2018年5月10日に行われた、デンカ株式会社2018年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:デンカ株式会社 代表取締役社長 山本学 氏
1. 2017年度決算概要① 前年比(まとめ)
山本学氏:社長の山本です。本日は、当社の2017年度決算説明会に多数(のみなさまに)ご参加いただき、誠にありがとうございます。まず、2017年度の決算概要、2018年度の業績予想など、経営概況についてご説明申し上げたいと思います。それではみなさま、よろしくお願いいたします。
2017年度を振り返りますと、まず期初時点では、電子・先端プロダクツ部門をはじめ、すべてのセグメントで数量増を見込むとともに、クロロプレンゴムやスチレン系製品の価格改定や、スチレンモノマーが非定修年であることなどを、プラス要因として織り込みました。
その一方で、スプレッド縮小、労務費・研究開発費をはじめとした先行投資の継続によるコスト増等を考慮し、予想営業利益を、過去最高となった2015年度と同レベルである300億円としてスタートしました。
それに対して、第1四半期・第2四半期は、クロロプレンゴムや電子・先端製品などが想定どおりに数量を伸ばすとともに、価格面でも、クロロプレンゴムやスチレン系製品の価格改定が進んだことなどから、上期の業績は当初計画を上回りました。
また、下期も、スチレン系製品のスプレッド維持や電子・先端製品の好調の継続が見込まれたことから、2017年11月の時点で、通期営業利益を期初予想の300億円から320億円に上方修正いたしました。その後も販売面での好調が続いたことから、今年(2018年)2月に予想営業利益を10億円増額し、330億円としました。
そして、期末にかけては、為替相場が円高に転じるなど、いくつかマイナス要因もありましたが、2017年度通期業績は、今申し上げた予想を若干上回ることができました。前年に比べて、売上高は3,956億円と、330億円の増収となりました。
収益面でも、営業利益は78億円増益の337億円、経常利益は83億円増益の315億円、当期純利益は49億円増益の230億円となり、いずれも過去最高益を更新することができました。
1. 2017年度決算概要② 前年比(増減要因)
次に、前年比での増減要因をご説明いたします。まず、売上高についてご説明いたします。クロロプレンゴムや電子・先端製品が出荷を伸ばし、数量面で79億円のプラスとなりました。
一方、価格面でも、クロロプレンゴムやスチレン系製品の価格改定が進み、251億円のプラスとなった結果、売上高は3,956億円と、前年比330億円の増収となりました。
1. 2017年度決算概要② 前年比(営業利益 増減要因)
続いて、営業利益について説明いたします。出荷増による大幅なプラスに加えて、先ほど申し上げたクロロプレンゴムやスチレン系製品などのスプレッドの改善・円安効果、スチレンモノマーが非定修年であったことなどから、製造経費・営業費等のコストアップや海外展開・研究開発強化などの先行投資に伴う費用増をカバーすることができ、2017年度の営業利益は337億円と、前年に比べて78億円の大幅増益となりました。
1. 2017年度決算概要③ 前年比(セグメント別概況)
次のスライドで、セグメント別の補足説明をいたします。
スライドの説明に入る前に、アセチレンブラックについて一言申し上げます。(2018年)2月のプレリリースのとおり、当社は本年4月に、高純度導電性アセチレンブラックのセグメントを、従来のエラストマー・機能樹脂から電子・先端プロダクツに移管しました。
当社の電化ブラックは、リチウムイオンバッテリー用正極導電剤をメインの用途として、今後の成長軸になると考えており、自動車・電池モジュールメーカーとのチャネルがあり、技術的知見や市場情報を有する電子・先端プロダクツへの移管により、情報の集約共有化を高めることで、ユーザーワークにおけるシナジーをさらに高めてまいります。以上の点を踏まえ、この比較表も、セグメントを組み替えております。
それでは(スライドの)中身の説明に入りたいと思います。ご覧のとおり、2017年度はセグメントにより、前年比での利益増減の明暗が分かれました。
プラスとなった(セグメントの)1つ目のエラストマー・機能樹脂部門は、クロロプレンゴムの出荷増と価格改定による採算改善により、大幅な増益になりました。
