寄付額は年々増加。初の100億円超えの自治体も登場

総務省は2018年7月6日、2017年度のふるさと納税に関する調査を発表しました。それによると、寄付総額は3653億円と5年連続で過去最高を更新し、16年度比で28%も増えています。

もっとも寄付金が多かったのは大阪府の泉佐野市で、17年度の寄付額は135億3000万円あまりでした。以下、2位・宮崎県都農町(79.1億円)、3位・宮崎県都城市(74.7億円)、4位・佐賀県みやき町(72.2億円)、5位・佐賀県上峰町(66.7億円)などが続いています。

注目すべきはトップの泉佐野市です。同市の16年度の寄付額は34.8億円で、順位は全国8位でした。17年度はその約4倍に伸ばすととともに、例年70億円台だったトップグループを一気に抜き去り、首位に躍り出ました。1年で100億円を超えたのも同市が初めてです。

背景にはやはり、返礼品の充実があります。泉佐野市では返礼品の品揃えを16年度より300種類以上増やし、1000種類以上としました。泉佐野市は返礼率が高いのも特長です。

総務省は17年4月、金券や家電など換金しやすい返礼品や高額すぎる商品の提供を控えるよう自治体に通知しました。返礼金の調達額も寄付金の3割以下にするように求めました。

これを受けて、多くの自治体が見直しに動きましたが、返礼率が高い自治体もまだあります。泉佐野市の17年度の返礼率も約4割でした。ただし、同市では18年度以降は返礼率を3割以下にする予定です。

地方税収入が限られる自治体にとっては貴重な財源

ふるさと納税は本来、自分の出身地などを応援するための制度です。2008年に始まり10年目を迎えました。寄付金額は、導入当初5年間ほどは500億円程度だったのですが、ここ最近で一気に伸びています。

それが、出身地など地域の自治体を応援するという本来の趣旨につながっていればいいのですが、実際には、ふるさと納税は、その意図とは別に、返礼品競争によって成長してきました。

多くの自治体から寄付額に応じた返礼品も受け取れることから、これを目当てにした寄付が急増したのです。寄付額の5割以上の価格の返礼品を出す自治体も珍しくありませんでした。中には、1万円寄付した場合、市内で使える7000円分の商品券がもらえるという自治体もありました。

総務省の要請もあって、現在、返礼率は低下傾向にあります。ただし、返礼品をなくすとなると、寄付が減ることは明らかで、なかなか難しいところです。

特に人口減少などで税収が限られている地方の自治体にとっては貴重な収入源となります。たとえば、宮崎県の都城市は、毎年寄付額ランキング上位に入る常連ですが、2016年度の地方税収入は約192億円です。ふるさと納税で集めた74億円は、その4割弱にもあたります。

クラウドファンディング型など使途を明確にしたふるさと納税も登場

前述したように、ふるさと納税の本来の趣旨は地域を応援することです。納税者が寄付先を選択するという点では、その使われ方が重要ですが、返礼品目当ての場合は、使われ方を意識する人は少なかったようです。

一方で、最近になって、ふるさと納税の使途について、地域の実情に応じて創意工夫を図り、明確化することで事業の財源を確保しようとする動きも出てきています。

長野県東御市(とうみし)は、標高約1750メートルの湯の丸高原に国内初の高地トレーニング用プールや関連施設を整備する計画で、そのうちプールの建設費約6億円をふるさと納税で賄う考えです。

大阪府吹田市では、国立循環器病研究センターに入院する小児患者の家族が低廉な料金で宿泊できる「おおさか・すいたハウス」の移転に必要な費用を支援するためにふるさと納税も活用、目標としていた2億円の寄付を達成しました。

このほか、クラウドファンディング型のふるさと納税も登場しています。徳島市は2018年7月10日、阿波おどりの振興を目的にネット上で全国から小口資金を集める「クラウドファンディング型ふるさと納税」の募集を開始しました。

使途を明確にした寄付では、寄付者に対して、寄付金を充当する事業の進捗状況・成果についてきちんと報告されるのが一般的です。地域と寄付者のつながりを深め、地域を応援したいという気持ちをさらに高めることも期待できそうです。

上山 光一