3. お金が必要となった場合の対処法はあるのか?
葬儀資金など、まとまったお金が必要となるケースがあるかもしれません。その場合、どのような対処法があるのでしょうか。
「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」があるので、解説します。
3.1 遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは
遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは、遺産分割前であってもある一定の金額まで引き出せる制度で、民法改正に伴い、2019(令和元)年7月1日に施行されました。
遺産分割前の相続預金の払戻し制度には、2つの払戻し制度があります。
- 家庭裁判所の判断により払戻しができる制度
- 家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度
銀行での払戻しは、家庭裁判所の判断を経ないので、ここでは後者の家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度について解説します。
3.2 家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度の内容
家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から単独で払戻しを行う場合、各相続人は相続預金のうち、次の計算式で求められます。
払戻しが可能な金額=相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
具体例として、法定相続人が3名(長男・長女・次女)で、相続開始時の預金額が900万円の場合、以下のように算出されます。
長男が単独で払戻しできる金額=900万円×1/3×1/3=100万円
ただし、同一金融機関で、複数の支店に相続預金がある場合、150万円が払戻しの上限となります。
3.3 制度利用に際しての必要書類
遺産分割前の相続預金の払戻し制度を利用する場合、本人確認書類以外、おおむね以下の書類が必要です。詳しくは、利用金融機関に問い合わせましょう。
- 被相続人(死亡した人)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 預金の払戻しを希望する人の印鑑証明書
4. まとめ
死亡届を出した人の銀行口座からお金を引き出すことは、相続人どうしのトラブルだけでなく、相続放棄ができなくなる恐れがあるので、引き出さないことを推奨します。
どうしてもお金が必要な場合、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を利用することで、一定金額の払戻しが可能です。
死亡届を出したら、速やかに取引金融機関にその旨を伝え、銀行口座からお金を引き出さずに相続人間で話し合い、円満な遺産相続を心がけましょう。
参考資料
宮本 建一