そして先ほど申し上げた、アセチレンブラックを含む電子・先端プロダクツ部門は、半導体向けの溶融シリカや球状アルミナなどの販売数量が大幅に増加し、アセチレンブラックもリチウムイオン電池や高圧送電ケーブル向けの需要が好調で、増収増益となりました。
しかしながら、インフラ・ソーシャルソリューション部門は、アルミナ繊維、農業・土木用コルゲート官の出荷が増加したものの、原材料価格の上昇等のコストアップにより、(前年比)増収減益となりました。
また、生活・環境プロダクツ部門も、食品包装材料は原材料コストアップの改定が進んだものの、対候性フッ素アロイフィルムのDXフィルムは、主力の太陽電池分野での価格競争激化などから減収減益となりました。
さらに、ライフイノベーション部門では、(2017年)11月にお話ししたように、2017年、2018年シーズンは、インフルエンザワクチン製造株の選定遅れに伴い、製造・販売数量が前年を下回りました。それに加え、減価償却費や研究開発費などの先行投資継続によるコスト負担増も加わったため、減収減益となりました。
このように、3セグメントは前年比減益となりましたが、エラストマー・機能樹脂部門と電子・先端プロダクツ部門が好調であったことから、営業利益のトータルとして前年を大きく上回ることができました。
2. 2018年度業績予想① 前年比
続きまして、次のスライドで2018年度の業績予想についてご説明申し上げます。
2018年度は、プラス要因として販売面で2017年度に引き続き、電子・先端プロダクツ部門の需要好調を見ている一方、マイナス要因として原燃料価格上昇や円高の影響、さらにスチレンモノマーの定修や労務費・請負金、その他の固定費アップ、研究開発強化などの先行投資によるコスト負担の増加があります。
こうしたプラスマイナスの要因に加え、製品や事業ごとの需要動向などを精査した結果、2018年度の通期予想は(資料に)記載の通り、売上高は過去最高だった前年度比144億円増収の4,100億円。また利益面でも、営業利益は前年度比23億円増収の360億円。経常利益は(前年度比25億円の)340億円、純利益は(前年度比20億円の)250億円の予想とし、二期連続の最高益更新を目指します。
2. 2018年度業績予想② 前提条件等
業績予想の前提条件につきましては、次の通りです。為替レートは、2017年度平均の1ドル111.3円に対し、2018年度は上期・下期ともに1ドル106.0円としました。また、国産ナフサ価格は、2017年度実績の1キロリットルあたり4万2,200円に対し、今年度は4万6,000円と設定しました。
設備投資につきましては、電化バリューアップにおける投融資計画で、5ヶ年の投融資合計2,000億円のうち、戦略投資には750億円を投入するとしております。これに対して、2018年度はヘルスケア、環境エネルギー分野での成長加速や、革新的プロセスへの投資といった戦略投資の増加を見込むことから、2018年度の予想投資額は310億円としております。
その他の参考数値は、(資料に)記載のとおりです。
2. 2018年度業績予想③ 前年比(増減要因)
次に、収益面での前年対比の増減要因について詳細を申し上げます。
まず、売上高は先ほど申しました通り、電子・先端プロダクツ部門の出荷量が大きく伸長し、さらに化学面でもクロロプレンゴムや、スチレン系製品などの原燃料価格の上昇に応じた価格の改定などで、売上高は前年比144億円増収の4,100億円を見込んでおります。
2. 2018年度業績予想③ 前年比(営業利益増減要因)
そして、今申し上げた数量増効果が70億円と大きく寄与することで、為替影響、スチレンモノマーの定修や研究開発費負担増等をカバーし、営業利益は前年比23億円増の360億円を予想しております。
2. 2018年度業績予想④ 前年比(セグメント別概況)
次のスライドでは、これをセグメント別に説明いたします。
エラストマー・機能樹脂部門から説明いたします。スチレンモノマープラントは、4年連続運転化を目指しており、前回の2016年度の定修の次は2020年度とする計画でしたが、まだ技術的な課題が多少残っていることから、安定操業最優先の観点により、今年(2018年)の夏に定修を行うこととしました。今回の定修実施により、2022年までの4年連続運転を目指します。
また、米国DPE社のクロロプレンゴム事業は、昨年(2017年)の後半から事業収支が大きく還元しましたが、年初の異常低温に伴う凍害の影響で減産となったことが、第1四半期収益を圧迫しました。
