.1 老齢年金生活者支援給付金の対象者と給付額
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が87万8900円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 77万8900円を超え87万8900円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金は、保険料納付済期間と免除期間に基づいて支給額を算出します。
給付額
- 保険料納付済期間に基づく額(月額)= 5310円 × 保険料納付済期間/被保険者月数480月
- 保険料免除期間に基づく額(月額)= 1万1333円 × 保険料免除期間/被保険者月数480月
3.2 障害年金生活者支援給付金の対象者と給付額
- 障害基礎年金の受給者
- 前年の所得(※1)が472万1000円(※2)以下
※1 障害年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※2 扶養親族等の数に応じて増額
給付額
- 障害等級2級:月額5310円
- 障害等級1級:月額6638円
3.3 遺族年金生活者支援給付金の対象者と給付額
- 遺族基礎年金の受給者
- 前年の所得(※1)が472万1000円(※2)以下
※1 遺族年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※2 扶養親族等の数に応じて増額
給付額
- 月額5310円
※2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5310円を子の数で割った金額をそれぞれに支給する
なおこちらの年金生活者支援給付金には基準額はあるものの、実際の受給額には個人差がある点に留意してください。仮に月額5310円を受給する場合、年間で約6万円が年金に上乗せされる可能性があります。
年金だけで生活するのが難しいシニアにとって、ありがたい制度となるでしょう。次章では、申請方法を解説します。
4. 「年金生活者支援給付金」の申請方法
年金生活者支援給付金の申請は、以下の手順で行います。
4.1 老齢基礎年金を新規で請求する人
65歳になる3ヵ月前に、老齢基礎年金の請求書と併せて給付金請求書が入った封筒が送られてきます。
同封の給付金請求書に記載事項を記入して、老齢基礎年金の請求書とあわせて提出しましょう。
4.2 すでに年金を受給している人
すでに年金を受給している人が所得の減少によって対象者になった場合は、9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書」が送られてきます。
同封のはがき(給付金請求書)に必要事項を記入して、郵便ポストに投函しましょう。
年金生活者支援給付金を受け取っている方で引き続き支給要件を満たしている場合、いちど手続きすると翌年以降の手続きは原則不要です。
ただし、支給要件を満たさなくなったことにより、年金生活者支援給付金を受け取ることができなくなった方が、その後、再び支給要件を満たして年金生活者支援給付金の支給を受ける場合は、あらためて請求の手続きが必要となりますので注意してください。
なお、年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づいて継続支給の判定が行われます。継続支給の判定結果は、毎年10月分(12月支払)から1年間反映されます。
次章では、ファイナンシャルアドバイザーの視点から老後生活に向けた資産形成について、アドバイスをお送りしたいと思います。
5. 老後に向けた資産をつくるにはどうする?FPが考えてみた
ここまで、現在の年金受給者の生活の水準について確認してきました。
老後の生活をしている人の半数以上が「生活が苦しい」と感じていることから、将来私たちの老後の生活も事前に用意をしていなければ同じく苦しい生活になってしまうかもしれません。
では、安定的に老後の資産を用意するためにどのようにしたらいいのかというと、それは「分散」です。資産運用経験者はもしかしたら、この「分散」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
老後資産を形成するためには、資産を分散させることが重要です。資産分散とは、投資先や資産の種類を複数に分けることで、リスクを軽減し、安定した資産形成を目指す手法です。
例えば、株式、債券、不動産、預金などに分散投資することで、特定の市場や資産の変動による影響を抑えることができます。
資産を一つの場所に集中させると、特定の投資が不調に陥った場合、全体の資産に大きなダメージを与える可能性があります。しかし、分散投資をすることで、リスクを複数の資産に分散し、個々の資産のパフォーマンスが悪くても他の資産で補うことができます。
これにより、資産の安定性を高め、老後の生活資金を確保するための基盤を築くことができるというわけです。資産分散は、長期的に見てリスク管理と安定性を提供し、老後の生活を支えるために欠かせない戦略となっています。老後のための資産形成について、気になる方はまずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「令和4年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況 」」
- 総務省統計局「2023年(令和5年) 家計の概要」
筒井 亮鳳