こうした要因を踏まえ、当セグメントの売上高は、前年比84億円増収の1,785億円、営業利益は、前年比24億円減益の130億円の予想としました。
次に、インフラソーシャルソリューション部門は、セメントの値上げです。住友大阪セメント社との物流会社設立による合理化メリット、産業廃棄物の受け入れ対象物と処理手数料の見直し等、また特殊混和材の値上げを織り込みました。
これらに、カーバイド生産をしている近江工場の収益効果も加わることから、当セグメントの売上高は24億円増収の555億円、営業利益は18億円増益の20億円と予想しました。
そして、全般的に好調な出荷が継続する見込みの電子・先端プロダクツ部門は、蛍光体に加えて、2018年度は球状アルミナや高信頼性高熱基盤の伸長がけん引役となります。そのため、当セグメントは売上高は59億円増収の685億円、営業利益は16億円増収の125億円としました。
また、生活・環境プロダクツ部門は、原材料価格上昇等のコストアップに対応した値上げ実施等を織り込み、売上高は5億円増収の415億円、営業利益は7億円増益の15億円としました。
最後がライフイノベーション部門です。検査試薬は今年度(2018年度)も販売数量増加を見込むものの、インフルエンザワクチンについては、選定された製造株の増殖性が昨年度(2017年度)に続き低く、生産量が下押しされることや、新規事業展開に向けた研究開発費負担の増加が続くことなどから、当セグメントの売上高は22億円増収の345億円、営業利益は5億円増益の60億円の予想としました。
2. 2018年度業績予想⑤ 四半期別予想(参考・概算)
この表は、参考までに2018年度より、予想(しております)営業利益360億円の四半期ごとの概算値を記載したものです。
当社は、販売面ではインフルエンザワクチンの検査キット等、またコスト面も水力発電やプラント定修といった施設差異要因が、四半期ごとの業績に影響を与えることから、いわゆる下期型の収益構造となっているため、このような推移となることを想定しております。
なお、スチレンモノマープラントの定修は、2018年度第2四半期に実施を予定しています。
2. 2018年度業績予想⑥ Denka Value-Upとの比較
次のスライドに移ります。ここで2018年度が初年度となります。当社経営計画「Denka Value-Up」につきまして、前回の決算説明会でも簡単に説明しましたが、もう一度簡単にご説明させていただきます。
「Denka Value-Up計画」では、2018年度から2020年度の3ヶ年の数値目標として、2020年度は連結営業利益は420億円、営業利益率は10パーセント以上、スペシャリティー化率は75パーセント以上を掲げております。ご覧のグラフは、この2018年度が「Denka Value-Up」スタートの初年度として、その第一歩を着実に踏み出そうとしていることを示すものです。
当社は、その成長戦略であるスペシャリティー事業の成長加速、基盤事業のスペシャリティー化、コモディティ事業の位置づけを再定義という事業ポートフォリオ変革と、生産、研究開発、業務全般にわたる革新的プロセスにより、3つの成長ビジョン「Specialty-Fusion Company」「Sustained Growth」「Sound Growth」の実現を目指します。
2. 2018年度業績予想⑦ 株主還元・投資関連数値の推移
続きまして、株主還元についてお話しいたします。当社は2017年10月1日付けで、普通株式5株につき1株の割合で株式併合を実施いたしました。それを踏まえてこの表では、1株当たりの配当金の推移を明示するために、過去の実績も株式併合後の数値に換算して表示しております。
株主還元につきましては、2017年度の1株当たりの配当を、(2017年)11月時点の通期配当予想である、1株当たり100円に対して期末配当を5円増配し、中間50円、期末55円、通期105円といたします。これにより、配当性向は40パーセントとなります。
また、2018年度の1株当たりの通期配当予想は、予想純利益に対する配当性向が42パーセントとなる120円としました。当社は先ほど申し上げた、経営計画「Denka Value-Up」における株主還元方針を「総還元性向50パーセントを基準とする」を継続しながら、配当をより重視し、株価推移等に応じて機動的な自己株式取得も実施すると定めており、その経営計画初年度の2018年度も、この方針に則り株主還元を実施してまいる所存です。